スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 45

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地下帝国のカクテル言葉
【天魔窟・最深部 VIPエリア フードコート】
パチンコホールの喧騒を抜けた先には、巨大なショッピングモールのようなフードコートが広がっていた。
「来たか、主よ」
「待ってたんだからぁー」
プラスチックの安っぽいテーブルで、最強の竜王と狼王がラーメンを啜っていた。
「お、ここもラーメンが有るのか」
太郎が興味深げにメニューを覗き込む。
「うむ。だが『チェーン店の味』だ。期待するな」
デュークはズルズルと麺を啜り、辛口の評価を下した。
「スープに深みがない。工場で作られた既製品の味だ。……まあ、これはこれでジャンクな旨さはあるが」
「文句言いながら完食してるし……」
太郎が苦笑いしていると、背後からガバッと首に腕が回された。
「お! 太郎君みっけ♡」
ジャージ姿の創造神ルチアナだ。
「ラーメンより、ほら! 今日は飲もうよ! いい所を知ってんだから!」
「……そう言って、太郎の財布をあてにしてるわね? 貴女」
後ろからラスティアが冷ややかな視線を送る。
「さっきパチンコで全財産スッたの見てたわよ」
「うぅ……い、良いじゃない! 減るもんじゃなし!」
ルチアナは悪びれもせずに太郎の腕を引いた。
「それに、私のイチオシの『彼』……龍魔呂(たつまろ)を太郎君と合わせたくてさ! 絶対気が合うと思うのよ!」
「龍魔呂? よく分からないけど……」
太郎は喉をさすった。
「まあ、ダンジョン攻略で喉が渇いたのは事実だ。一杯だけ付き合うよ」
「決まりぃ~♡」
【天魔窟・VIPエリア BAR『Red Rain』】
ルチアナに連れられて入ったのは、喧騒から切り離されたような、シックで重厚な扉を持つBARだった。
カランコロン……とドアベルが鳴り、中に入ると、そこは外界とは別世界だった。
照明は落とされ、ジャズが静かに流れている。
紫煙とアルコールの香りが漂う、大人の隠れ家。
「いらっしゃい。カウンター席が空いてるぜ。座んな」
カウンターの向こうから、低く、少しハスキーな男の声がした。
黒いインナーに、鮮血のような真紅のジャケットを羽織った男――鬼神 龍魔呂だ。
その手には、まるで凶器を扱うかのような手付きで、グラスを磨く布が握られている。
「あぁ」
太郎たちは、促されるままカウンター席に腰を下ろした。
「龍魔呂ぉ! 久しぶりぃ!」
ルチアナがカウンターに身を乗り出し、甘ったるい声を出した。
「私が居なくて寂しく無かった? ねぇねぇ?」
龍魔呂はルチアナを一瞥もしなかった。
「黙れ。注文は?」
「酷い! 相変わらず俺様ホストね! そこが好きだけど!」
ルチアナは頬を膨らませたが、嬉しそうだ。
龍魔呂の視線が、太郎に移った。
一瞬、龍魔呂の手が止まる。
(……なんだ、この男は。気配がまるで自然(空気)だ。だが……底が見えねぇ)
元処刑人の勘が、太郎という存在の特異さを感じ取った。
しかし、彼はプロのバーテンダーとしての顔を崩さなかった。
「注文は」
太郎はメニューを見ずに答えた。
「お勧めを」
「……あいよ」
龍魔呂は短く答えると、バックバーからジンとレモン、そしてソーダを取り出した。
シェイカーに氷を入れる。
その所作には一切の無駄がない。武道の型を見るような美しさだ。
シャカカカカカッ……!!
鋭く、リズミカルなシェイク音が店内に響く。
それは単に混ぜているのではない。酒に空気を馴染ませ、角を取り、魂を吹き込む儀式。
トクトクトク……。
氷の入ったグラスに注がれ、最後にソーダが満たされる。
「お待たせ」
差し出されたのは、シンプルだが美しい一杯のカクテル。
「……頂くよ」
太郎はグラスを口に運んだ。
爽やかなレモンの酸味と、ジンの香草の香り。そして炭酸の刺激が喉を駆け抜ける。だが、驚くほどまろやかだ。
「……『あるがままに』、か」
太郎がポツリと呟いた。
「え?」
隣に座っていたサリーが首を傾げる。
「このカクテルの名前は『ジン・フィズ』。カクテル言葉は……『あるがままに』さ」
太郎はグラスを揺らし、氷の音を楽しんだ。
「飾らず、気取らず、自分らしくあれ……。初めての客にこれを出すなんて、粋なマスターだ」
龍魔呂が、ふっと口元を緩めた。
無愛想な仮面の下にある、職人の顔が覗く。
「……アンタみたいな男には、余計な飾りは必要ねぇと思っただけだ」
龍魔呂は懐から「マルボロ・赤」を取り出し、一本くわえた。そして、カウンターの奥から角砂糖を取り出し、ボリボリと齧った。
「美味しいよ。最高の味だ」
「……礼を言う」
言葉数は少ない。だが、グラスを通じて二人の間に確かな「男の敬意」が交わされた瞬間だった。
「ちょっとぉ! 二人で通じ合わないでよ! 私にも作ってよぉ!」
ルチアナがバンバンとカウンターを叩く。
「うるせぇな。ほらよ」
龍魔呂が出したのは、ホットミルク(角砂糖入り)だった。
「なんでよー!!」
騒がしくも心地よい、地下の夜は更けていく。
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