スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第五章 月下の宴

EP 4

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最強の王がくれた、一粒の甘い記憶
【レオンハート王国・王城中庭】
月明かりの下、突如として夜空が金色に輝いた。
轟音と共に着地したのは、神話級の災厄――黄金の竜王デュークである。
ズズゥゥン……!!
着地の衝撃で城が揺れ、石畳が捲れ上がる。
「ひぇぇ! り、竜王だああ!」
「嘘だろ!? なんでこんな所に伝説の最強種が!?」
「助けてくれぇぇ! 食われるぞぉぉ!」
警備にあたっていた獣人兵たちは、槍を構える手も震え、尻尾を巻いてパニックに陥っていた。本能が「逃げろ」と警鐘を鳴らしているのだ。
そんな地獄絵図の中、黄金竜の背中からヒョイっと一人の青年が降り立った。
「そう、怯えないで欲しい。こっちは丸腰だ」
太郎は両手を挙げ、散歩に来たような口調で言った。
そのあまりの場違いな空気に、兵士たちは呆気にとられた。
「何の騒ぎだ!?」
「敵襲か!?」
騒ぎを聞きつけ、城内からラオン、アヤネ、オルカの三将軍が飛び出してきた。
彼らは即座に臨戦態勢を取ろうとしたが、目の前の男を見て硬直した。
「僕の名は佐藤太郎。南にある『太郎国』で王様をやっている。……貴国の『百獣の王』様と、話がしたい」
太郎はニッコリと微笑んだ。
その名を聞いた瞬間、三将軍の顔色が変わった。
「さ、佐藤太郎!? あ、あの太郎国の!?」
アヤネの声が裏返った。
「3柱や女神や魔王を手懐けた……あの軍事国家の王か!?」
オルカが脂汗を流して後ずさる。
彼らにとって『太郎国』とは、世界を滅ぼせる怪物をペットのように飼い慣らす、謎多き超・軍事独裁国家(という誤解)なのだ。
「う~ん……彼等は僕の友達なだけなんだが」
太郎は頭をかいた。
「ま、それで? 王様と話をさせてくれるの? くれないの?」
太郎の背後で、デュークがグルルル……と低く喉を鳴らした。
「話をさせないなら、城ごと消し飛ばすが?」という無言の圧力だ。
その時。
重苦しい空気を裂いて、城の奥から一人の男が現れた。
「……通せ」
「レオ様!?」
「危険です! こやつは……!」
ラオンたちが制止しようとするが、レオはそれを手で制し、太郎の前に立った。
ボロボロのシャツに、疲れ切った表情。しかし、その瞳には同郷の人間だけが持つ光があった。
「佐藤……太郎……。日本人の名前だな……」
「やぁ、レオ殿。貴方も日本人に見えるが?」
「……俺の名は獅子田玲央(ししだ れお)。元……日本人だ」
レオは自嘲気味に笑った。「元」という言葉に、彼が捨ててきた過去の重さが滲む。
太郎はレオの顔をじっと覗き込んだ。
強大な闘気(オーラ)の奥にある、今にも壊れそうな心を見透かすように。
「何やら君は……疲れてるようだね。顔色が悪い」
「……何?」
レオが眉をひそめた。
「全てを背負いすぎてる顔だ。王様なんて、もっと適当でいいのに」
太郎はポケットに手を突っ込んだ。
警備兵たちが「武器だ!」と身構える。
しかし、太郎が取り出したのは、キラキラと光るセロファンに包まれた小さな球体だった。
ユニークスキル【100円ショップ】――『フルーツドロップ(レモン味)』。
「……!」
レオの目が大きく見開かれた。
それは、かつての世界で、弟のユウと分け合って食べた、あの懐かしいお菓子。
「こ、これは……! 日本の……!」
「疲れた時は糖分だ。ほら」
太郎はレオの手を取り、強引に飴玉を握らせた。
レオの手は、戦いの恐怖ではなく、望郷の念で激しく震えていた。
レオは震える指でセロファンを剥き、その黄色い粒を口に含んだ。
じゅわっ……。
甘酸っぱい人工的なレモンの味が広がる。
それは、血と鉄の味しかしないこの世界で、唯一忘れていた「平和」の味だった。
「う、うう……」
レオの膝から力が抜けた。
その場に崩れ落ち、地面に手をつく。
「うわあああ……あああああッ!!」
獣王の咆哮ではない。
24歳の青年、獅子田玲央としての、子供のような泣きじゃくりだった。
弟を失った悲しみ、殺し続けた罪悪感、誰にも理解されない孤独。
硬い殻で守っていた感情のダムが、たった一つの飴玉で決壊したのだ。
「レオ様……!?」
ラオンたちが言葉を失う。
あの冷酷無比な破壊神が、人前で涙を流している。
太郎はしゃがみ込み、泣きじゃくるレオの背中を、ポンポンと優しく叩いた。
「よしよし。辛かったな」
太郎は優しい声で呟いた。
「君に必要なのは……力でも、国でも、恐怖でもない」
太郎は確信を持って言った。
「ただ一緒に飴を舐めて、『旨いな』って言い合える……『友達』だったみたいだね、レオ」
月明かりの下、最強の王と、最恐の王。
二人の日本人の再会が、戦争の運命を大きく変えようとしていた。
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