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第五章 月下の宴
EP 5
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中庭の宴と、缶ビールの外交
【レオンハート王国・王城中庭】
「うぅ……ぐすっ……」
ひとしきり泣いた後、レオは袖で乱暴に顔を拭った。
その目は赤く腫れていたが、先程までの殺気立った爬虫類のような瞳ではなく、どこにでもいる青年の瞳に戻っていた。
「……すまない。見苦しいところを見せた」
「いいや。泣くのは心のデトックスだ。……それに、男の友情には湿っぽい涙より、こっちの方が効く」
太郎はニヤリと笑い、空間収納(100円ショップ)から、巨大な「ブルーシート」から取り出して地面に広げた。
「ラオンさん、アヤネさん、オルカさんだったかな? 君たちも座って。武器は置いてさ」
「な、何を言っている!?」
ラオンが警戒心を解かずに叫ぶ。
「貴様は敵国の盟主だぞ!? レオ様を誑(たぶら)かして、毒殺する気か!?」
「まあまあ。毒見は僕がするから」
プシュッ!
太郎は取り出した銀色の缶――『スーパードライ(350ml)』を開けた。
そして、続けて『柿の種(わさび味)』と『カルパス』の袋を開ける。
「ほら、レオ。君も久しぶりだろ?」
「……あぁ」
レオは渡された缶ビールを手に取った。その冷たさと重みが、かつての記憶を鮮明に呼び起こす。
「乾杯」
「……乾杯」
カシュッ。
二人は缶を合わせ、喉を鳴らしてビールを煽った。
「くぅぅぅぅ……ッ!!」
「プハァ……ッ!!」
二人の口から、同時に感嘆の声が漏れた。
「こ、これだ……! この喉越し……! 異世界のぬるいエールじゃ味わえない、この刺激……!」
レオが震える声で感動している。
「おい、ラオン。お前らも飲め」
レオが缶ビールを放り投げた。
「レ、レオ様がそこまで仰るなら……毒ではないようだが……」
ラオン、アヤネ、オルカはおっかなびっくり缶を開け、口に含んだ。
「んぐっ……!? な、なんだこの炭酸の強さは!?」
ラオンが目を白黒させる。
「でも……苦味の後に来る、この爽快感……!」
「あら、意外と悪くないわね」
アヤネは『柿の種』をポリポリと食べた。
「この赤い木の実……ピリッとしてお酒に合うわ」
「この『カルパス』とかいう干し肉……」
オルカが真剣な顔で成分分析(味見)をしている。
「脂の旨味が凝縮されている。保存食としても優秀だが、何より……酒が進む」
気がつけば、最強の獣人将軍たちは、ブルーシートの上であぐらをかき、日本のジャンクフードと酒の虜になっていた。
デュークも人型に戻り、当たり前のように太郎の隣でスルメを齧っている。
「主よ、我には『熱燗(ワンカップ)』を出せ。夜風が冷える」
「はいはい」
宴の空気が温まった頃、太郎は切り出した。
「で、レオ。……マルシア国のことなんだけど」
レオの手が止まった。
「……あぁ。奴ら、陰湿なゲリラ戦で村を焼き、俺たちを挑発している。俺たちが大軍で国境を越えるのを待っているんだ」
「やっぱりか」
太郎は頷き、柿の種を齧った。
「マルシア王から僕に救援要請が来たよ。『獣人族が一方的に侵略してきたから助けてくれ』ってね」
「なっ!?」
ラオンが激昂して立ち上がった。
「ふざけるな! 先に手を出したのは奴らだ! 我々は被害者だぞ!」
「分かってる、分かってるよラオンさん」
太郎が手で制する。
「だから僕はここに来たんだ。……マルシア王は、僕たち『太郎国』と君たち『レオンハート』をぶつけて、共倒れさせようとしてるんだよ」
「卑劣な……!」
アヤネが唇を噛む。
「そこでだ」
太郎は悪戯っぽく笑った。
「レオ。君、マルシア王の顔を見たことある?」
「いや、ないが……」
「じゃあさ、会いに行こうよ。……**『お忍び』**で」
「え?」
太郎は新しい缶ビールを開けながら、とんでもない提案をした。
「軍隊なんて動かさなくていい。僕と、デュークと、レオ。……この三人でマルシア王の寝室に『こんばんは』しに行こう」
「……は?」
オルカが口を開けたまま固まった。
「戦争なんて野暮なことはやめてさ。嘘をついている悪い王様を、直接問い詰めて『ごめんなさい』させれば解決だろ?」
あまりにもデタラメで、しかしあまりにも合理的な(最強戦力ならではの)解決策。
レオは呆気に取られた後、クククッと肩を震わせて笑い出した。
「ははは……! 傑作だ。軍を率いて正面突破することしか頭になかった」
レオは飲み干した空き缶を握りつぶした。
「いいだろう、佐藤太郎。……いや、太郎。その『悪戯』に乗った」
「決まりだね」
月明かりの下、ブルーシートの上で、世界を揺るがす最強の同盟が結ばれた。
それは血の誓いではなく、ビールの誓いだった。
【レオンハート王国・王城中庭】
「うぅ……ぐすっ……」
ひとしきり泣いた後、レオは袖で乱暴に顔を拭った。
その目は赤く腫れていたが、先程までの殺気立った爬虫類のような瞳ではなく、どこにでもいる青年の瞳に戻っていた。
「……すまない。見苦しいところを見せた」
「いいや。泣くのは心のデトックスだ。……それに、男の友情には湿っぽい涙より、こっちの方が効く」
太郎はニヤリと笑い、空間収納(100円ショップ)から、巨大な「ブルーシート」から取り出して地面に広げた。
「ラオンさん、アヤネさん、オルカさんだったかな? 君たちも座って。武器は置いてさ」
「な、何を言っている!?」
ラオンが警戒心を解かずに叫ぶ。
「貴様は敵国の盟主だぞ!? レオ様を誑(たぶら)かして、毒殺する気か!?」
「まあまあ。毒見は僕がするから」
プシュッ!
太郎は取り出した銀色の缶――『スーパードライ(350ml)』を開けた。
そして、続けて『柿の種(わさび味)』と『カルパス』の袋を開ける。
「ほら、レオ。君も久しぶりだろ?」
「……あぁ」
レオは渡された缶ビールを手に取った。その冷たさと重みが、かつての記憶を鮮明に呼び起こす。
「乾杯」
「……乾杯」
カシュッ。
二人は缶を合わせ、喉を鳴らしてビールを煽った。
「くぅぅぅぅ……ッ!!」
「プハァ……ッ!!」
二人の口から、同時に感嘆の声が漏れた。
「こ、これだ……! この喉越し……! 異世界のぬるいエールじゃ味わえない、この刺激……!」
レオが震える声で感動している。
「おい、ラオン。お前らも飲め」
レオが缶ビールを放り投げた。
「レ、レオ様がそこまで仰るなら……毒ではないようだが……」
ラオン、アヤネ、オルカはおっかなびっくり缶を開け、口に含んだ。
「んぐっ……!? な、なんだこの炭酸の強さは!?」
ラオンが目を白黒させる。
「でも……苦味の後に来る、この爽快感……!」
「あら、意外と悪くないわね」
アヤネは『柿の種』をポリポリと食べた。
「この赤い木の実……ピリッとしてお酒に合うわ」
「この『カルパス』とかいう干し肉……」
オルカが真剣な顔で成分分析(味見)をしている。
「脂の旨味が凝縮されている。保存食としても優秀だが、何より……酒が進む」
気がつけば、最強の獣人将軍たちは、ブルーシートの上であぐらをかき、日本のジャンクフードと酒の虜になっていた。
デュークも人型に戻り、当たり前のように太郎の隣でスルメを齧っている。
「主よ、我には『熱燗(ワンカップ)』を出せ。夜風が冷える」
「はいはい」
宴の空気が温まった頃、太郎は切り出した。
「で、レオ。……マルシア国のことなんだけど」
レオの手が止まった。
「……あぁ。奴ら、陰湿なゲリラ戦で村を焼き、俺たちを挑発している。俺たちが大軍で国境を越えるのを待っているんだ」
「やっぱりか」
太郎は頷き、柿の種を齧った。
「マルシア王から僕に救援要請が来たよ。『獣人族が一方的に侵略してきたから助けてくれ』ってね」
「なっ!?」
ラオンが激昂して立ち上がった。
「ふざけるな! 先に手を出したのは奴らだ! 我々は被害者だぞ!」
「分かってる、分かってるよラオンさん」
太郎が手で制する。
「だから僕はここに来たんだ。……マルシア王は、僕たち『太郎国』と君たち『レオンハート』をぶつけて、共倒れさせようとしてるんだよ」
「卑劣な……!」
アヤネが唇を噛む。
「そこでだ」
太郎は悪戯っぽく笑った。
「レオ。君、マルシア王の顔を見たことある?」
「いや、ないが……」
「じゃあさ、会いに行こうよ。……**『お忍び』**で」
「え?」
太郎は新しい缶ビールを開けながら、とんでもない提案をした。
「軍隊なんて動かさなくていい。僕と、デュークと、レオ。……この三人でマルシア王の寝室に『こんばんは』しに行こう」
「……は?」
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あまりにもデタラメで、しかしあまりにも合理的な(最強戦力ならではの)解決策。
レオは呆気に取られた後、クククッと肩を震わせて笑い出した。
「ははは……! 傑作だ。軍を率いて正面突破することしか頭になかった」
レオは飲み干した空き缶を握りつぶした。
「いいだろう、佐藤太郎。……いや、太郎。その『悪戯』に乗った」
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