スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第五章 月下の宴

EP 15

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冒険者ギルドの洗礼(デジタル社会の壁)
​【太郎国・冒険者ギルド本部 1Fロビー】
​ウィィィン……(自動ドアが開く音)
​「たのm……うおっ!? 勝手に開いた!?」
​イグニスは、目の前で音もなくスライドしたガラス扉にビクリと反応し、反射的に斧を構えた。
(くっ……気配もなく動くとは。透明な魔物が潜んでいるのか?)
​油断なく周囲を警戒しながら、彼はロビーへと足を踏み入れた。
​「……は?」
​そこは、彼の知る「冒険者ギルド」とは似ても似つかない空間だった。
荒くれ者たちが酒を飲み交わすテーブルも、壁一面に貼られた羊皮紙の依頼書もない。
あるのは、整然と並ぶ発券機(タッチパネル)、静かなBGM、そしてスーツ姿の職員と、順番待ちをする冒険者たち(スマホを見ながら静かに座っている)だけ。
​「な、なんだここは……。酒場はどうした? 喧嘩はどこだ?」
​イグニスは困惑した。だが、正面奥に受付カウンターらしきものを見つけると、気を取り直して大股で歩み寄った。
​「おい! そこの女!」
​カウンターに座っていたのは、メガネを掛けた知的なエルフの受付嬢だった。彼女はキーボードを叩く手を止め、営業スマイルを向けた。
​「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
​「ふん、決まっているだろう!」
イグニスはカウンターに『ドンッ!』と拳を叩きつけた。
​「俺様の名はイグニス・ドラグーン! 竜人の里から来た最強の戦士だ!
魔物討伐でも、ドラゴンの首でも何でもいい! 一番難しくて、一番金になる依頼を出せ!」
​ロビー中の視線が集まる。しかしそれは畏怖ではなく、「うわ、ヤバいのが来た」「田舎モンか?」という冷ややかな視線だった。
​受付嬢は眉一つ動かさず、冷静に尋ねた。
​「新規のクエスト受注のご相談ですね。……ご予約は?」
​「……あ?」
イグニスが口を開けた。
​「ご予約、よやく……?」
​「はい。当ギルドのクエスト受注相談は、混雑緩和のため完全予約制となっております」
​「よ、予約だと? 俺様が魔物を倒してやる・っ・て・言・っ・て・る・ん・だ・ぞ!?」
イグニスが凄むが、受付嬢はディスプレイに視線を戻した。
​「感謝いたします。ですが、ルールですので。
ご予約がない場合、本日の窓口対応は致しかねます」
​「なっ……!?」
イグニスの額に青筋が浮かぶ。
「ふざけるな! じゃあ今すぐその予約とやらをしろ!」
​「では、お手持ちの『魔導通信石(スマホ)』をご提示ください」
​「まどう……なんだそれは?」
​「魔導通信石です。スマートフォンとも呼びますが」
​イグニスはキョトンとした。
「知らん。そんな軟弱な石、俺は持っていない」
​受付嬢の目が、スゥッと細められた。それは「あ、こいつ面倒な客だ」と判断した時の目だった。
​「お客様。ご予約は、専用の『ギルド公式アプリ』から行っていただく形になっております」
​「あぷり……?」
イグニスは未知の単語にパニックになり始めた。
「なんだそのア・プ・リというのは! 新種の魔獣か!?」
​「……ソフトウェアのことです」
受付嬢は小さく溜息をつき、パンフレットを一枚差し出した。
​「こちらのQRコードを読み取っていただき、アプリをダウンロード。そこから『新規冒険者登録』を行い、空いている日時に予約を入れてください。
依頼の検索、受注、報酬の振込申請も、全てアプリ上で行います」
​「ぜ、全部……あぷりで……?」
​「はい。当ギルドはペーパーレス化とDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しておりますので。
紙の依頼書など、ここ数年発行しておりませんが?」
​「ぐぬぬ……!」
​イグニスはパンフレットを睨みつけた。
そこには四角い幾何学模様(QRコード)が描かれているだけで、文字すら読めない(※竜人の里と太郎国では識字体系が微妙に違う)。
​「ええい! まどろっこしい!」
イグニスはパンフレットを握りつぶした。
​「俺にはそんな石も、アプ・リとかいう魔獣も必要ない!
俺の腕を見ろ! この筋肉を見ろ! これが最強の証明だ!
さっさと依頼書を出せ! でないとここで暴れるぞ!」
​イグニスが闘気を放とうとした、その瞬間。
​「お客様、他の方のご迷惑になります」
​ガシャァァン!!
​天井から対魔物用の『警備ドローン』が三機降下し、イグニスに赤いレーザーサイトを向けた。
同時に、受付嬢の後ろから屈強なオークの警備員たちが現れ、スタンバトンを構える。
​「……ッ!?」
イグニスは野生の勘で悟った。
(この鉄の虫……俺のブレスより速く撃ってくる気か!?)
​受付嬢はニッコリと、しかし氷のような笑顔で告げた。
​「当ギルド内での暴力行為は、即時アカウント凍結、並びに法的措置の対象となります。
……出直してきていただけますか? 『魔導通信石』をご用意の上で」
​「くっ……お、覚えてろよ!」
​イグニスは逃げるようにギルドを飛び出した。
最強のブレスも、怪力も、ここでは「予約画面」一つに勝てない。
生まれて初めて味わう「門前払い」の屈辱だった。
​「くそっ! なんだよ『あぷり』って! なんだよ『すまほ』って!
……ど、どこで手に入るんだ、その石は!」
​ビル街の真ん中で、最強の迷子が誕生した瞬間だった。
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