方向音痴の姫様を拾ったら、俺のクレジットカードで勝手に和牛を買われた件 〜植物執事が特攻服で内閣府へ迎えに来る、胃痛MAXの同居生活〜

月神世一

文字の大きさ
13 / 30

EP 13

しおりを挟む
自衛隊 vs 泥の怪獣
 ズドオオオオン!!
 東京湾岸エリアが、爆音に包まれていた。
 陸上自衛隊の10式戦車部隊が到着し、泥の怪獣(ドロちゃん)へ向けて一斉射撃を開始したのだ。
 着弾。爆発。泥の飛沫。
 しかし、土と産業廃棄物で構成された怪獣は、ダメージを受けるどころか、周囲の瓦礫を取り込んでさらに巨大化していく。
「キャー! すごいすごい! 地面からお花(爆炎)がいっぱい咲いたわ!」
 怪獣の肩の上で、ルナは手を叩いて大はしゃぎしていた。
 彼女の目には、砲撃の閃光が「歓迎のイルミネーション」にしか見えていない。
「ネギオ! あそこの鉄の箱(戦車)の人たち、とっても熱烈ね!」
「ええ。彼らも『怪獣ごっこ』のキャスト志願者でしょう。エキストラにしては気合が入っています」
 ネギオは余裕の表情で、飛んでくる砲弾を蔦で払い落としながら解説する。
「ですが姫様。怪獣映画には『起承転結』が必要です。ただ暴れるだけでは、観客(国民)も飽きてしまいますよ」
「あら、そうなの? じゃあどうすればいいの?」
「ヒロインのピンチです。怪獣に捕まり、助けを求める……これぞ王道」
 その頃。
 春太は、規制線の隙間を縫って、現場近くの倉庫街まで走り込んでいた。
 内閣府の職員証(※効力は微妙だが、緊急時は役に立つ)を警官に見せつけ、最前線へ躍り出る。
「はぁ……はぁ……! いた……!」
 春太は足を止めた。
 目の前には、ビルより巨大な泥人形。
 そして、その足元の倉庫の屋根に、腕組みをして戦況を見つめる緑色の人影――ネギオを見つけた(いつの間にか地上に降りていたらしい)。
「ネギオさぁぁぁぁん!!」
 春太はありったけの声で叫んだ。
 爆音の中でも、その声はネギオの耳(聴覚器官)に届いたらしい。
 ネギオがゆっくりと振り返る。
「……おや。虫(ハルタ)ではありませんか。遅かったですね。ポップコーンは売り切れですよ」
「ふざけんな!! 今すぐあれを止めろ!! 自衛隊が本気出したらルナちゃんが死ぬぞ!!」
 春太が屋根の下から怒鳴り上げる。
 ネギオは「やれやれ」と肩をすくめ、スッと地面に飛び降りた。
 春太の目の前に着地する。
「心配性ですね。あの程度の豆鉄砲、姫様の『自動防御障壁(オート・シールド)』の前では雨粒と同じです」
「そういう問題じゃない! これ以上やったら、国際問題になる! 俺の始末書が広辞苑の厚さになるんだよ!!」
 春太は涙目でネギオの胸ぐら(樹皮)を掴もうとしたが、逆に蔦で手首を掴まれた。
「……ちょうど良いところに来ました」
「え?」
「姫様。そろそろ『演技』のハイライトですよ」
 ネギオが指を鳴らすと、怪獣の肩にいるルナに声が届いたらしい。
 ルナがハッとして、春太の姿を見つけた。
「あ! ハルタ様だわ! 見に来てくれたのね!」
「ルナちゃーん! 降りてきてー! お願いだからー!」
 手を振る春太に対し、ルナはコクリと頷き、急に真顔になった。
 そして、両手を口に添え、棒読みで叫んだ。
「――キャー。タスケテー。タベラレチャウー」
 シーン……。
 戦場の空気が一瞬凍りついた。
 あまりの大根役者ぶりである。
 しかし、本人はノリノリで、怪獣の手(泥の触手)にわざと掴まり、空高く持ち上げられた。
「アーレ~。クルクルー。ワタシ、カワイソウー」
「……」
 春太は口を開けたまま固まった。
「……ネギオさん。なにこれ」
「ヒロインが怪獣に連れ去られるシーンです。感動的でしょう?」
「学芸会か! いや、幼稚園のお遊戯会以下の演技力だぞ!?」
 だが、自衛隊側はそうはいかない。
 『人質が確認された! 攻撃中止! 繰り返す、攻撃中止!』
 無線が飛び交い、砲撃が止む。
 皮肉にも、ルナの棒読み演技が戦況を膠着させてしまった。
「さて、虫」
「……なんだよ」
 ネギオが春太の肩に手を置いた。
 その顔に、今までで一番邪悪な笑みが浮かぶ。
「ヒロインが捕まりました。では、次に現れるべきは誰でしょう?」
「え? それは……ヒーローとか、ウルトラ〇ンとか……」
「正解です」
 ネギオの右手が、春太の首筋にスッと伸びる。
 そこには、いつぞや見たことがある、緑色の液体が入った注射針が握られていた。
「え」
「自衛隊(エキストラ)では役不足。……貴様が主演(ヒーロー)になりなさい」
「待って。その色、この前俺に打ったやつ……いや、量が多くない!? 10倍くらい入ってない!?」
 注射器のシリンダーは、特大サイズだった。
「安心しろ。死にはしない(たぶん)。さあ、変身の時間だ!!」
「ギャアアアアアやめろおおおお!!」
 ブスッ!!
 春太の首に、致死量スレスレの『超活性化樹液・リミッター解除版』が注入された。
 
 ドクン!!
 春太の心臓が、早鐘どころかドラムロールのように打ち鳴らされた。
 視界が白く染まる。体が熱い。いや、体が――膨らんでいく!?
「う、うわあああああああ!!」
 春太の悲鳴が、怪獣の咆哮を超える音量で響き渡った。
 次なる展開、それは「公務員の巨大化」という、誰も望んでいない奇跡の顕現だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜

namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。 かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。 無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。 前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。 アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。 「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」 家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。 立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。 これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。

落ちこぼれ村娘、拾った王子に溺愛される。

いっぺいちゃん
恋愛
辺境の村で育った元気娘 ミレイ。 ある日、森で倒れていた金髪の青年を助けるが、 実は彼は国一の人気者 完璧王子レオン だった。 だがレオンは外に出ると人格がゆるみ、 王宮で見せる完璧さは作ったキャラだった。 ミレイにだけ本音を見せるようになり、 彼は彼女に依存気味に溺愛してくる。 しかしレオンの完璧さには、 王宫の闇に関わる秘密があって—— ミレイはレオンの仮面を剥がしながら、 彼を救う本当の王子に導いていく。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。 ※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...