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EP 14
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強制変身! 巨大公務員ハルタ
「グアアアアアアアッ!! 熱い! 体が、体がァァァ!!」
春太の絶叫が、東京湾の夜空に木霊した。
ネギオに注入された致死量の『世界樹の樹液』。それが春太の貧弱な細胞を強制的に活性化させ、ありえない現象を引き起こしていた。
ドクンッ! と心臓が跳ねるたびに、視界が高くなる。
足元のネギオが小さくなる。倉庫がミニチュアになる。自衛隊の戦車が豆粒になる。
「え? え? うわああああ!?」
メキメキメキッ!
骨が軋み、筋肉が膨張する音。
奇跡的(魔法的)なことに、春太が着ていた量販店の安物スーツも、伸縮素材のように体にフィットしたまま巨大化していく。
そして、成長が止まった時。
春太は、東京湾の浅瀬に立っていた。海水が膝下あたりを洗っている。
目線の高さには、レインボーブリッジがあった。
「…………は?」
春太は恐る恐る、自分の手を見た。
デカい。トラックくらいのサイズがある。
下を見た。
足元で、自衛隊の戦車が慌てて砲塔をこちらに向けているのが、米粒のように見えた。
上空を旋回する報道ヘリコプターと目が合った。
ヘリのパイロットが、化け物を見る目でこちらを見ている。
『き、緊急速報です! 新たな怪獣が現れました! あれは……人間!? 巨大なサラリーマンです!!』
ヘリからのリポート音声が、風に乗って聞こえてきた。
「サラリーマンじゃねえ! 公務員だ!! ……って、そうじゃなくて!」
春太は、東京湾の中心で叫んだ。
「ウルトラ〇ンじゃねえんだぞ!? デカくなりすぎだろオオオオオ!!」
自分の声が、巨大スピーカーを通したように湾岸エリア全体に響き渡る。その音圧だけで、近くの倉庫のガラスが割れた。
「ひいっ!? ごめんなさい! 弁償します!」
慌てて謝罪する姿は、間違いなくいつもの小心者の春太だった。ただ、サイズが50メートルあるだけだ。
『――素晴らしい。画になりますね』
足元から、拡声器を使ったネギオの声が聞こえてきた。
「ネギオさん! 戻して! これどうなってんの!? 俺、明日会社に行けないじゃん!」
『ご安心を。そのサイズなら通勤ラッシュも関係ありません。一跨ぎで霞が関でしょう』
『まぁ! ハルタ様、すごーい!』
今度は、上空から声がした。
泥の怪獣(ドロちゃん)の手に掴まっているルナが、目をキラキラさせて手を振っている。
『ハルタ様、とっても大きいですわ! 私と同じ視線です! 素敵!』
「ルナちゃん! 呑気なこと言ってないで! 今助けるから!」
春太は泥の怪獣に向き直った。
さっきまでは見上げるような巨体だったが、今は同じ目線だ。
泥と瓦礫でできた醜悪な顔が、目の前にある。
『グルルルル……』
怪獣が警戒するように唸り声を上げた。
「ひいっ! こ、怖い!」
春太は反射的に後ずさりした。
巨大化しても、中身はただの一般市民(ビビリ)なのだ。怪獣と戦う訓練など受けていない。
『逃げるな、腰抜けヒーロー』
ネギオの冷徹な声が響く。
『台本通りに進めなさい。まずは怪獣に一撃を加え、姫様を奪還するのです』
「一撃って……どうやるんだよ! スペシウム〇線とか出ないぞ!?」
『物理で殴ればいいのです。右ストレートです』
「殴る!? こんな泥の塊を!?」
春太は躊躇した。
しかし、怪獣の手に捕まっているルナが、期待に満ちた目でこちらを見ている。
『ハルタ様ー! がんばってー!』
「ううっ……やるしかないのか……!」
春太は意を決して、右の拳を握りしめた。
人生初の殴り合い。しかも相手は怪獣。
「ええい、ままよ! ……えいっ!」
春太が放ったのは、腰の入っていない、へっぴり腰の「猫パンチ」だった。
しかし、サイズが50メートルである。
その質量は、数百トンの鉄塊が激突するに等しい。
ズドォォォォォン!!
春太の拳が、怪獣の顔面にめり込んだ。
『ギャイン!?』
怪獣が情けない声を上げ、大きくバランスを崩した。
その衝撃で、手に持っていたルナが空中に放り出される。
「キャー! 空を飛んでるわー!」(嬉しそう)
「ルナちゃん!」
春太は慌てて両手を差し出し、落下してくるルナを、掌(てのひら)で受け止めた。
巨大な手の上に、ちょこんと乗るルナ。
「ナイスキャッチですわ、ハルタ様!」
ルナが掌の上でピョンピョンと跳ねる。春太の掌は、彼女にとって広いステージのようだ。
『よし。ヒロイン奪還成功。――さあ姫様、クライマックスですよ』
ネギオの演出指示が飛ぶ。
茶番劇は、いよいよ最終局面を迎えようとしていた。
「グアアアアアアアッ!! 熱い! 体が、体がァァァ!!」
春太の絶叫が、東京湾の夜空に木霊した。
ネギオに注入された致死量の『世界樹の樹液』。それが春太の貧弱な細胞を強制的に活性化させ、ありえない現象を引き起こしていた。
ドクンッ! と心臓が跳ねるたびに、視界が高くなる。
足元のネギオが小さくなる。倉庫がミニチュアになる。自衛隊の戦車が豆粒になる。
「え? え? うわああああ!?」
メキメキメキッ!
骨が軋み、筋肉が膨張する音。
奇跡的(魔法的)なことに、春太が着ていた量販店の安物スーツも、伸縮素材のように体にフィットしたまま巨大化していく。
そして、成長が止まった時。
春太は、東京湾の浅瀬に立っていた。海水が膝下あたりを洗っている。
目線の高さには、レインボーブリッジがあった。
「…………は?」
春太は恐る恐る、自分の手を見た。
デカい。トラックくらいのサイズがある。
下を見た。
足元で、自衛隊の戦車が慌てて砲塔をこちらに向けているのが、米粒のように見えた。
上空を旋回する報道ヘリコプターと目が合った。
ヘリのパイロットが、化け物を見る目でこちらを見ている。
『き、緊急速報です! 新たな怪獣が現れました! あれは……人間!? 巨大なサラリーマンです!!』
ヘリからのリポート音声が、風に乗って聞こえてきた。
「サラリーマンじゃねえ! 公務員だ!! ……って、そうじゃなくて!」
春太は、東京湾の中心で叫んだ。
「ウルトラ〇ンじゃねえんだぞ!? デカくなりすぎだろオオオオオ!!」
自分の声が、巨大スピーカーを通したように湾岸エリア全体に響き渡る。その音圧だけで、近くの倉庫のガラスが割れた。
「ひいっ!? ごめんなさい! 弁償します!」
慌てて謝罪する姿は、間違いなくいつもの小心者の春太だった。ただ、サイズが50メートルあるだけだ。
『――素晴らしい。画になりますね』
足元から、拡声器を使ったネギオの声が聞こえてきた。
「ネギオさん! 戻して! これどうなってんの!? 俺、明日会社に行けないじゃん!」
『ご安心を。そのサイズなら通勤ラッシュも関係ありません。一跨ぎで霞が関でしょう』
『まぁ! ハルタ様、すごーい!』
今度は、上空から声がした。
泥の怪獣(ドロちゃん)の手に掴まっているルナが、目をキラキラさせて手を振っている。
『ハルタ様、とっても大きいですわ! 私と同じ視線です! 素敵!』
「ルナちゃん! 呑気なこと言ってないで! 今助けるから!」
春太は泥の怪獣に向き直った。
さっきまでは見上げるような巨体だったが、今は同じ目線だ。
泥と瓦礫でできた醜悪な顔が、目の前にある。
『グルルルル……』
怪獣が警戒するように唸り声を上げた。
「ひいっ! こ、怖い!」
春太は反射的に後ずさりした。
巨大化しても、中身はただの一般市民(ビビリ)なのだ。怪獣と戦う訓練など受けていない。
『逃げるな、腰抜けヒーロー』
ネギオの冷徹な声が響く。
『台本通りに進めなさい。まずは怪獣に一撃を加え、姫様を奪還するのです』
「一撃って……どうやるんだよ! スペシウム〇線とか出ないぞ!?」
『物理で殴ればいいのです。右ストレートです』
「殴る!? こんな泥の塊を!?」
春太は躊躇した。
しかし、怪獣の手に捕まっているルナが、期待に満ちた目でこちらを見ている。
『ハルタ様ー! がんばってー!』
「ううっ……やるしかないのか……!」
春太は意を決して、右の拳を握りしめた。
人生初の殴り合い。しかも相手は怪獣。
「ええい、ままよ! ……えいっ!」
春太が放ったのは、腰の入っていない、へっぴり腰の「猫パンチ」だった。
しかし、サイズが50メートルである。
その質量は、数百トンの鉄塊が激突するに等しい。
ズドォォォォォン!!
春太の拳が、怪獣の顔面にめり込んだ。
『ギャイン!?』
怪獣が情けない声を上げ、大きくバランスを崩した。
その衝撃で、手に持っていたルナが空中に放り出される。
「キャー! 空を飛んでるわー!」(嬉しそう)
「ルナちゃん!」
春太は慌てて両手を差し出し、落下してくるルナを、掌(てのひら)で受け止めた。
巨大な手の上に、ちょこんと乗るルナ。
「ナイスキャッチですわ、ハルタ様!」
ルナが掌の上でピョンピョンと跳ねる。春太の掌は、彼女にとって広いステージのようだ。
『よし。ヒロイン奪還成功。――さあ姫様、クライマックスですよ』
ネギオの演出指示が飛ぶ。
茶番劇は、いよいよ最終局面を迎えようとしていた。
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