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EP 4
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鉄の匂いと肉団子のスープ
「う……お、大きい……」
マイユが重厚な鉄扉を押し開けると、そこには予想を遥かに超える空間が広がっていた。
高い天井にはクレーンのレールが走り、床には大小様々な歯車や金属板が置かれている。奥には巨大な魔導炉が鎮座し、微かに赤い光を放っていた。
「体育館……いや、それ以上の広さだな」
英一は思わず呟いた。
オイルと鉄の混じった匂い。かつて一日で逃げ出した自動車工場とは違い、ここの空気には不思議と胸を躍らせるものがあった。
「ふふん、凄いでしょ? ここがアタシの城、『マイユの工房』よ!」
マイユはエプロンの裾を払って胸を張ると、英一の手を引いた。
「さっ、英一さん。ここは仕事場だから埃っぽいし、奥のリビングに入ってくださいな」
案内された居住スペースは、工場の無骨さとは打って変わって、木の温もりに満ちた清潔な空間だった。
広々としたLDK。ダイニングテーブルにはレースのテーブルクロスが敷かれ、花瓶には野花が生けられている。
「えっと、お茶を出しますね。ゆっくりしてて下さい」
「う、うん……」
英一は借りてきた猫のように椅子に座り、周囲を見渡した。
(すげぇ……普通に日本と変わらないレベルの生活空間だ。ドワーフの技術力、侮れねぇな)
しばらくすると、キッチンからいい匂いが漂ってきた。
マイユが湯気の立つトレイを持って戻ってくる。
「お待たせしました~。特製の薬草茶と、トライバードの肉団子スープです!」
コトッ、と置かれたマグカップからはハーブの爽やかな香り。そして深皿には、琥珀色のスープと拳大の大きな肉団子がゴロリと入っている。
「た、食べて良いの?」
「勿論です! 命の恩人さんにお腹を空かせたまま帰すなんて、ドワーフの名折れですから」
マイユに促され、英一はおずおずとスプーンを手に取った。
肉団子を掬い、口に運ぶ。
「……ッ!」
噛んだ瞬間、肉汁がじゅわりと溢れ出した。
トライバードの肉は鶏肉に近いがあっさりしすぎず、濃厚な旨味がある。ハーブの香りが臭みを消し、優しい塩気が体に染み渡る。
「う、旨い……」
コンビニ弁当とカップ麺、そしてポテチで構成されていた英一の食生活。
温かい手料理を食べるのは、一体いつぶりだろうか。
「久しぶりの……まともな食事だ」
英一の目尻に少しだけ涙が滲んだ。
「久しぶり? ……あの、英一さんの事、聞いても良いですか?」
向かいに座ったマイユが、身を乗り出して尋ねてきた。
その瞳には、純粋な好奇心と少しの心配色が宿っている。
英一はスプーンを置き、少し躊躇ってから口を開いた。
嘘をつくのは苦手だ。それに、この世界には「ステータス画面」のようなものがあるのだから、隠してもバレるだろう。
「えっと……俺は、『日本』っていう所から来たんだ」
「ニホン、ですか? 東洋の島国かしら……」
「まぁ、そんな所。そこで……信号無視したトラックに跳ねられて、死んで」
「とらっく? (魔獣の一種かしら?)」
「気づいたら白い空間にいて……『ルチアナ』って女神に、このスキルを渡されて、ここに来たんだ」
「えっ!? ルチアナ様!?」
マイユが驚いて椅子をガタッと鳴らした。
「あ、あの創造神ルチアナ様から直接!? すごい……英一さん、それ御伽噺に出てくる『異界の勇者』様じゃないですか!」
「いや、勇者なんてガラじゃ……ただの引きこもりだし」
「でも、その『日本』って異世界から来たんでしょう? それに……」
マイユの視線は、英一が壁に立てかけたM24(スナイパーライフル)に向けられた。
職人としての鋭い目が、その黒い銃身を観察する。
「その武器。ミスリルでもオリハルコンでもない、見たこともない黒い金属。継ぎ目一つない加工精度。魔力も感じないのに、圧倒的な威圧感がある……」
マイユはゴクリと喉を鳴らした。
「そんな神具を作り出せるなんて、ただの魔法じゃありえません。英一さんが持っているソレが証拠よね。……間違いなく、神域の『ユニークスキル』です!」
「ユ、ユニークスキル……やっぱり、そうなるのか」
「はい! しかもルチアナ様直々の! ……あ、もしかして英一さん、行く当てとか無いんじゃありません?」
マイユはポンと手を打つと、魅力的な提案をするように微笑んだ。
「もし良かったら、ここに住みませんか? 部屋は余ってますし、その……ユニークスキルのことや、異世界の武器のこと、もっと詳しく教えて欲しいなって……ダメ、かしら?」
上目遣いで見つめられ、英一の顔が一気に赤くなる。
断る理由など、どこにもなかった。
「う……お、大きい……」
マイユが重厚な鉄扉を押し開けると、そこには予想を遥かに超える空間が広がっていた。
高い天井にはクレーンのレールが走り、床には大小様々な歯車や金属板が置かれている。奥には巨大な魔導炉が鎮座し、微かに赤い光を放っていた。
「体育館……いや、それ以上の広さだな」
英一は思わず呟いた。
オイルと鉄の混じった匂い。かつて一日で逃げ出した自動車工場とは違い、ここの空気には不思議と胸を躍らせるものがあった。
「ふふん、凄いでしょ? ここがアタシの城、『マイユの工房』よ!」
マイユはエプロンの裾を払って胸を張ると、英一の手を引いた。
「さっ、英一さん。ここは仕事場だから埃っぽいし、奥のリビングに入ってくださいな」
案内された居住スペースは、工場の無骨さとは打って変わって、木の温もりに満ちた清潔な空間だった。
広々としたLDK。ダイニングテーブルにはレースのテーブルクロスが敷かれ、花瓶には野花が生けられている。
「えっと、お茶を出しますね。ゆっくりしてて下さい」
「う、うん……」
英一は借りてきた猫のように椅子に座り、周囲を見渡した。
(すげぇ……普通に日本と変わらないレベルの生活空間だ。ドワーフの技術力、侮れねぇな)
しばらくすると、キッチンからいい匂いが漂ってきた。
マイユが湯気の立つトレイを持って戻ってくる。
「お待たせしました~。特製の薬草茶と、トライバードの肉団子スープです!」
コトッ、と置かれたマグカップからはハーブの爽やかな香り。そして深皿には、琥珀色のスープと拳大の大きな肉団子がゴロリと入っている。
「た、食べて良いの?」
「勿論です! 命の恩人さんにお腹を空かせたまま帰すなんて、ドワーフの名折れですから」
マイユに促され、英一はおずおずとスプーンを手に取った。
肉団子を掬い、口に運ぶ。
「……ッ!」
噛んだ瞬間、肉汁がじゅわりと溢れ出した。
トライバードの肉は鶏肉に近いがあっさりしすぎず、濃厚な旨味がある。ハーブの香りが臭みを消し、優しい塩気が体に染み渡る。
「う、旨い……」
コンビニ弁当とカップ麺、そしてポテチで構成されていた英一の食生活。
温かい手料理を食べるのは、一体いつぶりだろうか。
「久しぶりの……まともな食事だ」
英一の目尻に少しだけ涙が滲んだ。
「久しぶり? ……あの、英一さんの事、聞いても良いですか?」
向かいに座ったマイユが、身を乗り出して尋ねてきた。
その瞳には、純粋な好奇心と少しの心配色が宿っている。
英一はスプーンを置き、少し躊躇ってから口を開いた。
嘘をつくのは苦手だ。それに、この世界には「ステータス画面」のようなものがあるのだから、隠してもバレるだろう。
「えっと……俺は、『日本』っていう所から来たんだ」
「ニホン、ですか? 東洋の島国かしら……」
「まぁ、そんな所。そこで……信号無視したトラックに跳ねられて、死んで」
「とらっく? (魔獣の一種かしら?)」
「気づいたら白い空間にいて……『ルチアナ』って女神に、このスキルを渡されて、ここに来たんだ」
「えっ!? ルチアナ様!?」
マイユが驚いて椅子をガタッと鳴らした。
「あ、あの創造神ルチアナ様から直接!? すごい……英一さん、それ御伽噺に出てくる『異界の勇者』様じゃないですか!」
「いや、勇者なんてガラじゃ……ただの引きこもりだし」
「でも、その『日本』って異世界から来たんでしょう? それに……」
マイユの視線は、英一が壁に立てかけたM24(スナイパーライフル)に向けられた。
職人としての鋭い目が、その黒い銃身を観察する。
「その武器。ミスリルでもオリハルコンでもない、見たこともない黒い金属。継ぎ目一つない加工精度。魔力も感じないのに、圧倒的な威圧感がある……」
マイユはゴクリと喉を鳴らした。
「そんな神具を作り出せるなんて、ただの魔法じゃありえません。英一さんが持っているソレが証拠よね。……間違いなく、神域の『ユニークスキル』です!」
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「はい! しかもルチアナ様直々の! ……あ、もしかして英一さん、行く当てとか無いんじゃありません?」
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