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EP 12
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異世界素材で再現する「防弾チョッキ」
借金完済から数日。
工房の作業台には、英一が普段身につけている『防弾チョッキ(プレートキャリア)』が置かれていた。
マイユはそれを舐め回すような目つきで観察し、定規で寸法を測り、素材の感触を確かめている。
「さぁ、手元に残った300枚の金貨を元手に、もっともっとお金を稼がないとね!」
マイユは鼻息も荒く宣言した。
「何か考えがあるのか?」
「ええ。この英一さんが着ている不思議な防具……これを参考にして、新しい防具を作ってみたいの」
マイユは防弾チョッキの表面――ナイロン繊維の織り目を指で撫でた。
「この服、不思議な手触りだわ。金属じゃないのに刃物を通さないし、中に入っている『板』はミスリルよりも硬い……一体何の素材で出来てるのかしら?」
「ああ、それは……」
英一は記憶の引き出しを開ける。工業高校で習った材料学の知識だ。
「中の板は『セラミック』と『スチール(鋼鉄)』の複合材。外側の布地は『ポリエチレン』や『アラミド繊維』っていう化学繊維だよ」
「セラミック? ポリエチレン? ……聞いたことない言葉ばかりだわ」
マイユが首をかしげる。当然だ。この世界には石油化学工業が存在しない。
「面白いわ! その素材の作り方や配分量は分かるかしら?」
「うーん……」
英一は腕組みをして天井を仰いだ。
「『セラミック』の作り方は分かるよ。焼き物(陶器)の一種だけど、不純物を極限まで取り除いた粉末を、超高温で焼き固めるんだ。俺たちの世界じゃ、戦車の装甲にも使われてる」
「戦車……鉄の馬車みたいなものね? つまり、焼き物の超強化版か……それなら魔導炉の火力で再現できそう!」
マイユの目が輝く。
しかし、次の素材で英一は言葉を詰まらせた。
「でも、『ポリエチレン』や繊維の方はうろ覚えだな……。石油から作るんだけど、分子構造とか詳しい化学式までは……」
「セキユ……燃える水のことかしら? うーん、流石に錬金術の領分になりそうね」
マイユは顎に手を当てて考え込んだが、すぐにニカッと笑った。
「でも、作り方が分からなくても『構造』と『役割』が分かればいいわ! 英一さん、覚えていることだけでいいから教えて!」
「分かった。……この防具の肝は『積層構造』だ。硬いセラミックで衝撃を受け止めて、その背面の繊維層で破片をキャッチする。だから軽いのに貫通しないんだ」
英一は身振り手振りで、現代装甲の理屈を説明した。
マイユはそれを貪欲に吸収していく。彼女のドワーフとしての本能が、新しい技術に打ち震えていた。
「なるほど……硬いだけじゃダメ、柔らかいだけでもダメ。その二つを重ねるのが重要なのね」
マイユは工房の棚に視線を走らせ、素材の在庫を脳内で検索し始めた。
「これなら……いけるわ!」
彼女は羊皮紙に猛スピードで設計図を描き殴り始めた。
「硬いセラミックの代わりは、不純物を飛ばした『ドワーフ鋼』と、魔力を練り込んだ『黒曜石』の粉末を焼き固めれば再現できる……」
そして、繊維部分の代替案もひらめいたようだ。
「で、衝撃を吸収するこの生地の部分は……『レッドオーガのなめし革』で代用できそうね!」
「レッドオーガ? あの赤い鬼か?」
「ええ。あいつらの皮膚は刃を通さないくらい強靭で、しかも伸縮性があるの。これを何枚も重ねて縫い合わせれば、英一さんの言う『センイ層』と同じ効果が得られるはず!」
マイユは設計図をババンと叩いた。
「名付けて『複合積層装甲(コンポジット・アーマー)ベスト』! 重い鉄の鎧よりも軽くて動きやすくて、どんな矢も剣も通さない……これ、冒険者や兵士に革命が起きるわよ!」
「すげぇ……俺のあやふやな知識を、この世界の素材で翻訳しちまった」
英一は舌を巻いた。
現代科学の理論と、ファンタジー素材のハイブリッド。
もしこれが完成すれば、スタラントの防具市場を独占できるかもしれない。
「よし、早速試作に取り掛かりましょう! 英一さん、レッドオーガの革の在庫確認をお願い!」
「了解!」
二人の工房に、再び熱気が満ち始めた。
それは、この世界の戦争の常識を覆す発明の第一歩だった。
借金完済から数日。
工房の作業台には、英一が普段身につけている『防弾チョッキ(プレートキャリア)』が置かれていた。
マイユはそれを舐め回すような目つきで観察し、定規で寸法を測り、素材の感触を確かめている。
「さぁ、手元に残った300枚の金貨を元手に、もっともっとお金を稼がないとね!」
マイユは鼻息も荒く宣言した。
「何か考えがあるのか?」
「ええ。この英一さんが着ている不思議な防具……これを参考にして、新しい防具を作ってみたいの」
マイユは防弾チョッキの表面――ナイロン繊維の織り目を指で撫でた。
「この服、不思議な手触りだわ。金属じゃないのに刃物を通さないし、中に入っている『板』はミスリルよりも硬い……一体何の素材で出来てるのかしら?」
「ああ、それは……」
英一は記憶の引き出しを開ける。工業高校で習った材料学の知識だ。
「中の板は『セラミック』と『スチール(鋼鉄)』の複合材。外側の布地は『ポリエチレン』や『アラミド繊維』っていう化学繊維だよ」
「セラミック? ポリエチレン? ……聞いたことない言葉ばかりだわ」
マイユが首をかしげる。当然だ。この世界には石油化学工業が存在しない。
「面白いわ! その素材の作り方や配分量は分かるかしら?」
「うーん……」
英一は腕組みをして天井を仰いだ。
「『セラミック』の作り方は分かるよ。焼き物(陶器)の一種だけど、不純物を極限まで取り除いた粉末を、超高温で焼き固めるんだ。俺たちの世界じゃ、戦車の装甲にも使われてる」
「戦車……鉄の馬車みたいなものね? つまり、焼き物の超強化版か……それなら魔導炉の火力で再現できそう!」
マイユの目が輝く。
しかし、次の素材で英一は言葉を詰まらせた。
「でも、『ポリエチレン』や繊維の方はうろ覚えだな……。石油から作るんだけど、分子構造とか詳しい化学式までは……」
「セキユ……燃える水のことかしら? うーん、流石に錬金術の領分になりそうね」
マイユは顎に手を当てて考え込んだが、すぐにニカッと笑った。
「でも、作り方が分からなくても『構造』と『役割』が分かればいいわ! 英一さん、覚えていることだけでいいから教えて!」
「分かった。……この防具の肝は『積層構造』だ。硬いセラミックで衝撃を受け止めて、その背面の繊維層で破片をキャッチする。だから軽いのに貫通しないんだ」
英一は身振り手振りで、現代装甲の理屈を説明した。
マイユはそれを貪欲に吸収していく。彼女のドワーフとしての本能が、新しい技術に打ち震えていた。
「なるほど……硬いだけじゃダメ、柔らかいだけでもダメ。その二つを重ねるのが重要なのね」
マイユは工房の棚に視線を走らせ、素材の在庫を脳内で検索し始めた。
「これなら……いけるわ!」
彼女は羊皮紙に猛スピードで設計図を描き殴り始めた。
「硬いセラミックの代わりは、不純物を飛ばした『ドワーフ鋼』と、魔力を練り込んだ『黒曜石』の粉末を焼き固めれば再現できる……」
そして、繊維部分の代替案もひらめいたようだ。
「で、衝撃を吸収するこの生地の部分は……『レッドオーガのなめし革』で代用できそうね!」
「レッドオーガ? あの赤い鬼か?」
「ええ。あいつらの皮膚は刃を通さないくらい強靭で、しかも伸縮性があるの。これを何枚も重ねて縫い合わせれば、英一さんの言う『センイ層』と同じ効果が得られるはず!」
マイユは設計図をババンと叩いた。
「名付けて『複合積層装甲(コンポジット・アーマー)ベスト』! 重い鉄の鎧よりも軽くて動きやすくて、どんな矢も剣も通さない……これ、冒険者や兵士に革命が起きるわよ!」
「すげぇ……俺のあやふやな知識を、この世界の素材で翻訳しちまった」
英一は舌を巻いた。
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もしこれが完成すれば、スタラントの防具市場を独占できるかもしれない。
「よし、早速試作に取り掛かりましょう! 英一さん、レッドオーガの革の在庫確認をお願い!」
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