FPS世界ランク1位の凸スナ、ニートを辞めて異世界でエンジニアになる~工業高校の資格と現代兵器で、健気なドワーフ娘を救い天下を取る~

月神世一

文字の大きさ
13 / 53

EP 13

しおりを挟む
再起の斧と、ギルドでの遭遇
​「うーん……やっぱり、材料が足りないわね」
​マイユは工房の在庫棚をひっくり返しながら、困ったように眉を下げた。
新型防具『複合積層装甲ベスト』の試作は順調だったが、肝心の衝撃吸収層に使う素材が底をついてしまったのだ。
​「『レッドオーガ』のなめし革……これがないと、英一さんの防具のような柔軟性と強度が両立できないわ」
​「レッドオーガ? あの赤い鬼みたいな魔物か。……なら、俺が倒して持ってくればいいんじゃないか?」
​英一は手入れを終えたM24のボルトをカチャリと引いて提案した。
彼にとって、魔物は「素材ドロップ源」だ。
​「そうね……でも、どうせ討伐するなら『冒険者ギルド』を通した方がお得よ」
「お得?」
「ええ。ギルドの依頼(クエスト)として受注すれば、討伐報酬金が貰える上に、剥ぎ取った素材もギルドが適正価格で買い取ってくれるの。一石二鳥よ!」
​ドワーフらしいちゃっかりした計算に、英一は苦笑した。
​「なるほど、クエスト報酬とドロップ品売却の二重取りってわけか。分かった、行こう」
​二人は装備を整え、街の中心部にある冒険者ギルドへと向かった。
​一方その頃、スタラントの下町にある長屋。
​「あんた、しっかりね」
​玄関先で、マナマが夫の背中をバシッと叩いた。
そこには、昨日のうらぶれた姿とは別人のようなラウスが立っていた。
古いが手入れの行き届いた革鎧を身にまとい、背中には身の丈ほどもある巨大な「両手斧」を背負っている。かつて戦士として鳴らした頃の装備だ。
​「あぁ、任せとけ。……久々の現場だが、腕は鈍っちゃいねぇはずだ」
​ラウスは斧の柄を握りしめ、自分に言い聞かせるように低く唸った。
​「父ちゃん、カッコいい~!」
​娘のムーナがキラキラした目で飛びついてくる。
​「へへっ、そうか? ムーナのためにも、デッカイ獲物を狩ってくるからな」
「うん! 頑張って!」
​ラウスは娘の頭を愛おしげに撫でた。
この笑顔を守るためなら、泥水すすってでも這い上がってみせる。
​「本当なら私も一緒に行きたいけど、ムーナの面倒があるからねぇ」
​マナマは残念そうに肩をすくめた。彼女もまた、かつてはラウスと共に戦場を駆けた戦士だったのだ。
​「心配するな、母ちゃん。全てこの斧で魔物共を斬り捨ててやるさ。……行ってくる」
「行ってらっしゃい、あなた」
​家族の声援を背中に受け、ラウスは力強く歩き出した。
目指すは冒険者ギルド。借金取りという「偽りの強さ」を捨て、本当の自分の力で家族を養うための、再出発の場所だ。
​スタラント冒険者ギルド本部。
巨大な木造建築の扉を開けると、そこは熱気と喧騒に包まれていた。
依頼を探す冒険者たち、昼間から酒をあおる荒くれ者、報酬の交渉をする声。
​「うわ、すげぇ人だな……」
​英一はその空気に圧倒されつつ、マイユの後ろについてカウンターへ向かおうとした。
その時だった。
​ギィィィ……。
​重厚な扉が再び開き、ひときわ大きな影が入ってきた。
周囲の冒険者たちが、その威圧感に一瞬だけ静まり返る。
背中に巨大な両手斧を背負った、熊耳族の大男。
​ラウスだ。
​彼は真っ直ぐに受付へ向かおうとして――そこで、自分を見上げている二人組と目が合った。
​「あ……」
​時が止まったような沈黙。
見間違えるはずもない。迷彩服の男と、ドワーフの少女。
昨日、自分が脅し、そして逆にやり込められた相手だ。
​「あ、貴方……ラウス、さん……?」
​マイユが身構え、英一の後ろに半歩下がる。
英一の手が、反射的に背中のM24へと伸びかけた。
だが、彼の視界に表示されたUIが、意外な情報を告げていた。
​(……黄色? いや、色が薄い。敵意がない?)
​ラウスの頭上のマーカーは、昨日のような警戒色ではなく、限りなく透明に近い黄色(中立)だった。
ラウスは気まずそうに視線を泳がせ、しかし逃げることなく、太い眉を下げて口を開いた。
​「マ……マミユ……」
​その声には、昨日のようなドス黒い威圧感は微塵もなかった。あるのは、バツの悪さと、奇妙な誠実さだけ。
​「……何の用だ? また借金の取り立てか?」
​英一が静かに問う。
ラウスは首を横に振り、背中の斧を親指で示した。
​「いや……仕事はクビになった。俺は今日から、一人の冒険者だ」
​「冒険者……?」
​マイユが目を丸くする。
ラウスは大きな体を縮こまらせるようにして、ボソリと付け加えた。
​「昨日は……すまなかったな。それだけだ」
​短く謝罪の言葉を口にすると、ラウスは逃げるように二人を避けて、受付カウンターの反対側へと歩いて行った。
​「謝った……あのラウスさんが?」
「……どうやら、嘘じゃなさそうだな」
​英一はミニマップ上で遠ざかるラウスの光点を見つめた。
ただのチンピラだと思っていた男の、意外な一面。そして背負った斧の使い込まれた傷跡。
それが何を意味するのか、英一にはまだ分からなかったが、予感はあった。
この男とは、そう遠くないうちにまた関わることになるだろう、と。
​「行きましょう、英一さん。レッドオーガの依頼、早い者勝ちよ!」
「お、おう」
​英一は気を取り直し、マイユと共に受付へと向かった。
運命の歯車が、ギルドの中で静かに噛み合い始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...