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EP 16
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虐殺のスコアと、警告色(イエロー)の輝き
森の奥深く。
英一はミニマップに映る赤い光点を目掛け、一直線に走っていた。
呼吸は整っている。アドレナリンが分泌され、感覚が研ぎ澄まされている状態だ。
「いたぞ。群れだ」
開けた場所に、数体の巨体がたむろしていた。
緑色の肌をした一般的な『オーガ』たちだ。今回の討伐対象である『レッドオーガ』ではない。
「あれは……? 赤くないな。でも敵だ」
英一の判断基準はシンプルだった。
ミニマップ上で『赤』ならば、それは排除すべき障害(モブ)であり、経験値(スコア)だ。
「え? ちょ、ちょっと英一さん!?」
背後から追いかけてくるマイユが声を上げる。
「あれは普通のオーガですわ! 今回の討伐依頼には入ってなくてよ!? 無駄な戦闘は避けて……」
「邪魔な雑魚は掃除(クリアリング)する。……定石だろ?」
英一は止まらなかった。
走りながらM24を構え、ノータイムでスコープを覗く。
――ドォォン!!
轟音と共に、一番手前にいたオーガの頭部が消失した。
「グオッ!?」
仲間が突然死んだことに、他のオーガたちが反応する暇すら与えない。
ボルトを引く。排莢。装填。
ドンッ! ガチャン。ドンッ!
「逃げる暇なんて与えねぇよ」
正確無比なヘッドショット。
接近戦を挑もうと棍棒を振り上げたオーガも、逃げ出そうと背を向けたオーガも、等しく脳天を撃ち抜かれ、肉塊となって崩れ落ちていく。
それは戦闘ではなかった。一方的な「作業」だった。
「ひっ……」
マイユは足を止めた。
飛び散る血飛沫と、絶命の声すら上げられずに死んでいく魔物たち。
英一の戦い方は、冒険者のそれとは異質すぎた。勇壮さも必死さもない。ただ淡々と、機械的に命を刈り取っていく姿に、生理的な恐怖がこみ上げた。
「え、英一、さん……?」
「グォォォォォォォッ!!」
その時、森の奥から空気を震わせる咆哮が轟いた。
木々をなぎ倒し、全身が血のように赤い巨人が姿を現す。
討伐対象、『レッドオーガ』だ。配下のオーガたちを皆殺しにされ、怒り狂っている。
「来たな……獲物がよぉ」
英一は口元を歪め、不敵に笑った。
M24を片手で保持しつつ、右手で素早くサブウェポンのハンドガン『SIG P226』を抜く。
「まずは足止めだ」
レッドオーガが突進してくる。戦車のような質量攻撃。
だが、英一は動じない。
冷静に相手の膝関節を狙い、ダブルタップ(二連射)。
パンパンッ! ……パンパンッ!
「ギャアアアアッ!?」
乾いた発砲音が響き、レッドオーガの両膝から血が噴き出した。
9mmパラベラム弾が正確に腱と骨を砕いたのだ。
巨体がバランスを崩し、無様に地面へ転がる。
「痛み苦しんでる……?」
「動くなよ。照準がズレる」
英一はSIGをホルスターに戻すと、ゆっくりと歩み寄った。
のたうち回るレッドオーガの目の前に立ち、冷徹な目でM24の銃口をその眉間に押し付ける。
「じ、慈悲を……」
レッドオーガの目が恐怖で見開かれ、何かを懇願するように見えた。
しかし、英一には聞こえない。彼に見えているのは「HPバー」と「弱点部位」だけだ。
「じゃあな」
――ズドンッ!!
ゼロ距離射撃。
レッドオーガの頭部は跡形もなく吹き飛び、巨大な体躯がピクリとも動かなくなった。
「ふぅ……ミッションコンプリート」
英一は銃口から立ち上る硝煙を払い、満足げに振り返った。
素材は無傷だ(頭以外)。これで依頼達成、そしてマイユの防具も作れる。
「やったな、マイユ! これで……」
笑顔でVサインを作ろうとした英一の動きが、凍りついた。
「英一、さん……」
そこに立っていたマイユの顔には、笑顔はなかった。
あるのは、青ざめた表情と、震える唇。
まるで、未知の化け物を見るような目だった。
「貴方は……一体……?」
彼女の声が震えている。
そして、決定的な変化が訪れた。
『ピロン……』
気の抜けたシステム音と共に、英一の視界にあるUIが書き換わる。
マイユの頭上に輝いていた、信頼の証である『青色(味方)』のマーカー。
それが点滅し、警戒を示す『黄色(中立・警戒)』へと変色したのだ。
「え……?」
英一の思考が停止した。
なぜ? 魔物を倒したのに。依頼を完璧にこなしたのに。
助けた時と同じように、圧倒的な力を見せたはずなのに。
(黄色……警戒されている? 俺が? なんで……)
「マイユ……?」
英一が手を伸ばそうとすると、マイユはビクリと肩を震わせ、半歩後ろへ下がった。
その拒絶の動作が、英一の胸を鋭く抉った。
ゲームの中の正解が、この世界での正解とは限らない。
英一は初めて、自分が握っている「暴力」の異質さと、それによって生じた心の距離に直面し、立ち尽くした。
森の奥深く。
英一はミニマップに映る赤い光点を目掛け、一直線に走っていた。
呼吸は整っている。アドレナリンが分泌され、感覚が研ぎ澄まされている状態だ。
「いたぞ。群れだ」
開けた場所に、数体の巨体がたむろしていた。
緑色の肌をした一般的な『オーガ』たちだ。今回の討伐対象である『レッドオーガ』ではない。
「あれは……? 赤くないな。でも敵だ」
英一の判断基準はシンプルだった。
ミニマップ上で『赤』ならば、それは排除すべき障害(モブ)であり、経験値(スコア)だ。
「え? ちょ、ちょっと英一さん!?」
背後から追いかけてくるマイユが声を上げる。
「あれは普通のオーガですわ! 今回の討伐依頼には入ってなくてよ!? 無駄な戦闘は避けて……」
「邪魔な雑魚は掃除(クリアリング)する。……定石だろ?」
英一は止まらなかった。
走りながらM24を構え、ノータイムでスコープを覗く。
――ドォォン!!
轟音と共に、一番手前にいたオーガの頭部が消失した。
「グオッ!?」
仲間が突然死んだことに、他のオーガたちが反応する暇すら与えない。
ボルトを引く。排莢。装填。
ドンッ! ガチャン。ドンッ!
「逃げる暇なんて与えねぇよ」
正確無比なヘッドショット。
接近戦を挑もうと棍棒を振り上げたオーガも、逃げ出そうと背を向けたオーガも、等しく脳天を撃ち抜かれ、肉塊となって崩れ落ちていく。
それは戦闘ではなかった。一方的な「作業」だった。
「ひっ……」
マイユは足を止めた。
飛び散る血飛沫と、絶命の声すら上げられずに死んでいく魔物たち。
英一の戦い方は、冒険者のそれとは異質すぎた。勇壮さも必死さもない。ただ淡々と、機械的に命を刈り取っていく姿に、生理的な恐怖がこみ上げた。
「え、英一、さん……?」
「グォォォォォォォッ!!」
その時、森の奥から空気を震わせる咆哮が轟いた。
木々をなぎ倒し、全身が血のように赤い巨人が姿を現す。
討伐対象、『レッドオーガ』だ。配下のオーガたちを皆殺しにされ、怒り狂っている。
「来たな……獲物がよぉ」
英一は口元を歪め、不敵に笑った。
M24を片手で保持しつつ、右手で素早くサブウェポンのハンドガン『SIG P226』を抜く。
「まずは足止めだ」
レッドオーガが突進してくる。戦車のような質量攻撃。
だが、英一は動じない。
冷静に相手の膝関節を狙い、ダブルタップ(二連射)。
パンパンッ! ……パンパンッ!
「ギャアアアアッ!?」
乾いた発砲音が響き、レッドオーガの両膝から血が噴き出した。
9mmパラベラム弾が正確に腱と骨を砕いたのだ。
巨体がバランスを崩し、無様に地面へ転がる。
「痛み苦しんでる……?」
「動くなよ。照準がズレる」
英一はSIGをホルスターに戻すと、ゆっくりと歩み寄った。
のたうち回るレッドオーガの目の前に立ち、冷徹な目でM24の銃口をその眉間に押し付ける。
「じ、慈悲を……」
レッドオーガの目が恐怖で見開かれ、何かを懇願するように見えた。
しかし、英一には聞こえない。彼に見えているのは「HPバー」と「弱点部位」だけだ。
「じゃあな」
――ズドンッ!!
ゼロ距離射撃。
レッドオーガの頭部は跡形もなく吹き飛び、巨大な体躯がピクリとも動かなくなった。
「ふぅ……ミッションコンプリート」
英一は銃口から立ち上る硝煙を払い、満足げに振り返った。
素材は無傷だ(頭以外)。これで依頼達成、そしてマイユの防具も作れる。
「やったな、マイユ! これで……」
笑顔でVサインを作ろうとした英一の動きが、凍りついた。
「英一、さん……」
そこに立っていたマイユの顔には、笑顔はなかった。
あるのは、青ざめた表情と、震える唇。
まるで、未知の化け物を見るような目だった。
「貴方は……一体……?」
彼女の声が震えている。
そして、決定的な変化が訪れた。
『ピロン……』
気の抜けたシステム音と共に、英一の視界にあるUIが書き換わる。
マイユの頭上に輝いていた、信頼の証である『青色(味方)』のマーカー。
それが点滅し、警戒を示す『黄色(中立・警戒)』へと変色したのだ。
「え……?」
英一の思考が停止した。
なぜ? 魔物を倒したのに。依頼を完璧にこなしたのに。
助けた時と同じように、圧倒的な力を見せたはずなのに。
(黄色……警戒されている? 俺が? なんで……)
「マイユ……?」
英一が手を伸ばそうとすると、マイユはビクリと肩を震わせ、半歩後ろへ下がった。
その拒絶の動作が、英一の胸を鋭く抉った。
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