FPS世界ランク1位の凸スナ、ニートを辞めて異世界でエンジニアになる~工業高校の資格と現代兵器で、健気なドワーフ娘を救い天下を取る~

月神世一

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EP 20

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黄色いマーカーと、リスタートの夕暮れ
戦いは終わった。
森には再び静寂が戻り、少し傾いた夕日が木漏れ日となって降り注いでいる。
「さてと……こいつを元に戻さねぇとな」
ラウスが、横転した魔導馬車『ドリーム・ラビット』に歩み寄った。
鉄の塊である車体は、重量数トンはあるだろう。普通ならクレーンが必要な重さだ。
「重てぇな……。よっと!」
ラウスが車体の下に腕を差し込み、全身に闘気を漲らせる。
太い腕の筋肉が岩のように隆起し、獣人族特有の爆発的なパワーが解放された。
ズズズ……ガシャンッ!!
轟音と共に、巨大な車体が宙を舞うように起き上がり、四つのタイヤがドスンと地面に着地した。
「ふぅ。……いい運動になったぜ」
ラウスは軽く肩を回し、何でもないことのように笑った。
「凄いですわ! ありがとう、ラウスさん!」
マイユが駆け寄り、車体を点検する。
ボディはボコボコに凹み、塗装は剥げているが、心臓部である魔導エンジンと足回りは奇跡的に無事だった。ドワーフの堅牢な設計と、英一の運転技術が最悪の事態を防いだのだ。
「良いって事よ。助けてもらったのは俺の方だ」
ラウスは鼻の下を擦り、照れくさそうに視線を逸らした。
そしてマイユは、少し離れた場所に立っている英一の方へ向き直った。
「英一さんも……ありがとう。助けてくれて」
その声は穏やかで、感謝の色が滲んでいた。
英一はM24を背負い直し、視界に映るUI――タクティカル・ミニマップに目をやった。
(……やっぱり、か)
マイユの頭上に浮かぶマーカーの色。
それは『黄色(中立)』のままだった。
命を救った。共闘もした。
それでも、一度失われた『青色(信頼)』は、すぐには戻らない。
彼女の中で、英一がオーガ達を機械的に殺戮した時の恐怖や、価値観のズレは、まだ完全には払拭されていないのだ。命を助けたからといって、全てがチャラになるほど、人の心は単純(システム的)ではない。
「いや……別に。当たり前のことをしただけだ」
英一は短く答えた。
以前の彼なら、「なんでだよ! 助けたのに!」と内心で毒づき、不貞腐れていただろう。
だが、今の英一は違った。
(……けど、これで良いんだ)
英一は静かに拳を握りしめた。
(赤だろうが、黄色だろうが関係ない。今までが上手く行きすぎてたんだ。女神にチート能力を貰って、チョロいヒロインに好かれて……そんな『イージーモード』に胡坐をかいて、俺は相手の心を見ていなかった)
黄色いマーカーは、今の英一に対する「正当な評価」だ。
だからこそ、ここからが本番なのだ。
システムが表示する色ではなく、自分の行動と言葉で、本当の意味で彼女の信頼を勝ち取らなければならない。
(これからが……本当にマイユに答える時なんだ)
「英一さ~ん! 何ボーッとしてるんですか?」
運転席に乗り込んだマイユが、窓から顔を出して手招きした。
その笑顔は、さっきまでの拒絶の表情よりはずっと柔らかい。
「早く乗って? 行きますよ? ラウスさんも後ろの荷台へどうぞ!」
「おうよ! 狭いが我慢するか!」
「……あぁ、今行く」
英一は吹っ切れた顔で歩き出した。
夕日を背に、ボロボロの魔導馬車がエンジンを始動させる。
「しっかり捕まっててくれよ。帰りは安全運転で行くからな」
「ふふ、お願いしますわね。……相棒?」
その「相棒」という言葉に、疑問符がついているのが今の二人の距離感。
英一は苦笑しながらアクセルを踏んだ。
ドリーム・ラビットが走り出す。
スタラントの街へ。
工房へ。
そして、本当の仲間になるための、長い道のりの始まりへ。
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