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EP 50
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矛盾する求人と、危険なティータイム
オロチとのヒリつくような交渉を終え、全財産が入っていた革袋を置いてきたマミユ達は、ゼニゲコ・タワーの外に出た。
ユミルスの空は青く澄み渡っているが、マミユの懐は木枯らしが吹くほど寒い。
「次は……何をするんだっけ?」
英一が空を見上げながら呟く。大金を失ったショックで記憶が飛びかけている。
「さてな。飯を食うんじゃ無かったか? 腹が減ってちゃ戦は出来ねぇ」
ラウスが腹をさする。
だが、マミユが鬼の形相で振り返った。
「違うわよ! 『人材ギルド』よ! 頭のいい執事さんを仲間にするのよ!」
マミユは拳を握りしめた。
特許を取るにも、今後の経営をするにも、管理者がいないと破綻する。これは投資した8,000枚を無駄にしないための必須事項だ。
「頭の良い執事さんを、雇用ねぇ……」
メルセスが面白そうに顎に手をやった。
「それって、『現在無職』の頭の良い執事さんって事でしょ? 矛盾してるような気がするわね。本当に優秀なら、引く手あまたで放っておかれないはずよ?」
「うっ……」
マミユが言葉に詰まる。確かにその通りだ。
「か、考えたら負けよ! 何か事情があるのかもしれないし、掘り出し物がいるかもしれないでしょ! さぁ人材ギルドに!」
一行は再び『ラビット・グランドマスター』に乗り込み、ナビに従って人材ギルドへと車を走らせた。
数十分後。
ユミルス人材派遣ギルドの専用駐車場。
ゲートを通過しようとしたマミユの絶叫が響き渡った。
「はー!? ここも駐車料金が『金貨5枚』なわけ!? ふざけんじゃないわよ!!」
マミユがダッシュボードを叩く。
さっきゼニゲコ・タワーで払ったばかりだ。この街は地面にタイヤを置くだけで金を取るのか。
「まじかよ……。早くこの街を出ないと、息を吸うだけで金を取られそうだ」
ラウスがげんなりとした顔で窓の外を見る。
都会の空気が、なんだか小銭の味に思えてきた。
「必要経費よ、必要経費……!」
マミユは血涙を流しながら財布の底をさらって支払いを済ませた。もう後戻りはできない。
人材ギルドの建物内は、スーツを着た求職者や、企業の採用担当者でごった返していた。
マミユ達は受付カウンターへと進んだ。
「いらっしゃいませ。どういった方をお探しでしょうか?」
受付嬢が愛想よく対応する。
「あの! すんごく頼りになる執事さんを探してるんです! お金の計算が完璧で、契約書にも強くて、あと……安く雇える人!」
最後の一言に受付嬢は苦笑したが、すぐに端末を操作し……手が止まった。
「……執事、で、とびきり優秀な方、ですか」
「はい! いませんか?」
受付嬢の顔に、僅かな緊張と困惑が走った。
「い、居るには居ますが……」
彼女は視線をロビーの隅へと向けた。
「とても優秀な方が、あちらの席に……いらっしゃいますが……」
彼女が指差した先。
そこは他の求職者たちが、まるで結界でも張られているかのように避けて通る一角だった。
優雅な一人掛けのソファに座り、備え付けの安っぽいお茶を、まるで最高級の紅茶のように優雅に嗜む男の姿があった。
燕尾服に身を包み、片眼鏡(モノクル)をかけた銀髪の男。
頭上の三角耳と、ゆったり揺れる尻尾。人狼族だ。
「まぁ! 居るんですね! 雰囲気ありますわ!」
マミユは目を輝かせた。
「お、お客様? あの、あの方は少々『訳あり』でして、過去の雇用主が次々と……」
受付嬢が慌てて何かを言いかけたが、マミユの耳には届いていなかった。
「ご挨拶しなきゃ!」
「あ、おいマミユ! 待てって!」
英一が止めるのも聞かず、マミユは直進した。
メルセスは「面白くなりそう」とニヤニヤしながら後に続く。
「あのー! すみません!」
マミユが声をかけると、男はゆっくりとティーカップをソーサーに置いた。
その所作一つとっても、洗練の極み。隙がない。
男はゆっくりと顔を上げ、銀縁のモノクルの奥から、冷徹な知性と獣の鋭さが混在する瞳でマミユ達を見据えた。
「……おや」
穏やかな、しかし腹の底に響くようなバリトンボイス。
「私に、何かご用ですかな?」
セブリック(38歳)。
税理士にして執事検定1級。そして『雇い主殺し』の異名を持つ男。
その口元には、獲物を品定めするかのような、柔和で危険な笑みが浮かんでいた。
オロチとのヒリつくような交渉を終え、全財産が入っていた革袋を置いてきたマミユ達は、ゼニゲコ・タワーの外に出た。
ユミルスの空は青く澄み渡っているが、マミユの懐は木枯らしが吹くほど寒い。
「次は……何をするんだっけ?」
英一が空を見上げながら呟く。大金を失ったショックで記憶が飛びかけている。
「さてな。飯を食うんじゃ無かったか? 腹が減ってちゃ戦は出来ねぇ」
ラウスが腹をさする。
だが、マミユが鬼の形相で振り返った。
「違うわよ! 『人材ギルド』よ! 頭のいい執事さんを仲間にするのよ!」
マミユは拳を握りしめた。
特許を取るにも、今後の経営をするにも、管理者がいないと破綻する。これは投資した8,000枚を無駄にしないための必須事項だ。
「頭の良い執事さんを、雇用ねぇ……」
メルセスが面白そうに顎に手をやった。
「それって、『現在無職』の頭の良い執事さんって事でしょ? 矛盾してるような気がするわね。本当に優秀なら、引く手あまたで放っておかれないはずよ?」
「うっ……」
マミユが言葉に詰まる。確かにその通りだ。
「か、考えたら負けよ! 何か事情があるのかもしれないし、掘り出し物がいるかもしれないでしょ! さぁ人材ギルドに!」
一行は再び『ラビット・グランドマスター』に乗り込み、ナビに従って人材ギルドへと車を走らせた。
数十分後。
ユミルス人材派遣ギルドの専用駐車場。
ゲートを通過しようとしたマミユの絶叫が響き渡った。
「はー!? ここも駐車料金が『金貨5枚』なわけ!? ふざけんじゃないわよ!!」
マミユがダッシュボードを叩く。
さっきゼニゲコ・タワーで払ったばかりだ。この街は地面にタイヤを置くだけで金を取るのか。
「まじかよ……。早くこの街を出ないと、息を吸うだけで金を取られそうだ」
ラウスがげんなりとした顔で窓の外を見る。
都会の空気が、なんだか小銭の味に思えてきた。
「必要経費よ、必要経費……!」
マミユは血涙を流しながら財布の底をさらって支払いを済ませた。もう後戻りはできない。
人材ギルドの建物内は、スーツを着た求職者や、企業の採用担当者でごった返していた。
マミユ達は受付カウンターへと進んだ。
「いらっしゃいませ。どういった方をお探しでしょうか?」
受付嬢が愛想よく対応する。
「あの! すんごく頼りになる執事さんを探してるんです! お金の計算が完璧で、契約書にも強くて、あと……安く雇える人!」
最後の一言に受付嬢は苦笑したが、すぐに端末を操作し……手が止まった。
「……執事、で、とびきり優秀な方、ですか」
「はい! いませんか?」
受付嬢の顔に、僅かな緊張と困惑が走った。
「い、居るには居ますが……」
彼女は視線をロビーの隅へと向けた。
「とても優秀な方が、あちらの席に……いらっしゃいますが……」
彼女が指差した先。
そこは他の求職者たちが、まるで結界でも張られているかのように避けて通る一角だった。
優雅な一人掛けのソファに座り、備え付けの安っぽいお茶を、まるで最高級の紅茶のように優雅に嗜む男の姿があった。
燕尾服に身を包み、片眼鏡(モノクル)をかけた銀髪の男。
頭上の三角耳と、ゆったり揺れる尻尾。人狼族だ。
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受付嬢が慌てて何かを言いかけたが、マミユの耳には届いていなかった。
「ご挨拶しなきゃ!」
「あ、おいマミユ! 待てって!」
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「あのー! すみません!」
マミユが声をかけると、男はゆっくりとティーカップをソーサーに置いた。
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男はゆっくりと顔を上げ、銀縁のモノクルの奥から、冷徹な知性と獣の鋭さが混在する瞳でマミユ達を見据えた。
「……おや」
穏やかな、しかし腹の底に響くようなバリトンボイス。
「私に、何かご用ですかな?」
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