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初めての職場は「独」の味
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俺の初めての職場、それは実家から一時間以上もかかる病院だった。
正直な所、働ければ何処でも良かった。
昔から、夢もない、理想もない、つまらないの「ナイナイ」三拍子の揃った子供だった。
それは、歳を重ねても解決しなかった。
中学校
テキトーに、根暗に、何事もない様に過ごした。
その結果、行きたい高校なんて無く、進学できるのであれば何処でも良かった。
高校
人生のハイライト。
一年の時から、新たな友人多数に恵まれ「その日が楽しければいい」をモットーに生きた。
その結果、三年になる頃には、周囲が進路を固めていく中
俺は、何も決まっていなかった。焦りもしなかった。
進路指導の教師が無理やりにでもと推し進めた専門学校。
医療系の検査の学校だった。
しかし、その学校も一年で中退。
そもそも、文系だった俺に理系の学校であったために、半年過ぎた頃には着いて行けなかった。
だが、進路指導の教師が悪い訳ではないし、専門学校が悪い訳じゃない。
そうして呆けていた所、舞い込んだ仕事。
年の離れた兄は看護師、その嫁も看護師だった。
兄嫁の古巣である職場、そこに欠員がでた為、たまたま舞い込んだ話。
自分を変えるチャンスだと思った。
だが、その職場で俺の存在が喜ばれたのは最初の3か月間だけだった。
最初の一月
若い男の子が入り、力仕事が任せられる。と喜ばれた。
二月目
女性では手を焼く患者も男の子相手にはしおらしい。と重宝される。
三月目
一人前だろうと安心される。
・・・だが、病院での仕事は予想以上に知識と機転が求められた。
まず最初に目立ち始めた事、それは
俺の不器用さだった。
生真面目に物事をこなす事はいい。が、手が遅い。と注意される。
次に目立ったのは、人の良さ
患者に呼ばれ、些細な事でも手伝った。
その分、患者には気に入られるが、その間の仕事は溜まる。
そして、不器用さも相まって、時間内に仕事が終わらない。
そうこうしている内に、また患者に呼ばれる。
結果、戻ってくる頃には、上司が仕事を肩代わりしていた。
厄介な事に、病棟でも「手を焼く」患者に好かれる傾向にあった。
他のナースやお手伝いさんは話を聞いてくれない。彼らの愚痴はきまって其処から始まる。
その頃から、俺の中にはある一つのポリシーが出来上がりつつあった。
「介護とは仕事を差し置いてでも、相手の不平不満を解消し安楽に過ごしてもらう事。」
だが、現実は厳しかった。
「飯島君、ちょっと。」
病室の外から上司が呼ぶ。
そこで俺は思う・・・「あぁ、また始まる。」と。
休憩室に呼ばれた俺は、そこでお決まりの様に小言を言われるようになっていた。
「君さぁ、何度も言うけど患者さんとくっちゃべってないで仕事したらどうなの?
その間の仕事、誰がやってると思ってるの?」
「・・・すみません。」
「何時も何時もそうやって平謝りしてるけど、直す気ないでしょ?」
「いや、そんな事は・・・。」
「じゃあ、なんで病室であんな平然とサボってられるのかな。ちょっとわからないんだけど。」
なまじ仕事人間のおばさん相手に口喧嘩では勝てない事を知っている。
まるで母親と口喧嘩をするようなもので。
・・・そう、彼女らにも俺と歳の変わらない息子さんが居るらしい。
それ故、言葉遣いというものが上司と部下ではなく、親と子のソレなのだ。
当時の俺には、介護のイロハなど知識の外であった。
必要以上に患者の世話を焼けば、それは患者の甘えに繋がる。
すると、普段温厚な患者でもある日突然
「お前じゃ話にならねぇんだよ!~さんを呼んでくれ!」というように
個人の名前が出るようになってしまう。
そういった事を避ける為にも、必要以上の事をしない事が現場には求められていた。
介護の世界には正解など存在しない。
俺は今まで学んで来ていた「公式」やら「解き方」が通用しない世界で
唯一、自分が選び取った考えを尊重したかった。
その後も、迷惑はかけないようにと努力を続けたが
結果的に言えば、俺の考えはその職場に定着する事は無かった。
何年も習慣の様に続いてきた仕事の流れ。
初めて、俺は逆流という言葉を覚えた。
自身の目指す流れが、とてつもなくちっぽけで脈々と続いてきた流れを変えるには
それ以上の力が必要だった事を学んだ。
長い物には、巻かれるべきなのだ。
だって、ソレが人生一番楽な生き方なのだから・・・。
正直な所、働ければ何処でも良かった。
昔から、夢もない、理想もない、つまらないの「ナイナイ」三拍子の揃った子供だった。
それは、歳を重ねても解決しなかった。
中学校
テキトーに、根暗に、何事もない様に過ごした。
その結果、行きたい高校なんて無く、進学できるのであれば何処でも良かった。
高校
人生のハイライト。
一年の時から、新たな友人多数に恵まれ「その日が楽しければいい」をモットーに生きた。
その結果、三年になる頃には、周囲が進路を固めていく中
俺は、何も決まっていなかった。焦りもしなかった。
進路指導の教師が無理やりにでもと推し進めた専門学校。
医療系の検査の学校だった。
しかし、その学校も一年で中退。
そもそも、文系だった俺に理系の学校であったために、半年過ぎた頃には着いて行けなかった。
だが、進路指導の教師が悪い訳ではないし、専門学校が悪い訳じゃない。
そうして呆けていた所、舞い込んだ仕事。
年の離れた兄は看護師、その嫁も看護師だった。
兄嫁の古巣である職場、そこに欠員がでた為、たまたま舞い込んだ話。
自分を変えるチャンスだと思った。
だが、その職場で俺の存在が喜ばれたのは最初の3か月間だけだった。
最初の一月
若い男の子が入り、力仕事が任せられる。と喜ばれた。
二月目
女性では手を焼く患者も男の子相手にはしおらしい。と重宝される。
三月目
一人前だろうと安心される。
・・・だが、病院での仕事は予想以上に知識と機転が求められた。
まず最初に目立ち始めた事、それは
俺の不器用さだった。
生真面目に物事をこなす事はいい。が、手が遅い。と注意される。
次に目立ったのは、人の良さ
患者に呼ばれ、些細な事でも手伝った。
その分、患者には気に入られるが、その間の仕事は溜まる。
そして、不器用さも相まって、時間内に仕事が終わらない。
そうこうしている内に、また患者に呼ばれる。
結果、戻ってくる頃には、上司が仕事を肩代わりしていた。
厄介な事に、病棟でも「手を焼く」患者に好かれる傾向にあった。
他のナースやお手伝いさんは話を聞いてくれない。彼らの愚痴はきまって其処から始まる。
その頃から、俺の中にはある一つのポリシーが出来上がりつつあった。
「介護とは仕事を差し置いてでも、相手の不平不満を解消し安楽に過ごしてもらう事。」
だが、現実は厳しかった。
「飯島君、ちょっと。」
病室の外から上司が呼ぶ。
そこで俺は思う・・・「あぁ、また始まる。」と。
休憩室に呼ばれた俺は、そこでお決まりの様に小言を言われるようになっていた。
「君さぁ、何度も言うけど患者さんとくっちゃべってないで仕事したらどうなの?
その間の仕事、誰がやってると思ってるの?」
「・・・すみません。」
「何時も何時もそうやって平謝りしてるけど、直す気ないでしょ?」
「いや、そんな事は・・・。」
「じゃあ、なんで病室であんな平然とサボってられるのかな。ちょっとわからないんだけど。」
なまじ仕事人間のおばさん相手に口喧嘩では勝てない事を知っている。
まるで母親と口喧嘩をするようなもので。
・・・そう、彼女らにも俺と歳の変わらない息子さんが居るらしい。
それ故、言葉遣いというものが上司と部下ではなく、親と子のソレなのだ。
当時の俺には、介護のイロハなど知識の外であった。
必要以上に患者の世話を焼けば、それは患者の甘えに繋がる。
すると、普段温厚な患者でもある日突然
「お前じゃ話にならねぇんだよ!~さんを呼んでくれ!」というように
個人の名前が出るようになってしまう。
そういった事を避ける為にも、必要以上の事をしない事が現場には求められていた。
介護の世界には正解など存在しない。
俺は今まで学んで来ていた「公式」やら「解き方」が通用しない世界で
唯一、自分が選び取った考えを尊重したかった。
その後も、迷惑はかけないようにと努力を続けたが
結果的に言えば、俺の考えはその職場に定着する事は無かった。
何年も習慣の様に続いてきた仕事の流れ。
初めて、俺は逆流という言葉を覚えた。
自身の目指す流れが、とてつもなくちっぽけで脈々と続いてきた流れを変えるには
それ以上の力が必要だった事を学んだ。
長い物には、巻かれるべきなのだ。
だって、ソレが人生一番楽な生き方なのだから・・・。
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