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教育とは ~その2~
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職場にも慣れ、職員とも上手く協力体制が出来上がった頃
俺はある一つの疑問を持ち始める。
まず気になったのは事務長である戸北の巡視だった。
専ら巡視が行われるのは昼食時。
その時、普通の介護職員であれば見過ごさないであろう
若者たちの雑な介護を、彼は素通りしていく。
中堅の一人、渡辺によると施設長を始め、あの家族は介護の資格を持っていない。らしい
故に、巡視にやって来たとしても、彼らが注意出来る事と言えば
言葉遣いや態度といった当たり前の部分だけだというのだ。
そうして、教育を中堅に丸投げした結果
「見て覚えろ」としか言えない忙しさの中、まともな教育も出来ず
猿真似の様な介護が横行してしまったという。
「僕等もね、時間があるなら本当はマンツーマンでも講義でもやってあげたいさ。でも時間が・・・。」
「・・・。」
「それに、僕らが2,3ガツンというと彼ら、直ぐ辞めるって言い出すから
人手が無いこっちとしては強く言えないのさ。」
「それを代わりに、施設長や事務長とかが言うべき事なのでは?」
「まぁ、そうなんだけど・・・知識が無いだろ?だから言葉遣いとかの注意だけで終わっちゃうのさ。」
「でもこれじゃ次に入ってくる人たちが続きませんよ。」
「分かっちゃいるんだけどねぇ・・・。」
利用者の様子も見ず、スプーンいっぱいに乗せた食事を口に流し込む。
呑み込みの確認もせず、次の一口を。
当然空かない口にイライラしながら押し込むスプーン。
食事は零れ、エプロンは汚れ放題。
これを見て尚、平然と仕事が回っていると去っていく事務長。
俺はこの時から、この施設の異質な影を認識する事となった。
その1か月後
新人の「小峰」がこの施設にやって来た。
「小峰」は無資格ではあるものの祖母の介護が必要になり、介護技術を学ぶため
現場に入ろうと決めてきたようだ。
年齢は25で俺と貝谷そして小峰の3人は
中堅と若い子らとのパイプ役のような立ち位置になっていった。
だが、正直な所
彼も不運な男だ。
恐らく、熱意や技術、思いやりなどは俺に匹敵するレベルになるのは早いだろう。
だが目の前に居るのは忙しく教育なんて言ってられない中堅とその真似しかできない若手だ。
その若手が小峰を相手に技術だけをひけらかし教育と捉えているのだからお笑いだ。
腰の低い小峰を前に若手の子らは天狗の鼻を伸ばしていく一方で
見ていられない。というのが実情だった。
これが介護の一部だ。
団塊の世代が手助けを必要とする時代
我々、既存の介護士人口では回らない。たとえ、猿真似芸当であったとしても
事故さえ起こさなければそれでよし。とするしかないのだ。
そんなある日の事だ。
次なる事件の幕が下りる。
俺はある一つの疑問を持ち始める。
まず気になったのは事務長である戸北の巡視だった。
専ら巡視が行われるのは昼食時。
その時、普通の介護職員であれば見過ごさないであろう
若者たちの雑な介護を、彼は素通りしていく。
中堅の一人、渡辺によると施設長を始め、あの家族は介護の資格を持っていない。らしい
故に、巡視にやって来たとしても、彼らが注意出来る事と言えば
言葉遣いや態度といった当たり前の部分だけだというのだ。
そうして、教育を中堅に丸投げした結果
「見て覚えろ」としか言えない忙しさの中、まともな教育も出来ず
猿真似の様な介護が横行してしまったという。
「僕等もね、時間があるなら本当はマンツーマンでも講義でもやってあげたいさ。でも時間が・・・。」
「・・・。」
「それに、僕らが2,3ガツンというと彼ら、直ぐ辞めるって言い出すから
人手が無いこっちとしては強く言えないのさ。」
「それを代わりに、施設長や事務長とかが言うべき事なのでは?」
「まぁ、そうなんだけど・・・知識が無いだろ?だから言葉遣いとかの注意だけで終わっちゃうのさ。」
「でもこれじゃ次に入ってくる人たちが続きませんよ。」
「分かっちゃいるんだけどねぇ・・・。」
利用者の様子も見ず、スプーンいっぱいに乗せた食事を口に流し込む。
呑み込みの確認もせず、次の一口を。
当然空かない口にイライラしながら押し込むスプーン。
食事は零れ、エプロンは汚れ放題。
これを見て尚、平然と仕事が回っていると去っていく事務長。
俺はこの時から、この施設の異質な影を認識する事となった。
その1か月後
新人の「小峰」がこの施設にやって来た。
「小峰」は無資格ではあるものの祖母の介護が必要になり、介護技術を学ぶため
現場に入ろうと決めてきたようだ。
年齢は25で俺と貝谷そして小峰の3人は
中堅と若い子らとのパイプ役のような立ち位置になっていった。
だが、正直な所
彼も不運な男だ。
恐らく、熱意や技術、思いやりなどは俺に匹敵するレベルになるのは早いだろう。
だが目の前に居るのは忙しく教育なんて言ってられない中堅とその真似しかできない若手だ。
その若手が小峰を相手に技術だけをひけらかし教育と捉えているのだからお笑いだ。
腰の低い小峰を前に若手の子らは天狗の鼻を伸ばしていく一方で
見ていられない。というのが実情だった。
これが介護の一部だ。
団塊の世代が手助けを必要とする時代
我々、既存の介護士人口では回らない。たとえ、猿真似芸当であったとしても
事故さえ起こさなければそれでよし。とするしかないのだ。
そんなある日の事だ。
次なる事件の幕が下りる。
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