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行きずりの「侍」
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ジュナは時間も忘れ、読書に耽る。
彼女が我に帰り、辺りを見渡すと、既に西日が地平線に掛かり、辺りも薄暗くなった頃だ。
「大変。急いで戻らないと・・・。」
慌てて立ち上がり、来た道を戻ろうと振り返る。
だが、そこに映ったのは昼間の清々しい林道ではなく
闇を一層深くした魔窟のような一本道だった。
「女一人でこの道は・・・些か、おっかないものを感じるわね・・・。」
意を決し、歩みを進めた時
木々に止まっていたカラスが一斉に飛び立ち、喚き散らした。
「っひぃ!」
瞬間的に身をかがめ、中腰になるジュナ。
しかし、そこはやはりお転婆娘。覚悟を決めた彼女は足を止める事無く進み続けた。
だが、一人暗がりを歩く恐怖から
木の枝から葉が落ち、地面に擦れる音だけでも敏感に聞き取りそちらに目が行く。
ましてや、ここにはジュナ一人。自身の足音以外に音など聞こえる訳もない。
鼓膜のすぐ傍で、心臓が鼓動を速めているのが分かる。
手足は微かに震え、空気が薄い。
良くない物は、常に闇の中からやって来る。
それが目に見えた時に逃げ出しても、もう遅いのだ。
「ッバキ!」
「誰!」
音のした方角は、林道の脇。木々の立ち並ぶ奥から枝を踏みしめる音がする。
ジュナは目を凝らした。
木々の隙間から、白い何かが見える。
しかも、ソレは少しづつ、動いているようにも見える。
木の影を縫い、姿を隠したまま、こちらに近づいている。
ジュナは焦った。
一瞬で『この場から逃げなければ』と確信し、震え縺れる足を無我夢中で動かした。
その瞬間、白い何かが姿を見せる。
「ヒューマノイドウルフ!そ、そんな。何でこんな所に!」
白銀の毛に覆われたソレは体長2メートルは優に超える人狼族であった。
「ゥオォォーーーン!」
林道から出てきた人狼は、孤空に遠吠えをし人のソレとは比較にならない速さでジュナを追う。
人狼に見つかってしまったら一巻の終わりだ。
物凄い速さで距離を縮めて来る人狼にジュナは成す術なく、逃げ道を塞がれた。
だが、この程度で諦める程、彼女も臆病ではない。
地面の砂を一掴みし、人狼の顔めがけてまき散らした。
間一髪、隠れる事には成功した。
だが、人狼には嗅覚がある。時間がかかれば必ず見つかってしまう。
何とか逃げ仰せなければ・・・。
しかし、ジュナの奮闘虚しく、人狼との距離は少しづつ縮まっていく。
「~♪」
「何、この音。」
林道の奥から、微かに音楽のようなものが聞こえる。
それは次第に近くなり、人狼もその音に警戒しだした。
「これ・・・鼻歌だ!」
音の正体に気付いた時、そこには風変わりな男が竹串を咥えながら歩いていた。
「・・・騎士の・・・紋章?」
その男は、見た事もない風貌の割に、見慣れた紋章の布を腕に巻いていた。
「騎士団の一員だ!助かった!」
ジュナは意を決して、男の元まで走り出した。
それを人狼が見逃すはずもなく、直ぐに追ってくる。
「そこの貴方!騎士でしょう!?た、助けて!」
「・・・いまだ、拙者を騎士と呼ぶ者が居るのか・・・。」
「助け・・・きゃぁ!」
ジュナは木の根に躓き、倒れた。
騎士との距離は凡そ20メートル。
ジュナは悟った。此処で死ぬのだと。
「そんな・・・。」
「ガァァァァ!」
人狼の鋭い爪がジュナめがけて降りかかる。
次の瞬間
「ガチンッ!」という大きな音と共に、ジュナの横には騎士が立っていた。
騎士は、長い刃物を片手で左外側に放り出し、猛獣の爪を防いでいた。
「あ、貴方。・・・この距離を一体どうやって・・・。」
「夜道を女性が独り歩き。危のうございますねぇ。拙者この近くの城に用がある故、送りましょう。」
「貴方は一体・・・誰?」
「ウゥゥ!グゥワァァ!」
「会話中だ、黙れよ?獣風情が!」
「ヴゥゥゥ!・・・!」
騎士の気迫に負けた獣は暗闇の林道の中へ消えていった。
「さぁ、お嬢さん。手を貸しましょう。立てますか?」
「貴方、誰なのよ?」
「名乗るほどの者では。しがない侍でございますれば・・・。さ、城までご案内しましょう。」
これが、最弱剣士と姫君の最初の出会いである。
彼女が我に帰り、辺りを見渡すと、既に西日が地平線に掛かり、辺りも薄暗くなった頃だ。
「大変。急いで戻らないと・・・。」
慌てて立ち上がり、来た道を戻ろうと振り返る。
だが、そこに映ったのは昼間の清々しい林道ではなく
闇を一層深くした魔窟のような一本道だった。
「女一人でこの道は・・・些か、おっかないものを感じるわね・・・。」
意を決し、歩みを進めた時
木々に止まっていたカラスが一斉に飛び立ち、喚き散らした。
「っひぃ!」
瞬間的に身をかがめ、中腰になるジュナ。
しかし、そこはやはりお転婆娘。覚悟を決めた彼女は足を止める事無く進み続けた。
だが、一人暗がりを歩く恐怖から
木の枝から葉が落ち、地面に擦れる音だけでも敏感に聞き取りそちらに目が行く。
ましてや、ここにはジュナ一人。自身の足音以外に音など聞こえる訳もない。
鼓膜のすぐ傍で、心臓が鼓動を速めているのが分かる。
手足は微かに震え、空気が薄い。
良くない物は、常に闇の中からやって来る。
それが目に見えた時に逃げ出しても、もう遅いのだ。
「ッバキ!」
「誰!」
音のした方角は、林道の脇。木々の立ち並ぶ奥から枝を踏みしめる音がする。
ジュナは目を凝らした。
木々の隙間から、白い何かが見える。
しかも、ソレは少しづつ、動いているようにも見える。
木の影を縫い、姿を隠したまま、こちらに近づいている。
ジュナは焦った。
一瞬で『この場から逃げなければ』と確信し、震え縺れる足を無我夢中で動かした。
その瞬間、白い何かが姿を見せる。
「ヒューマノイドウルフ!そ、そんな。何でこんな所に!」
白銀の毛に覆われたソレは体長2メートルは優に超える人狼族であった。
「ゥオォォーーーン!」
林道から出てきた人狼は、孤空に遠吠えをし人のソレとは比較にならない速さでジュナを追う。
人狼に見つかってしまったら一巻の終わりだ。
物凄い速さで距離を縮めて来る人狼にジュナは成す術なく、逃げ道を塞がれた。
だが、この程度で諦める程、彼女も臆病ではない。
地面の砂を一掴みし、人狼の顔めがけてまき散らした。
間一髪、隠れる事には成功した。
だが、人狼には嗅覚がある。時間がかかれば必ず見つかってしまう。
何とか逃げ仰せなければ・・・。
しかし、ジュナの奮闘虚しく、人狼との距離は少しづつ縮まっていく。
「~♪」
「何、この音。」
林道の奥から、微かに音楽のようなものが聞こえる。
それは次第に近くなり、人狼もその音に警戒しだした。
「これ・・・鼻歌だ!」
音の正体に気付いた時、そこには風変わりな男が竹串を咥えながら歩いていた。
「・・・騎士の・・・紋章?」
その男は、見た事もない風貌の割に、見慣れた紋章の布を腕に巻いていた。
「騎士団の一員だ!助かった!」
ジュナは意を決して、男の元まで走り出した。
それを人狼が見逃すはずもなく、直ぐに追ってくる。
「そこの貴方!騎士でしょう!?た、助けて!」
「・・・いまだ、拙者を騎士と呼ぶ者が居るのか・・・。」
「助け・・・きゃぁ!」
ジュナは木の根に躓き、倒れた。
騎士との距離は凡そ20メートル。
ジュナは悟った。此処で死ぬのだと。
「そんな・・・。」
「ガァァァァ!」
人狼の鋭い爪がジュナめがけて降りかかる。
次の瞬間
「ガチンッ!」という大きな音と共に、ジュナの横には騎士が立っていた。
騎士は、長い刃物を片手で左外側に放り出し、猛獣の爪を防いでいた。
「あ、貴方。・・・この距離を一体どうやって・・・。」
「夜道を女性が独り歩き。危のうございますねぇ。拙者この近くの城に用がある故、送りましょう。」
「貴方は一体・・・誰?」
「ウゥゥ!グゥワァァ!」
「会話中だ、黙れよ?獣風情が!」
「ヴゥゥゥ!・・・!」
騎士の気迫に負けた獣は暗闇の林道の中へ消えていった。
「さぁ、お嬢さん。手を貸しましょう。立てますか?」
「貴方、誰なのよ?」
「名乗るほどの者では。しがない侍でございますれば・・・。さ、城までご案内しましょう。」
これが、最弱剣士と姫君の最初の出会いである。
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