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掴めない影

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「ジャンセ、征伐部隊での出兵、ご苦労であった。」

「父上、まさか、父上から私の元へおいでになられるとは・・・如何されましたか?」

「ジャンセ、其方の武勇を聞きに来たのだ。掛けなさい。どんな事があったか教えて欲しいのだ。」

「はぁ・・・?じぃから急ぎの命と仰せつかり支度を急いだまでです。私は特別何かをした訳では。」

「良いのだ。兵は自分で揃えたのか?」

「あ、いえ。傍付のグラムズに一任しました。彼であれば、短い時間で徴兵できると思い・・・。」

「なるほど、一命を受けたグラムズが兵舎で有志を募ったか。出兵後はどの様に動いたのだ?」

「兵を分散させました。7割の兵士をインプに。残りの3割をジャイアントオーガに充てました。」

「やはり・・・か。う~~む・・・分からなくなってきたぞ・・・。」

「父上?」

ストレイ卿の証言を元に、地図上で魔物や征伐軍の動きを確認した国王。
インプ出現の草原から、ジャイアントオーガ出現の坂道までは馬でも一刻(2時間)はかかる。
草原から王国までも半時(30分)だ。
つまり出兵から一刻半の時間を要さねば、坂道へは辿り着かないのである。
また、同人からの証言で騎兵隊が現場に着いた時には、既に伝令の騎兵は息絶え、同人も危機にあった。
騎兵に騎士という組み合わせであったにせよ、一刻半戦い抜く事ができるだろうか?
いや、無理だ。熟練の騎士が3人係でやっと互角に戦える相手なのだ、圧倒的戦力不足。
それで一刻半は持たないだろう。

この時、国王の疑念は核心に変わった。
今回の一件を裏で操る者が確実に居る。
だが、国王はその真意に辿り着く事ができずに居た。
国王は立ち上がると、再び王室へと戻った。

「マルタン!」

「ここに。」

「晩餐会に参列した各国に対し、書状を届けよ。今回の件は我が国に潜む間者の陰謀であり
現在調査中である。とな。そして、情報の開示などは随時行っていく事も記せよ。」

「分かりました。すぐに手配させましょう。」

数日後、カステロ卿により新たな事実が浮上した。

「急ぎの報告とは?」

「っは、アムスの坂において調査を進めた所、人目に付かぬ脇道に馬数頭と人の足跡を確認。
恐らく、脇道に何者かが潜んでいたのではないかと・・・。」

「ほう。」

「その足跡を辿った所、戦場となった坂道まで続き、我が軍の騎兵隊と合流を果たしている模様です。」

「妙だな。引き続きの調査を頼むぞ。」

「承知しました!」

アムスの坂に拠点となる建物はない。故に人員を配置する必要も無い。
だが、これでストレイ卿の感じた疑念にも納得がいく。
その伏兵はジャイアントオーガが出る事を分かった上で伏兵をしていたのだろう。
そして、頃合いを見て助けに入った。
完全なる自作自演だ。
いよいよもって真意が分からん。本格的に調べなければなるまい。

国王は、更なる証言を求め、今度はグラムズ卿の元へと足を運ぶ。
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