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追想
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「これは・・・ジュナ様。如何なされました?」
「・・・騎士ブレアの容態は?」
「・・・申し上げにくいのですが、生きている事が奇跡としか・・・。」
「治るの?」
「最善は尽くしております。」
「・・・そう。」
「ご面会であれば、お静かに願います。」
「えぇ。」
ジュナは病室の椅子に座り、彼の顔を覗き込む。
その顔は青白く、生気を感じない。しかし、呼吸はしているし表情は穏やかなものだ。
ジュナにはそれが余計に辛かった。
・・・・・。
目を覚ますと、そこは火の海だった。
「来たか!雨。いいか、よく聞け!ここはもう持たん!月虎を連れて城から出よ!」
「な、なりません!御館様!ここは拙者に任せ御館様が脱出を!」
「ならん!儂が行けば、追手が掛かる!貴様ら天恵五人衆で月虎を守れ!そして、何時か仇を取れ!」
「しかし!若はまだ3つ!奥方様や御館様の存在が必要です!」
「何を言うか!月虎も立派な男よ!親などなくとも子は育つ!」
「居たぞ!牙城の主、虎正殿とお見受けした!その首、貰い受ける!」
「ふん!如何にも。虎正は此処に居る!そう易々と首を落とせると思うなよぉ!」
「御館様!」
「行けぇい!雨、忠義果たさんと思うなら儂らの屍など捨て置けぇ!」
「承知!」
こうして、俺達天恵五人衆は各地方を転々と渡り歩く事となる。
「雨、風、雲、雷、霙」とそれぞれ呼ばれる忍びの者。
名にちなんだ抜刀術の使い手でありそれらの達人集団が三つの幼子と
さびれた村や山中に潜み、時を過ごした。
しかし、追手や流行り病によって、気付けば仲間は皆、死んでいった。
そして、若が5つになった頃・・・。
「・・・雨、虎はもう疲れたぞ・・・。」
「若・・・。」
「一体、何時まで逃げればいいのだ?あとどれ位、隠れていればいいのだ?」
「申し訳ありません。若。天恵五人衆、もっと力があれば若にこんなお辛い目には合わせませんでした。」
「何を言うか、この二年。雨たちは虎のため尽力したではないか。」
「・・・。」
「だが、父上がどうなったかも分からぬこの状況。はやく何とかせねば・・・。」
「若・・・ご立派になられました・・・。雨は嬉しゅうございます。」
「雨、何かいい策はないか?」
「・・・一つ、ありますれば・・・。虎正公に仕えた半田殿であれば若を丁重に持て成してくれましょう。」
「権兵衛か?」
「は、左様です。半田殿は虎正公に常々、何かあれば助力を惜しまん。と申しておりました。
若が生まれた際も、己が子のように抱かれ喜んでおりました。」
「そうか。」
「虎正公が奇襲を受けたと知り、恐らくは大層、憤慨なされていた事でしょう。」
「分かった、権兵衛の元へ向かおう。そこでどの様な事になっても虎は其方を恨みはせん!」
「仰せのままに!」
・・・・・。
「何!?虎正公の使者が来ただと!?何をしている!直ぐに通さんか!莫迦者が!」
「も、申し訳ございません!直ぐにご案内します!」
「半田殿、急な謁見。申し訳ござらん。」
「ほう・・・天恵五人集か。して、何用だ?」
「半田殿にお助け頂きたく・・・。」
「仇討ちか?」
「いえ、どうか、若を御傍においていただけないでしょうか。」
「ん?若・・・?も、もしや・・・。」
「ご、権兵衛。久しいのぅ・・・。」
「つ、月虎様!あぁ、こんなに薄汚れて・・・御労しや・・・誰か!誰か居らんか!」
「っは!」
「直ぐに風呂の準備をせい!若様をお連れするのだ!」
「承知しました!」
「若様、お腹は空いておりませぬか?直ぐに食事も準備させましょう。ごゆるりとお寛ぎ下され。」
「す、すまんな。権兵衛。」
「滅相もございません。さ、若様をご案内せい。」
「どうぞ、こちらへ。」
「・・・事情は分かった。若様は儂の元で預かろう。しかし、ここに若様が居ると知れれば
間違いなく追手も来よう。そんな危険な目に何度も合わせる訳にもゆくまい・・・。」
「そこで、影武者をご用意頂きたく・・・。」
「ほう、自ら囮になるか?・・・良かろう、準備が整うまでここで羽を休めるといい。」
「感謝の極み。」
「良い良い。虎正公とは兄弟のようなもの。恩を返す時が来ただけの事よ。」
そうして、囮として方々を練り歩き、海を渡り
俺は今の国王と出会ったのである。
「・・・騎士ブレアの容態は?」
「・・・申し上げにくいのですが、生きている事が奇跡としか・・・。」
「治るの?」
「最善は尽くしております。」
「・・・そう。」
「ご面会であれば、お静かに願います。」
「えぇ。」
ジュナは病室の椅子に座り、彼の顔を覗き込む。
その顔は青白く、生気を感じない。しかし、呼吸はしているし表情は穏やかなものだ。
ジュナにはそれが余計に辛かった。
・・・・・。
目を覚ますと、そこは火の海だった。
「来たか!雨。いいか、よく聞け!ここはもう持たん!月虎を連れて城から出よ!」
「な、なりません!御館様!ここは拙者に任せ御館様が脱出を!」
「ならん!儂が行けば、追手が掛かる!貴様ら天恵五人衆で月虎を守れ!そして、何時か仇を取れ!」
「しかし!若はまだ3つ!奥方様や御館様の存在が必要です!」
「何を言うか!月虎も立派な男よ!親などなくとも子は育つ!」
「居たぞ!牙城の主、虎正殿とお見受けした!その首、貰い受ける!」
「ふん!如何にも。虎正は此処に居る!そう易々と首を落とせると思うなよぉ!」
「御館様!」
「行けぇい!雨、忠義果たさんと思うなら儂らの屍など捨て置けぇ!」
「承知!」
こうして、俺達天恵五人衆は各地方を転々と渡り歩く事となる。
「雨、風、雲、雷、霙」とそれぞれ呼ばれる忍びの者。
名にちなんだ抜刀術の使い手でありそれらの達人集団が三つの幼子と
さびれた村や山中に潜み、時を過ごした。
しかし、追手や流行り病によって、気付けば仲間は皆、死んでいった。
そして、若が5つになった頃・・・。
「・・・雨、虎はもう疲れたぞ・・・。」
「若・・・。」
「一体、何時まで逃げればいいのだ?あとどれ位、隠れていればいいのだ?」
「申し訳ありません。若。天恵五人衆、もっと力があれば若にこんなお辛い目には合わせませんでした。」
「何を言うか、この二年。雨たちは虎のため尽力したではないか。」
「・・・。」
「だが、父上がどうなったかも分からぬこの状況。はやく何とかせねば・・・。」
「若・・・ご立派になられました・・・。雨は嬉しゅうございます。」
「雨、何かいい策はないか?」
「・・・一つ、ありますれば・・・。虎正公に仕えた半田殿であれば若を丁重に持て成してくれましょう。」
「権兵衛か?」
「は、左様です。半田殿は虎正公に常々、何かあれば助力を惜しまん。と申しておりました。
若が生まれた際も、己が子のように抱かれ喜んでおりました。」
「そうか。」
「虎正公が奇襲を受けたと知り、恐らくは大層、憤慨なされていた事でしょう。」
「分かった、権兵衛の元へ向かおう。そこでどの様な事になっても虎は其方を恨みはせん!」
「仰せのままに!」
・・・・・。
「何!?虎正公の使者が来ただと!?何をしている!直ぐに通さんか!莫迦者が!」
「も、申し訳ございません!直ぐにご案内します!」
「半田殿、急な謁見。申し訳ござらん。」
「ほう・・・天恵五人集か。して、何用だ?」
「半田殿にお助け頂きたく・・・。」
「仇討ちか?」
「いえ、どうか、若を御傍においていただけないでしょうか。」
「ん?若・・・?も、もしや・・・。」
「ご、権兵衛。久しいのぅ・・・。」
「つ、月虎様!あぁ、こんなに薄汚れて・・・御労しや・・・誰か!誰か居らんか!」
「っは!」
「直ぐに風呂の準備をせい!若様をお連れするのだ!」
「承知しました!」
「若様、お腹は空いておりませぬか?直ぐに食事も準備させましょう。ごゆるりとお寛ぎ下され。」
「す、すまんな。権兵衛。」
「滅相もございません。さ、若様をご案内せい。」
「どうぞ、こちらへ。」
「・・・事情は分かった。若様は儂の元で預かろう。しかし、ここに若様が居ると知れれば
間違いなく追手も来よう。そんな危険な目に何度も合わせる訳にもゆくまい・・・。」
「そこで、影武者をご用意頂きたく・・・。」
「ほう、自ら囮になるか?・・・良かろう、準備が整うまでここで羽を休めるといい。」
「感謝の極み。」
「良い良い。虎正公とは兄弟のようなもの。恩を返す時が来ただけの事よ。」
そうして、囮として方々を練り歩き、海を渡り
俺は今の国王と出会ったのである。
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