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29話 デート
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相引き。
ソレイユにとってもアマリリスにとっても、それは初めてのことだった。
それもそのはず、彼らは十歳。
まだ成熟していないのである。
お互いに。
肉体的にも、精神的にも――
それ故に、具体的なプランも思いつくわけがない。
なので、デートに関してはエレナが考えてくれた。
エレナのプランは意外とまともであった。
まず、朝に市場に行く。
そこの露店で一緒に茶を楽しむ。
それから、教会に行く。神に祈りを捧げるのである。
そして、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生家である大聖女記念館で見学。
お昼頃になったら、レストランで食事。おすすめのレストランはリュンヌが探してくれた。
レストランで食事が終わったら、また市場に戻る。
お昼頃には市場が盛んになっているから、アマリリスの好きそうな衣服やアクセサリーを探す為である。
そして夕食のレストランの予約時間を潰すために、露店でお茶。
夕食を食べ終わったら、フルールの町を見渡せる丘で夜景を締めである。
普通な相引きである。
普通が故に良質なデート。
シャルロットは、エレナに問う。
「あなた竜なのに、よくこんなにいい感じのデートを思いつくのね」
「まあ、五十年ほど人間の町で過ごせば誰でも思いつくじゃろ」
「そうか……」
と言いつつ、八十年と十五年足してもロマンス小説並みの相引きプランしか思いつかないシャルロットであった。
「エレナって、相引きしたことある?」
「まあ、戯れに何度かじゃがな」
人間のシャルロットよりも経験豊富であった。
ともかく。
ソレイユとアマリリス。
彼らは、朝一に市場へ向かった。
二人を尾行する、シャルロットとエレナ。
ちなみに、リュンヌとルークはそもそもアマリリスが見えないから、仕事に行ってもらった。
そして、露店に着く。人気の茶屋である。
ルークは、茶を二杯注文した。
しばらくして茶が提供されたが、当然店員にはアマリリスが見えていない。
ソレイユの向かいのテーブルにポツンも置かれた茶を見て何かを察したようであった。
多分、店員はソレイユの身内が亡くなって、その身内を偲んで陰膳しているものと想像したのだろう。店員は気を利かせて頼んでもいない茶菓子を持ってきた。
ソレイユからしてみれば、普通にアマリリスが見えているし声も聞こえているから会話もしている。けれども、側から見てみれば虚空に話しかけている変な奴である。
露店を後にして、二人は教会に向かった。
教会でもソレイユは、修道士から哀れな顔を向けられた。そして、神の加護があるよう祈るつもりが逆に祈られたのであった。
大聖女記念館に行き、レストランでの昼食を終えて(ソレイユが二人分食べた)二人は再び市場に戻った。
そこでソレイユは、アマリリスが気に入ったアクセサリーを買ってあげた。
アマリリスは、心から喜んでいた。
時間を潰し、夕食を終えて二人は夜景を見に行った。
フルールの町。
丘。
そこから町の全貌が見渡せた。
百年前。即ち大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが生きていた時代の夜というのは真っ暗であった。
特に魔王の健在であった時代は、魔物を寄せると言う理由で明かりが付けられなかった。
しかし今の時代は、魔石技術と言うものが発達していた。その技術は、魔石の中に込められた魔法を利用して、魔法が使えないものでも手軽に魔法が使うことが出来た。
非常に便利な世の中になったものである。
フルールの夜景は綺麗だった。
尾行していたシャルロットとエレナも、思わず二人を忘れて見惚れてしまうほどに。
ソレイユは、アマリリスに問う。
「今日の、その、デートとは楽しかったか?」
と。
アマリリスの解答はこうであった。
「ちっとも楽しくなかった」
「え?」
「だって、あなた全くエスコート出来てなかったもの」
「ごめん、こんなの初めてで」
「私はレディなんだから、ちゃんとエスコートして。自分の話ばっかりされてもつまんない」
そうなのである。
相引き中、ソレイユは自分の話ばかりしていて、あまりアマリリスの話に耳を傾けていなかった。
しかし。
アマリリスは続けてこ言った。
「あなたに対して、それは求めすぎだったかもしれないわね」
と。
ソレイユは、アマリリスに謝る。
「ごめん」
「謝らなくていいわ」
「でも……」
「ちっとも楽しくはなかったけど、心は晴れたから」
「!」
アマリリスは、ソレイユに抱きついた。
「ソレイユ、ありがとね。私の夢を叶えてくれて」
「アマリリス!」
「私の未練は無くなったわ。これで迷うことなく逝くべき場所に行けるわ」
「逝かないでくれ!」
ソレイユの瞼から、涙が溢れでる。
アマリリスとは短い時間であった。しかし、ソレイユにとっても初めての経験であった。
ソレイユにとってもアマリリスとの時間はかけがえのない時間だったのである。
アマリリスが、消えつつある。
ソレイユは、叫んだ。
「逝かないでくれ!」
「それじゃあね」
アマリリスは、そっとソレイユの唇に口付けした。
「さよなら」
「アマリリス!」
そして、アマリリスは消えた。
号泣するソレイユ。
後ろで、見ているシャルロットとエレナも思わず号泣。
合流して、皆んなでおんおん泣いた。
抱き合って、泣き腫らした。
とその時。
目の前に、少女。
アマリリスであった。
アマリリスはこう言うのであった。
「ごめんなさい、未練が出来ちゃった。あなたたちと一緒にいたくなっちゃった」
と。
三人はその場でずっこけた。
ソレイユにとってもアマリリスにとっても、それは初めてのことだった。
それもそのはず、彼らは十歳。
まだ成熟していないのである。
お互いに。
肉体的にも、精神的にも――
それ故に、具体的なプランも思いつくわけがない。
なので、デートに関してはエレナが考えてくれた。
エレナのプランは意外とまともであった。
まず、朝に市場に行く。
そこの露店で一緒に茶を楽しむ。
それから、教会に行く。神に祈りを捧げるのである。
そして、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生家である大聖女記念館で見学。
お昼頃になったら、レストランで食事。おすすめのレストランはリュンヌが探してくれた。
レストランで食事が終わったら、また市場に戻る。
お昼頃には市場が盛んになっているから、アマリリスの好きそうな衣服やアクセサリーを探す為である。
そして夕食のレストランの予約時間を潰すために、露店でお茶。
夕食を食べ終わったら、フルールの町を見渡せる丘で夜景を締めである。
普通な相引きである。
普通が故に良質なデート。
シャルロットは、エレナに問う。
「あなた竜なのに、よくこんなにいい感じのデートを思いつくのね」
「まあ、五十年ほど人間の町で過ごせば誰でも思いつくじゃろ」
「そうか……」
と言いつつ、八十年と十五年足してもロマンス小説並みの相引きプランしか思いつかないシャルロットであった。
「エレナって、相引きしたことある?」
「まあ、戯れに何度かじゃがな」
人間のシャルロットよりも経験豊富であった。
ともかく。
ソレイユとアマリリス。
彼らは、朝一に市場へ向かった。
二人を尾行する、シャルロットとエレナ。
ちなみに、リュンヌとルークはそもそもアマリリスが見えないから、仕事に行ってもらった。
そして、露店に着く。人気の茶屋である。
ルークは、茶を二杯注文した。
しばらくして茶が提供されたが、当然店員にはアマリリスが見えていない。
ソレイユの向かいのテーブルにポツンも置かれた茶を見て何かを察したようであった。
多分、店員はソレイユの身内が亡くなって、その身内を偲んで陰膳しているものと想像したのだろう。店員は気を利かせて頼んでもいない茶菓子を持ってきた。
ソレイユからしてみれば、普通にアマリリスが見えているし声も聞こえているから会話もしている。けれども、側から見てみれば虚空に話しかけている変な奴である。
露店を後にして、二人は教会に向かった。
教会でもソレイユは、修道士から哀れな顔を向けられた。そして、神の加護があるよう祈るつもりが逆に祈られたのであった。
大聖女記念館に行き、レストランでの昼食を終えて(ソレイユが二人分食べた)二人は再び市場に戻った。
そこでソレイユは、アマリリスが気に入ったアクセサリーを買ってあげた。
アマリリスは、心から喜んでいた。
時間を潰し、夕食を終えて二人は夜景を見に行った。
フルールの町。
丘。
そこから町の全貌が見渡せた。
百年前。即ち大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが生きていた時代の夜というのは真っ暗であった。
特に魔王の健在であった時代は、魔物を寄せると言う理由で明かりが付けられなかった。
しかし今の時代は、魔石技術と言うものが発達していた。その技術は、魔石の中に込められた魔法を利用して、魔法が使えないものでも手軽に魔法が使うことが出来た。
非常に便利な世の中になったものである。
フルールの夜景は綺麗だった。
尾行していたシャルロットとエレナも、思わず二人を忘れて見惚れてしまうほどに。
ソレイユは、アマリリスに問う。
「今日の、その、デートとは楽しかったか?」
と。
アマリリスの解答はこうであった。
「ちっとも楽しくなかった」
「え?」
「だって、あなた全くエスコート出来てなかったもの」
「ごめん、こんなの初めてで」
「私はレディなんだから、ちゃんとエスコートして。自分の話ばっかりされてもつまんない」
そうなのである。
相引き中、ソレイユは自分の話ばかりしていて、あまりアマリリスの話に耳を傾けていなかった。
しかし。
アマリリスは続けてこ言った。
「あなたに対して、それは求めすぎだったかもしれないわね」
と。
ソレイユは、アマリリスに謝る。
「ごめん」
「謝らなくていいわ」
「でも……」
「ちっとも楽しくはなかったけど、心は晴れたから」
「!」
アマリリスは、ソレイユに抱きついた。
「ソレイユ、ありがとね。私の夢を叶えてくれて」
「アマリリス!」
「私の未練は無くなったわ。これで迷うことなく逝くべき場所に行けるわ」
「逝かないでくれ!」
ソレイユの瞼から、涙が溢れでる。
アマリリスとは短い時間であった。しかし、ソレイユにとっても初めての経験であった。
ソレイユにとってもアマリリスとの時間はかけがえのない時間だったのである。
アマリリスが、消えつつある。
ソレイユは、叫んだ。
「逝かないでくれ!」
「それじゃあね」
アマリリスは、そっとソレイユの唇に口付けした。
「さよなら」
「アマリリス!」
そして、アマリリスは消えた。
号泣するソレイユ。
後ろで、見ているシャルロットとエレナも思わず号泣。
合流して、皆んなでおんおん泣いた。
抱き合って、泣き腫らした。
とその時。
目の前に、少女。
アマリリスであった。
アマリリスはこう言うのであった。
「ごめんなさい、未練が出来ちゃった。あなたたちと一緒にいたくなっちゃった」
と。
三人はその場でずっこけた。
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