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30話 大聖女生誕祭
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大聖女生誕祭。
それは、午後に大聖女記念館に併設されている教会でのミサから始まる。
その後は、宴である。
そうなのである。
歌って踊って飲んでの大祭り。
この祭りに参加する為に、全国から多くの旅人も集まってくる。
そもそも、この祭りが始まったのは百年ほど前に魔王を討伐した大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが亡くなってからである。
それ以来、毎年この大祭が催されている。
魔王が撃ち倒されて平和になった世界に感謝し、
そして、魔王を討伐した大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの誕生を祝しての一大イベントである。
その為、毎年フルールの町にはこの時期に、王都から教会の司教以上の位の聖職者が派遣される。
今回は、現在ナルシス王国の聖女の位を拝命されている聖女ソフィアが、フルールの町へ派遣されることになっていた。
聖女ソフィア。
稀代の天才聖女であるとのことらしい。
神学校を主席で卒業し、聖女の力を持つことからそのまま聖女の位を教皇サンセリテから授かった。
ソフィアは、その美しい容姿からも国民から人気があった。
とは言え、シャルロットはソフィアをあまり快く思っていなかった。
それもそのはず、ソレイユの母の件があったからである。
ソレイユの母は、流行り病で命を落としてしまった。そんな母を哀れに思ったソレイユは、せめても聖職者の祈りを希望した。
そんな矢先に遭遇したソフィアは、ソレイユの頼みを断ったのである。
シャルロットには、それが許せなかった。
そもそも、聖女に死んだ人の霊を救う力はない。否、教皇にすらその力は備わっていない。
聖職者の役目は、生きている人間を少しでも間違った道を踏み外さないように導く事くらいのものである。
ところが、その役目を忘れて地位や権力、金に目が眩んでいるように見えるソフィアは聖女失格であると思った。
ともかく、それは終わった話。
今は、目の前の祭り。
宴。
酒を楽しもう。
歌って、
そして、踊り狂おう。
大聖女生誕祭の目玉イベントの一つは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの寸劇である。
と言うのは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが仲間達と魔王討伐に出発して討ち取るまでの舞台のことでる。その名も、『大聖女物語』。
この寸劇が、毎年大人気である。
シャルロット一行は、劇場にいた。
シャルロットは、エールが注がれた樽ジョッキ片手に。
ソレイユは、露店で買った串焼きを持ち。
リュンヌは、行儀良く座って。
ルークは、シャルロットにぴっとりくっついて。
エレナは、葡萄酒の入った大樽ごと持ち込みながら。
アマリリスに限っては、幽霊だから入場料は無料である。
『大聖女物語』の内容はこうであった。
物語りの始まりは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが誕生したところから始まる。
九歳にして聖女の力に開眼。教会入りして厳しい修行に耐えながらも、つつがなく成人を迎える。
二十歳になる頃には当時の教皇から大聖女の位を授かった。
そして、三十歳になる頃に魔王討伐の旅に出る事となった。
その時の仲間。
大聖女――ミュゲ・ジプソフィル。
魔法使い――サンセリテ。
聖騎士――アーサー。
暗黒騎士――アデラーン。
学者――クロエ。
である。
冒険は、以上五名が旧魔王領に侵攻するところから始まる。
普通の人間は、魔王領に入る事は出来ない。なぜかならば、魔王領は高濃度の魔素に汚染されていたからである。
立ち入ったら最後、被爆した後に直ちに魔物化することは間違いない。
よしんば入れたとしても、そこは魔物の巣窟である。
その魑魅魍魎の跋扈する旧魔王領の進行を、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルは広域浄化の力で加能とした。それは、魔王が誕生してから千年間成し遂げられなかった快挙であった。
そして、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが旧魔王領に侵攻して一年、ようやく魔王城に辿り着いた。
それまでは、常に魔物との死闘の連続であった。
そして、決戦。
劇では、苛烈なる戦闘がお芝居で表現された。
血の滲む戦い。
仲間たちが魔王の足止めをし、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが聖女の力を行使して致命傷を与える。その時に彼女が使用した力は、歴代聖者の中でも大聖女――ミュゲ・ジプソフィルしか使えないものであった。
光の聖剣。
光の投擲聖槍。
これは、光の護身剣の上位に当たる力である。
特に、光の投擲聖槍は遠隔から魔物に対して致命的な攻撃手段であった。
これらの力を駆使し、激闘の末に大聖女――ミュゲ・ジプソフィルはついに魔王を撃ち倒した。
劇中、魔王を撃ち倒した時の観客の拍手喝采は凄まじいものであった。
劇として凄く見応えがあった。
何よりも史実に忠実な劇であった。
大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの幼少期から魔王を討伐するエピソードまで、まるで走馬灯を見ているかのようであった。
ただ、劇としての演出なのか魔王の人物像だけが異なっていた。
劇での魔王は、如何にも悪役に徹していたのである。
勇者一行を待ち受ける魔王と言うように。
ところが、シャルロットの記憶にある魔王ニコラスは、生にしがみつく臆病な老人であった。
そうなのである。
ニコラスは、死を恐れて永遠の命を得る為に賢者の石を生成した。そして、それを取り込み魔王となった。
魔王ニコラスが、最も恐れていた事は死である。
勇者一行が魔王城に侵攻したときも、魔王ニコラスは立ち向かうどころか城の物置きの隅に怯えながら隠れていたのである。
その事実は、魔王討伐に向かった勇者一行にしか知り得ない。
終演後。
皆んなで劇の感想を語り合いながら、劇場を出た。
すでに日も暮れていた。
と。
どうやら外の様子がおかしい。
周りの声を聞く限り、怪我人が出たらしい。
祭りには、喧嘩等は良くある事である。
しかし、ただならぬ雰囲気であった。
シャルロット一行は、人集りに向かう。
どうやら、フルールの町の外から帰ってきた冒険者達の様子を見ているらしい。
冒険者達は、ギルドに続く道を歩いていた。
怪我人は、シャルロットの飲み友達のロシェであった。
気を失っているロシェは、仲間の冒険者の背負われていた。
それは、午後に大聖女記念館に併設されている教会でのミサから始まる。
その後は、宴である。
そうなのである。
歌って踊って飲んでの大祭り。
この祭りに参加する為に、全国から多くの旅人も集まってくる。
そもそも、この祭りが始まったのは百年ほど前に魔王を討伐した大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが亡くなってからである。
それ以来、毎年この大祭が催されている。
魔王が撃ち倒されて平和になった世界に感謝し、
そして、魔王を討伐した大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの誕生を祝しての一大イベントである。
その為、毎年フルールの町にはこの時期に、王都から教会の司教以上の位の聖職者が派遣される。
今回は、現在ナルシス王国の聖女の位を拝命されている聖女ソフィアが、フルールの町へ派遣されることになっていた。
聖女ソフィア。
稀代の天才聖女であるとのことらしい。
神学校を主席で卒業し、聖女の力を持つことからそのまま聖女の位を教皇サンセリテから授かった。
ソフィアは、その美しい容姿からも国民から人気があった。
とは言え、シャルロットはソフィアをあまり快く思っていなかった。
それもそのはず、ソレイユの母の件があったからである。
ソレイユの母は、流行り病で命を落としてしまった。そんな母を哀れに思ったソレイユは、せめても聖職者の祈りを希望した。
そんな矢先に遭遇したソフィアは、ソレイユの頼みを断ったのである。
シャルロットには、それが許せなかった。
そもそも、聖女に死んだ人の霊を救う力はない。否、教皇にすらその力は備わっていない。
聖職者の役目は、生きている人間を少しでも間違った道を踏み外さないように導く事くらいのものである。
ところが、その役目を忘れて地位や権力、金に目が眩んでいるように見えるソフィアは聖女失格であると思った。
ともかく、それは終わった話。
今は、目の前の祭り。
宴。
酒を楽しもう。
歌って、
そして、踊り狂おう。
大聖女生誕祭の目玉イベントの一つは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの寸劇である。
と言うのは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが仲間達と魔王討伐に出発して討ち取るまでの舞台のことでる。その名も、『大聖女物語』。
この寸劇が、毎年大人気である。
シャルロット一行は、劇場にいた。
シャルロットは、エールが注がれた樽ジョッキ片手に。
ソレイユは、露店で買った串焼きを持ち。
リュンヌは、行儀良く座って。
ルークは、シャルロットにぴっとりくっついて。
エレナは、葡萄酒の入った大樽ごと持ち込みながら。
アマリリスに限っては、幽霊だから入場料は無料である。
『大聖女物語』の内容はこうであった。
物語りの始まりは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが誕生したところから始まる。
九歳にして聖女の力に開眼。教会入りして厳しい修行に耐えながらも、つつがなく成人を迎える。
二十歳になる頃には当時の教皇から大聖女の位を授かった。
そして、三十歳になる頃に魔王討伐の旅に出る事となった。
その時の仲間。
大聖女――ミュゲ・ジプソフィル。
魔法使い――サンセリテ。
聖騎士――アーサー。
暗黒騎士――アデラーン。
学者――クロエ。
である。
冒険は、以上五名が旧魔王領に侵攻するところから始まる。
普通の人間は、魔王領に入る事は出来ない。なぜかならば、魔王領は高濃度の魔素に汚染されていたからである。
立ち入ったら最後、被爆した後に直ちに魔物化することは間違いない。
よしんば入れたとしても、そこは魔物の巣窟である。
その魑魅魍魎の跋扈する旧魔王領の進行を、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルは広域浄化の力で加能とした。それは、魔王が誕生してから千年間成し遂げられなかった快挙であった。
そして、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが旧魔王領に侵攻して一年、ようやく魔王城に辿り着いた。
それまでは、常に魔物との死闘の連続であった。
そして、決戦。
劇では、苛烈なる戦闘がお芝居で表現された。
血の滲む戦い。
仲間たちが魔王の足止めをし、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルが聖女の力を行使して致命傷を与える。その時に彼女が使用した力は、歴代聖者の中でも大聖女――ミュゲ・ジプソフィルしか使えないものであった。
光の聖剣。
光の投擲聖槍。
これは、光の護身剣の上位に当たる力である。
特に、光の投擲聖槍は遠隔から魔物に対して致命的な攻撃手段であった。
これらの力を駆使し、激闘の末に大聖女――ミュゲ・ジプソフィルはついに魔王を撃ち倒した。
劇中、魔王を撃ち倒した時の観客の拍手喝采は凄まじいものであった。
劇として凄く見応えがあった。
何よりも史実に忠実な劇であった。
大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの幼少期から魔王を討伐するエピソードまで、まるで走馬灯を見ているかのようであった。
ただ、劇としての演出なのか魔王の人物像だけが異なっていた。
劇での魔王は、如何にも悪役に徹していたのである。
勇者一行を待ち受ける魔王と言うように。
ところが、シャルロットの記憶にある魔王ニコラスは、生にしがみつく臆病な老人であった。
そうなのである。
ニコラスは、死を恐れて永遠の命を得る為に賢者の石を生成した。そして、それを取り込み魔王となった。
魔王ニコラスが、最も恐れていた事は死である。
勇者一行が魔王城に侵攻したときも、魔王ニコラスは立ち向かうどころか城の物置きの隅に怯えながら隠れていたのである。
その事実は、魔王討伐に向かった勇者一行にしか知り得ない。
終演後。
皆んなで劇の感想を語り合いながら、劇場を出た。
すでに日も暮れていた。
と。
どうやら外の様子がおかしい。
周りの声を聞く限り、怪我人が出たらしい。
祭りには、喧嘩等は良くある事である。
しかし、ただならぬ雰囲気であった。
シャルロット一行は、人集りに向かう。
どうやら、フルールの町の外から帰ってきた冒険者達の様子を見ているらしい。
冒険者達は、ギルドに続く道を歩いていた。
怪我人は、シャルロットの飲み友達のロシェであった。
気を失っているロシェは、仲間の冒険者の背負われていた。
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