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3話 フルールの町
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フルールの町。
そこは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生まれ故郷であった。
メシャント領内の中にあり、メシャント本邸から馬車で最短でも一日半の所に位置している。
シャルロットとセバスチャンは、途中の町でその都度休憩を挟みながら二日がかりでフルールの町に向かった。
そして、ようやくフルールの町が見えて来た。
しかし、町の様子はシャルロットの知っている前世の記憶とは違った。
シャルロットは、呟く。
「栄えている」
と。
そうなのである。
シャルロットの知っているフルールの町は、田畑しかないようなどこにでもある田舎町であった。
確かに、百五十年ほど前に魔王が倒されてから、活気が出て来たのは覚えているけれども。
それにしても――
首都の様に人が行き交い、建物がそびえ栄えていた。
そうシャルロットが思っていると、それを見かねたセバスチャンはこう言った。
「フルールは、大聖女様が亡くなられてから、大聖女生誕の地として土地開発がされて、栄えたのです」
「へぇ」
そうだったんだ。
と納得。
大聖女効果凄いなぁ、と思うシャルロットだった。
しばらくして、関所についた。
セバスチャンは、関守にメシャント家の紋章を見せた。
そして、シャルロットとセバスチャンは町の中へと進んだ。
ある程度のところまで進んで、シャルロットは馬車を後にした。
「セバスチャン、ここまで送ってくれてありがとう!」
「シャルロット様も御達者で」
セバスチャンは、本当はシャルロットの見送りなんぞしたくはなかったであろう。今まで、娘同然に育てていたのだ。
しかし、セバスチャンはメシャント家の使用人である。
セバスチャンも、メシャント家には逆らえないのである。
その証拠に、来た道を戻るセバスチャンの姿は悲しそうに見えた。
シャルロットも、涙を拭う。
「さあ、いくか!」
シャルロットは、頰を両手で叩き喝を入れる。
まずは、腹ごしらえ。
シャルロットはそう思って町に進む。
大通り。
道沿いに数えきれないほどの屋台が並んでいるのが見えた。
と同時にいい香り。
いい匂いがした。
焼けた肉の匂いである。
匂いのする方へシャルロットは向かう。そこには、串焼き屋の屋台があった。
肉は、鶏であろうか。とても香ばしい匂いであった。
シャルロットは、ヨダレが止まらなかった。
それも、仕方のない事である。シャルロットは一族から爪弾きにされていたとはいえ伯爵令嬢であった。故に、庶民の食べ物と言うのは食べたことがなかった。
また、前世の生涯においても、人生のほとんどを大聖女としての活動に命を費やして来た。
大聖女と言うと、豪華な食事をとっているようなイメージがあるかも知れないが、それは違う。
大聖女の食事は、粗食が主であった。野菜、キノコ、豆類、パン等しか食べることが許されなかった。それも、味付けは少しの塩のみである。
ところが、目の前の串焼きの屋台は、中年の職人が炭火で肉を焼いた上で、何やら香ばしいタレでしっかりと味付けしてくれているのである。
ヨダレが溢れ出ないわけがなかった。
職人は、シャルロットを見るなりこう言った。
「身なりのいいお嬢さんだね。一本どうだい? 小銅銅貨一枚だよ」
「小銅貨? これのことかしら」
シャルロットは、袋から金貨を取り出した。そしてそれを職人に差し出した。
「お、おい嬢ちゃん。そりゃあ、小金貨じゃねえか。こんな人前で出すんじゃねえ。帰ってくれ!」
「す、すみません」
シャルロットは、なんで金貨を人前で出すのが悪いのか分からなかったけれど、とにかく金貨を皮袋にしまった。
屋台を後にしたシャルロットは、とぼとぼと大通りを歩いた。
金貨一枚では、串焼きは買えないのだろうか。それもそのはず、シャルロットは伯爵令嬢故と言うか、ほとんど軟禁に近い形で家に縛られていたから、金銭勘定も知るはずがない。
それは、前世においてでもあった。
そうしてシャルロットは、食べ物を追い求めて町を彷徨い歩くのであった。
そこは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生まれ故郷であった。
メシャント領内の中にあり、メシャント本邸から馬車で最短でも一日半の所に位置している。
シャルロットとセバスチャンは、途中の町でその都度休憩を挟みながら二日がかりでフルールの町に向かった。
そして、ようやくフルールの町が見えて来た。
しかし、町の様子はシャルロットの知っている前世の記憶とは違った。
シャルロットは、呟く。
「栄えている」
と。
そうなのである。
シャルロットの知っているフルールの町は、田畑しかないようなどこにでもある田舎町であった。
確かに、百五十年ほど前に魔王が倒されてから、活気が出て来たのは覚えているけれども。
それにしても――
首都の様に人が行き交い、建物がそびえ栄えていた。
そうシャルロットが思っていると、それを見かねたセバスチャンはこう言った。
「フルールは、大聖女様が亡くなられてから、大聖女生誕の地として土地開発がされて、栄えたのです」
「へぇ」
そうだったんだ。
と納得。
大聖女効果凄いなぁ、と思うシャルロットだった。
しばらくして、関所についた。
セバスチャンは、関守にメシャント家の紋章を見せた。
そして、シャルロットとセバスチャンは町の中へと進んだ。
ある程度のところまで進んで、シャルロットは馬車を後にした。
「セバスチャン、ここまで送ってくれてありがとう!」
「シャルロット様も御達者で」
セバスチャンは、本当はシャルロットの見送りなんぞしたくはなかったであろう。今まで、娘同然に育てていたのだ。
しかし、セバスチャンはメシャント家の使用人である。
セバスチャンも、メシャント家には逆らえないのである。
その証拠に、来た道を戻るセバスチャンの姿は悲しそうに見えた。
シャルロットも、涙を拭う。
「さあ、いくか!」
シャルロットは、頰を両手で叩き喝を入れる。
まずは、腹ごしらえ。
シャルロットはそう思って町に進む。
大通り。
道沿いに数えきれないほどの屋台が並んでいるのが見えた。
と同時にいい香り。
いい匂いがした。
焼けた肉の匂いである。
匂いのする方へシャルロットは向かう。そこには、串焼き屋の屋台があった。
肉は、鶏であろうか。とても香ばしい匂いであった。
シャルロットは、ヨダレが止まらなかった。
それも、仕方のない事である。シャルロットは一族から爪弾きにされていたとはいえ伯爵令嬢であった。故に、庶民の食べ物と言うのは食べたことがなかった。
また、前世の生涯においても、人生のほとんどを大聖女としての活動に命を費やして来た。
大聖女と言うと、豪華な食事をとっているようなイメージがあるかも知れないが、それは違う。
大聖女の食事は、粗食が主であった。野菜、キノコ、豆類、パン等しか食べることが許されなかった。それも、味付けは少しの塩のみである。
ところが、目の前の串焼きの屋台は、中年の職人が炭火で肉を焼いた上で、何やら香ばしいタレでしっかりと味付けしてくれているのである。
ヨダレが溢れ出ないわけがなかった。
職人は、シャルロットを見るなりこう言った。
「身なりのいいお嬢さんだね。一本どうだい? 小銅銅貨一枚だよ」
「小銅貨? これのことかしら」
シャルロットは、袋から金貨を取り出した。そしてそれを職人に差し出した。
「お、おい嬢ちゃん。そりゃあ、小金貨じゃねえか。こんな人前で出すんじゃねえ。帰ってくれ!」
「す、すみません」
シャルロットは、なんで金貨を人前で出すのが悪いのか分からなかったけれど、とにかく金貨を皮袋にしまった。
屋台を後にしたシャルロットは、とぼとぼと大通りを歩いた。
金貨一枚では、串焼きは買えないのだろうか。それもそのはず、シャルロットは伯爵令嬢故と言うか、ほとんど軟禁に近い形で家に縛られていたから、金銭勘定も知るはずがない。
それは、前世においてでもあった。
そうしてシャルロットは、食べ物を追い求めて町を彷徨い歩くのであった。
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