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2話 別れ
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本邸を出ると、シャルロットを乗せる馬車が待っていた。馬車の前に、片眼鏡をかけた初老の男性がいた。
セバスチャン。
シャルロットの唯一持つ事を許された使用人であり、彼女の数少ない心を許せる人物である。
シャルロットが産まれる以前から本邸に使用人として勤めており、産まれてからもシャルロットの世話をして来た。シャルロットが離宮送りになった時に、自ら志願して彼女について行った人物でもある。
故に、シャルロットはセバスチャンには聖女の力があることは打ち明けていた。
「セバス、ただいま!」
「お帰りなさいませ、お嬢様。いかがでしたか?」
「もう、お嬢様って言わなくていいわよ。私、もうここの家の人間じゃなくなったから……」
セバスチャンは、それを聞いて、涙を流した。
「お労しや、シャルロット様。あんまりですな、シャルロット様。あなた様は、思い遣りのある優れた御仁であらせられるのに」
「よして、セバス」
「申し訳ございません。しかし、シャルロット様の本当のお力をご主人様が知れば、もしや……」
「いいのよ、セバス。同じことを弟にも言われたわ」
「ルーク様にも?」
「ええ、でも、もういいの。私、せいせいしてるから」
セバスチャンは、傾げる。
シャルロットは、続ける。
「今まで、私外に出て自由になりたかっから」
と。
そうなのである。
シャルロットは、不自由であった。鳥籠の鳥であった。
なぜかならば、前世は人生を大聖女としての務めを全うして生きて来た。そして今世では、家族に爪弾きにされて離宮に飛ばされた挙句、ほとんど軟禁に近い形であった。
離宮には、自分のものと言えるものはほとんどない。紙と羽ペンくらいのものである。
それでも病まずに耐えられたのは、セバスチャンが話し相手になってくれたおかげ。
愛情たっぷりに育ててくれたおかげである。
幼い時、いつも側にいてくれた。
眠れない夜は、いつもね寝物語を語ってくれた。
だからこそ――
だからこそ、シャルロットは告白する。
「セバス、今まで本当にありがとう。あなたがいてくれたおかげで、幸せだった」
「そんなこと言わないでください、シャルロット様。私も、あなた様にお使い出来たことが幸せでございました」
しばらくシャルロットとセバスチャンは、昔の事を語り合っていた。
楽しかった思い出を。
セバスチャンは、問う。
「これから、どこに行くおつもりですか?」
「フルールの町に行こうと思っている」
「フルールの町ですか? 確か、聖女の町でしたかな? 聖女になられるおつもりですか?」
「まさか。そこでやりたい事があるの。連れて行ってくれる。最後のお願いよ」
「お安いご用でございます」
セバスチャンは、馬車を走らせた。目的地は、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生まれし地、フルール。それはつまり、シャルロットの前世の故郷であった。
セバスチャン。
シャルロットの唯一持つ事を許された使用人であり、彼女の数少ない心を許せる人物である。
シャルロットが産まれる以前から本邸に使用人として勤めており、産まれてからもシャルロットの世話をして来た。シャルロットが離宮送りになった時に、自ら志願して彼女について行った人物でもある。
故に、シャルロットはセバスチャンには聖女の力があることは打ち明けていた。
「セバス、ただいま!」
「お帰りなさいませ、お嬢様。いかがでしたか?」
「もう、お嬢様って言わなくていいわよ。私、もうここの家の人間じゃなくなったから……」
セバスチャンは、それを聞いて、涙を流した。
「お労しや、シャルロット様。あんまりですな、シャルロット様。あなた様は、思い遣りのある優れた御仁であらせられるのに」
「よして、セバス」
「申し訳ございません。しかし、シャルロット様の本当のお力をご主人様が知れば、もしや……」
「いいのよ、セバス。同じことを弟にも言われたわ」
「ルーク様にも?」
「ええ、でも、もういいの。私、せいせいしてるから」
セバスチャンは、傾げる。
シャルロットは、続ける。
「今まで、私外に出て自由になりたかっから」
と。
そうなのである。
シャルロットは、不自由であった。鳥籠の鳥であった。
なぜかならば、前世は人生を大聖女としての務めを全うして生きて来た。そして今世では、家族に爪弾きにされて離宮に飛ばされた挙句、ほとんど軟禁に近い形であった。
離宮には、自分のものと言えるものはほとんどない。紙と羽ペンくらいのものである。
それでも病まずに耐えられたのは、セバスチャンが話し相手になってくれたおかげ。
愛情たっぷりに育ててくれたおかげである。
幼い時、いつも側にいてくれた。
眠れない夜は、いつもね寝物語を語ってくれた。
だからこそ――
だからこそ、シャルロットは告白する。
「セバス、今まで本当にありがとう。あなたがいてくれたおかげで、幸せだった」
「そんなこと言わないでください、シャルロット様。私も、あなた様にお使い出来たことが幸せでございました」
しばらくシャルロットとセバスチャンは、昔の事を語り合っていた。
楽しかった思い出を。
セバスチャンは、問う。
「これから、どこに行くおつもりですか?」
「フルールの町に行こうと思っている」
「フルールの町ですか? 確か、聖女の町でしたかな? 聖女になられるおつもりですか?」
「まさか。そこでやりたい事があるの。連れて行ってくれる。最後のお願いよ」
「お安いご用でございます」
セバスチャンは、馬車を走らせた。目的地は、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生まれし地、フルール。それはつまり、シャルロットの前世の故郷であった。
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