元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです

Atelier Lotus

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11話 酒場

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 フルールの冒険者ギルドに帰還してから、シャルロットとソレイユは、受付カウンターにて薬草を納品した。

 報酬金は、二人分で小銀貨十二枚。なんとか一日の宿代と食費が賄える金額である。

 とは言え、一日中働いたのにこの報酬は安価過ぎると言えるかもしれない。

 しかし、そこは二人のランクが最低の青銅ランクだから仕方がない。

 仕様がない。

 報酬金に文句があるのならば、さっさとランクを上げるしかないのである。

 薬草採集は青銅ランクの仕事では、判別困難な薬草を選別する専門性から、これでも高金額な方なのである。

 しかし、シャルロットはこれだけの報酬で十分なのであった。

 また、ソレイユも屑拾いの仕事と比べると破格であった。

 シャルロットは、報酬金に満足して伸びをした。
 
 とその時、二人のお腹が鳴った。

 今日一日、シャルロットもソレイユもまだ食事をとっていない。フラフラである。

 そこで、ギルドに隣接している酒場が目に入った。

 今まで、緊張やら疲れで何も感じなかったけれど、何やら美味しそうな匂いが漂っている。

 シャルロットとソレイユは、恐る恐る酒場の椅子に腰掛けた。

 メニューが置いてある。

 本日のおすすめ。

 猪肉の腸詰め。

 鹿肉のシチュー。

 走鳥の丸焼き。

 らしい。

 どれもシャルロットにとっては、未知の料理である。

 シャルロットは、給仕を呼んだ。そして猪肉の腸詰めと鹿肉のシチューを二人前づつ注文した。

 しばらくして、注文した料理が提供された。

 出来立てである。

 湯気が立っていた。

 シャルロットは、食前の祈りを捧げる。

 それを見たソレイユは、問う。

「いつも、その祈りやってるのか? この前、串焼き食べた時もやってたな?」

「クセみたいなもんよ。あんたもやってみる?」
 
「真似する」

 食前の祈りを終え、シャルロットとソレイユはフォークを持つ。

 そして、猪肉の腸詰めに齧り付こうとした――その時。

 その時。

 男の怒号。

「ばっかもん! 酒もなしに腸詰めを食うなんて、料理に対する冒涜だ! 料理人対する反逆だ!」

 そして男はこう続けた。

「俺が、腸詰めを食す時のマナーって言うのを教えてやろう」

 と。

 シャルロットとソレイユは、男の方を見た。

 男は、二人を優に上回る体躯をしていた。毛むくじゃら。熊のような男であった。

「その前に、すまねえ。名乗り忘れてたな! 俺の名前はロシェだ! ギルドランクは銀。この酒場が俺の家みたいなもんだ! よろしくな!」

 シャルロットとソレイユは頷き、名乗る。

 ロシェは、語る。

「まず、腸詰めを食う時の作法は、好きな酒を用意しろ。ここに俺の腸詰めとエールがある」

 ロシェは、自分のテーブルから腸詰めの乗った皿とエールを持って来た。

「こうやって食うんだ! まず、好きな酒をかっこんでから……こうやって、腸詰めに喰らい付く!」
 
 ロシェの食事は、野性に溢れていた。喋りながらの食事であるので、終始食べカスが飛び散っている。

 とても綺麗な食事とは言えないものの、言葉に出来ない新鮮さがあった。

 ロシェは、続けてこう言った。

「おい、嬢ちゃん。何か酒を用意しろ! 坊主、坊主はいける口か?」

「俺はパス。昔、市場で盗んだ酒を飲んだことあるけど、最悪な気分だった」

「そうか……じゃあ、嬢ちゃんは?」

 シャルロットは、口をつぐんだ。

 それもそのはず、シャルロットは酒を飲んだことがないのである。それは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルとして生きていた時も――

 聖職者の飲酒は、厳禁だったのである。

 シャルロットは、恐る恐るロシェに言う。

「私、お酒飲んだことはないんですけど、この葡萄酒とか?」

 シャルロットは、葡萄が好物であった。

 ロシェは、大声を上げる。

「そうかそうか! 初めてか! 何にでも初めてはあるよな。おーい! 誰か嬢ちゃんに葡萄酒を持ってきてくれ!」

 しばらくして、給仕が葡萄酒を運んできた。

 シャルロットは、運ばれた葡萄酒に恐る恐る口をつける。

「うげ、酸っぱい」

 葡萄酒は、シャルロットが思い浮かべていた葡萄の甘味はあんまり感じられず、ただただ酸っぱくて不味い飲み物であった。

 ロシェは、それを見かねて言う。

「なるほど、口に合わなかったか。じゃあ、俺が全部飲んでやる!」

 ロシェは、樽ジョッキに入った葡萄酒を一気に飲み干した。

「ああ、うめえ。じゃなくて、嬢ちゃん! だったらエールを試してみろ! おい! エールを持ってこい!」

 ロシェは、いちいち煩かった。

 しばらくして、給仕がエールを運んできた。

 シャルロットは、運ばれたエールに恐る恐る口をつける。

「あ、美味しい!」

 初めて口にしたエールは、シャルロットにとって興味深いものであった。

 しゅわしゅわ、あわあわなエールは、ほのかにフルーツの香りがして楽しい味だった。

 そして、すぐに酩酊感が来た。

 シャルロットは、続けてこう言った。

「なんか、気持ちいい」

 と。

 ロシェは、指摘する。

「それが、酔っ払うってことだ! そして、そのまま腸詰めに齧り付け! そして、またエールを喉に流し込め」

「う、うん!」

 シャルロットは、ロシェの言う通りに試してみた。感動的な味であった。

「すごく美味しい!」

「これが酒場のお作法だ! 分かったな!」

「分かりました!」

 シャルロットは、夢中でエールと料理を食す。
 
 横でソレイユの静止の声があったが、シャルロットの耳には入らなかった。

 翌日、酷い二日酔いに苦しむこととは知らずに。
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