元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです

Atelier Lotus

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17話 襲来

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 付き纏いの正体は、シャルロットの弟であった。

 名をルーク・メシャントと言う。メシャント家の一番の末っ子である。

 そんな彼が、なぜシャルロットとリュンヌを尾行しているかと言うと、ルークはこう語るのであった。

「お父様とお母様の命令で、お姉様を始末しに来ました」

 と。

 なるほど。

 シャルロットは、理解した。

 これは、両親の謀略である。と言うのは、ルークはシャルロット唯一仲の良い兄弟であった。

 両親もそれを知っていた。

 それを知っていたからこそ、今回の襲撃を企てたのだろう。

 両親は、出来損ないのシャルロットとルークの仲が良い事を、快く思っていなかった。

 もしかしたらルークは、シャルロットが追放されてから後に、処遇を両親に相談したのかもしれない。

 それが、両親の逆鱗に触れたのかもしれない。

 これは、あくまでシャルロットの推測である。推測であるのだけれども、この可能性が高い。
 
 なぜかならば、シャルロットの両親はそう言う人間だからである。

 出来損ないのシャルロットは、

 魔法の使えない無能のシャルロットは、

 娘ではない。

 人間ではない。

 両親にとって、シャルロットは家畜以下なのである。

 故に、育ちが悪く商品価値のない家畜は、それ即ち処分すると言う理なのである。

 両親は、魔法至上主義である。

 それ故に、魔に魅せられている。

 魅入られている。

 即ち、そう言う事なのである。

 心のほとんどが、魔に侵されている。

 蝕まれている。

 既に両親の心は、魔物と化しているのである。

 そんな事を思っていると、ルークはこう言った。

「お姉様、ぼうっとしていていいんですか? 僕はあなたを殺すと言っているのですよ」

「殺せるもんから殺してみればいいじゃない? お姉ちゃんに敵うと思ってるの?」

「ははは、魔法の使えないお姉様がなにを仰っているんですか? 寝言は寝ていってください」

「じゃあ、試してみれば?」

「では、お望み通り」 

 ルークは、そう言って杖を構えた。背丈よりも高い大きな杖である。

 シャルロットは、ルークを見た。

 ルークの手は、震えていた。それは姉に対する恐怖ではない。両親の命令とは言え、殺しを躊躇しているのである。

「リュンヌちゃん、手出ししないで」

「わ、分かりました」

 リュンヌは、頷いた。

 シャルロットは、挑発する。

「やるの、やらないの?」

「お姉様、お覚悟を!」

 ルークの杖から光が放たれる。氷の魔法である。

 水の魔力と火の魔力の混成魔法。メシャント家が得意とする魔法の一つである。

凍てつく矢フリーズアロー

 そう言って放たれた氷の矢は、シャルロット目掛けて飛んできた。

 シャルロットは、その矢に向けて手をかざした。

浄化キュア

 すると、シャルロットの目の前で氷の矢は消滅するのであった。

 浄化。

 これは、シャルロットが魔王殺したらしめる聖女の力の一つであった。

 この力の前では、如何なる魔法も消滅する。

 ルークは、何が起こったか状況を把握出来ずに、口をポカンと開けている。

 シャルロットは、その隙を見逃さなかった。

 シャルロットは、ルークに向かって走る。

 ルークは、シャルロットからバックステップで距離を取る。魔法使いは、一般的に接近戦が苦手である。

 ルークは、バックステップを取りながら、再び氷の矢を放った。

 しかしそれは、シャルロットまで届くことはなかった。シャルロットの手前で消滅するのである。

 シャルロットは、ルークの杖を掴んだ。ルークがそれを拒み前に押し返した瞬間、シャルロットは杖を手前に引き寄せ腰を落とした。

 ルークは、そのまま地面に突っ伏した。

 シャルロットは、そのまま即座にルークの関節を取った。ルークは、そのまま動けなくなった。

「お姉様、一体何を」

「秘密。私との格を思い知ったでしょ」

「でも、まさかお姉様が戦えたなんて」

「まあ、少しはね」

 そうなのである。

 シャルロットは、多少の武術の心得があった。

 と言うのは、基本的には聖女はその特性上無防備である。魔法が使えないが故に、戦闘面に関しては役に立たない。

 前衛で守ってくれる従者がいれば良いと言うものの、常にそうとは限らない。

 なので、大聖女――ミュゲ・ジプソフィル時代に、彼女は最低限自衛できる武術を学んでいた。

 とは言え、最低限の組み技と剣技のみにとどまるが――

 ルークは、シャルロットと比べて歳が二つも離れているから、膂力はシャルロットの方がギリギリ優っている。

 もしシャルロットとルークが、同い年であったらまた話は変わるかもしれない。

 ともかく、シャルロットの勝利である。

 シャルロットは、ルークに問う。

「なんか私に言いたいことある?」

「ごめんなさい」

「よろしい」

 シャルロットは、ルークを解放した。

 そもそも、ルークにシャルロットを殺す気なんてなかったのである。その証拠に、ルークの放った氷の矢は、もし当たったとしても致命傷になり得ない威力であった。

 シャルロットは、ルークの頭を撫でた。

「とりあえず、宿で話そっか」

「はい……」

 一行は、広場を後にした。
 

 

 
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