元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです

Atelier Lotus

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16話 女子会

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 シャルロットの夢は、女子会をする事である。
 
 そうなのである。

 そして彼女その夢は、兎人種のリュンヌが仲間になってから叶うこととなる。

 そもそも、シャルロットは同世代の親しい人物は皆無であった。否、大聖女――ミュゲ・ジプソフィル時代にも存在しなかった。

 なぜかならば、大聖女と言う肩書きの前では、皆彼女名前でひれ伏したのである。また、魔王殺しの実績も大きかった。

 つまり彼女は、魔王殺しの大聖女――ミュゲ・ジプソフィルとして、尊敬の対象であると同時に恐れられていたのである。

 しかし、今は違う。

 自由の身である今のシャルロットは、同世代の人と対等に関わり合えるのである。

 そして、リュンヌは絶好の相手であった。

 本日。

 シャルロットとリュンヌは、今月行われる大聖女生誕祭の為の衣装を選びに、市場に繰り出していた。

 ソレイユには、留守番をしてもらった。

 その道中、二人で一緒にお茶して好きなロマンス小説の話をした。

 意外にも、シャルロットとリュンヌは趣味がよく合ったのである。

 思えば、かつてのシャルロットにとってのお茶会は、嫌いな行事の一つであった。

 なぜかならば、大聖女――ミュゲ・ジプソフィル時代のお茶会と言うのは、政治の話とセットだったからである。相手はいつも要人ばかり。楽しいどころか息が詰まる場であった。

 シャルロットの幼少期よお茶会は、主にテーブルマナーの授業であって、これまた楽しい場ではなかった。

 しかし、自由の身となってからは違う。

 シャルロットは、美味しそうにケーキを頬張るリュンヌを見た。

 かわいい、と思った。

 愛おしい、と思った。

 そうなのである。

 リュンヌは、シャルロットと同世代であったが、少し抜けているところがあった。

 テーブルマナーも、お世辞にも良いわけではない。

 むしろ、それが良かった。

 まず、テーブルには大量のケーキ等のお菓子が並べられていた。リュンヌはケーキを口一杯に頬張る。そして、まだ飲み込んでいないのにも関わらず、次のケーキを手に取ろうとするのである。

 当然そんな事をすれば、口元から食べかすが溢れる。また喉を詰まらせる危険もある。

 案の定、喉にケーキを詰まらせたリュンヌは、紅茶を流し込むのであった。

「紅茶一気に飲んだら熱かったのです」

「無理して一気に飲んだら火傷するわよ」

 シャルロットは、リュンヌの垂れ耳を見た。

 その時の機嫌によってぴこぴこ動くうさぎ耳が可愛かった。

 しかもこの耳、普段垂れ耳に関わらず、リュンヌが驚いた時はピンと立つのである。

 シャルロットは、リュンヌのうさぎ耳を触りたいと思った。

 もふもふしたいと思った。

 くんくんしたいと思った。

 そう思う気持ちを堪えて、茶会を終えたシャルロットとリュンヌは、大聖女生誕祭で着る衣装を選びに仕立て屋に向かった。

 大聖女生誕祭。

 それは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生誕を祝う大祭りである。
  
 ミュゲ・ジプソフィルは、かつて魔王を討伐した。

 世界を平和に導いた、救世主である。

 それ以前の世界は、魔王に支配されていた。

 厳密には、魔王が絶えず放出する魔素によって変異した魔物に支配されていた。
 
 そもそも、魔王と雖も元々は人間であった。

 千年ほど昔、ナルシス王国の辺境の他にニコラスと言う貴族がいた。

 ニコラスは、魔法理論の基礎を築き上げたと言われるくらい優秀な大魔法使いであった。

 しかし、老いて死に向かう自分に恐怖を覚えた。

 そこで、不老不死になる為に賢者の石の精製を行ったのである。

 賢者の石。

 又の名を、哲学者の石。

 又の名を、生命の水。

 又の名を、魔素特異点。

 又の名を、魔核融合体。

 又の名を、魔王因子。

 と呼ばれる魔法的遺産である。

 賢者の石は、無限に等しい魔素を精製する。

 賢者の石を体内に取り込んだニコラスは、永遠の命を手にすることになった。

 その代償に、ニコラスの支配していた辺境伯領は、千年も生物が住めない土地になってしまった。現在では、元魔王領と呼ばれる土地である。当然、領民は全員魔物化してアンデッドとなってしまった。

 魔王ニコラスは、賢者の石の影響により無限に等しい魔素を放出する様になった。それは、ナルシス王国の国境を超えて諸外国にまで魔素汚染の影響を及ぼしたのである。

 その千年以上における、魔王ニコラスによる世界の実質的支配から人々を救ったのが、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルである。

 ミュゲ・ジプソフィルは、千年に一人の大聖女であった。ミュゲ・ジプソフィルが産まれる以前にも、大聖女の称号を持つ聖女はいた。しかし、あくまでも名誉的な称号であり、千人の聖女でも彼女の力の足元にも及ばないほど力を有していた。

 唯一、大規模な魔素を浄化出来るミュゲ・ジプソフィルだけが、汚染された魔王領に立ち入り、魔王に立ち向かう事の出来る勇者であった。

 そんな大聖女――ミュゲ・ジプソフィルを、リュンヌはこう語るのであった。

「私、大聖女様を凄く尊敬しているのです! 大聖女様を尊敬しているからこそ、この町に来たのです!」

 と。

 シャルロットは、自分が褒められている気がしてにやにやが止まらなかった。

「いやー、それほどでも」

「? 何がそれほどまでなのですか?」

「いや、聞き間違い。いやー、それほど凄かったんだと言ったのよ」

「あ、そうだったのですね」

 耳が普通の人間より遥かに良いのに、納得してしまうリュンヌであった。

 しかし、リュンヌはこう告げるのであった。

「でも、シャルロットさんってラストネームがジプソフィルで光魔法も使えるじゃないですか?」

「一応、ちょっとだけね、ちょっとだけ」

「でも、大聖女様にはお子様がいなかったそうですから、もしかしたらシャルロットさんは大聖女様の生まれ変わりかもしれませんね」
 
 と。

 野生の勘なのかもしれない。

 案外鋭いリュンヌであった。

 そんなこんなで、大聖女生誕祭の衣装を選んだ二人は、仕立て屋を出た。

 帰路の最中。

 最初に気づいたのはリュンヌであった。

「さっきから付けられてますね」

「そうね」

 さっきから、シャルロットとリュンヌを付き纏って来る者の姿があった。

 シャルロットとリュンヌは、勘付かれない様に付き纏って来るものを人気のない広場へ誘導するのであった。
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