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11.決断
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ブルクハルトは屋敷に戻ると、着替えもせずに辺境伯を探した。執事に書斎にいると言われて出向くと、辺境伯はクリスティーナの父、ドリコリン伯爵と談笑していた。
「いらしてたんですね」
「王都の会議の前にちょっと寄らせて貰ったんだ」
「そうでしたか」
伯爵はそんなふうに言っているが、辺境伯領は王都とは逆方向にあるし辺境伯が呼んだのだろう。竜騎士団の団長はドリコリン伯爵だ。今回の竜騎士選定試験の最高責任者でもある。
「お二人にお話があります。お時間いただいてもよろしいですか?」
「もちろんだよ」
「そこに座りなさい」
「ありがとうございます。実は……」
ブルクハルトがクリスティーナを候補者から外すつもりだと伝えると、すぐに彼女をこの場に呼ぶことになった。二人は詳細を説明しなくても大体の状況を察したようだ。普通なら伯爵と辺境伯だけでクリスティーナに伝えるべきことだが、ブルクハルトの気持ちを汲んで同席を許してくれた。
「失礼します」
しばらくして、呼びに行かせた執事とともにクリスティーナが入室してくる。クリスティーナはブルクハルトを見て驚いたように固まったが、すぐに表情を引き締めてブルクハルトの隣に座った。いつもより距離を開けて座っているが気のせいだろうか。
「お父様もいらしてたんですね。どのような、お話でしょう?」
クリスティーナからは緊張が伝わってくる。辺境伯は、視線をドリコリン伯爵の方に向けているので、団長である伯爵が代表して話すようだ。
「予想がついているだろうから単刀直入に言うよ。ティナ、君の竜騎士への挑戦はここまでだ。青龍はブルクハルトかジュリアンのどちらかを竜騎士に選ぶと言っている」
「そうですか……」
クリスティーナは驚くことなく小さく頷いた。ブルクハルトがそれでも心配で視線を向けていると、顔を上げて大丈夫だと言うように微笑む。その顔が強張っていることに気づいて、ブルクハルトは励ますようにクリスティーナの手に自分の手を重ねた。日常的な行動なのに、クリスティーナは驚いたように肩をビクッと震わせる。
「ティーナ?」
「ティナは頑張ったと思うよ。竜騎士は実力以上に条件が多い。それに合致しなかっただけだから、あまり気にしてはいけないよ」
「はい、ありがとうございます」
ブルクハルトの呟きは伯爵の言葉に掻き消されてしまった。対面に座る伯爵はともかく、隣に座るクリスティーナには聞こえたはずだ。それなのに、彼女はブルクハルトを無視して真っ直ぐと伯爵を見ている。先程からクリスティーナの様子が明らかにおかしい。
「私からは以上だ。今日はゆっくり休みなさい」
「……以上ですか?」
クリスティーナは戸惑ったように言って、伯爵と辺境伯を交互に見た。
「そのつもりだが……何か他にもあったかな?」
伯爵も隣に座る辺境伯も困惑気味だ。クリスティーナは二人から返答がないのを確認するとブルクハルトにも視線を向けてきた。ブルクハルトは意図が掴めず首を傾げるしかない。
「いえ、何もないなら良いのです。私は失礼します」
「お疲れ様」
クリスティーナはブルクハルトの手をさり気なく退けると、騎士らしく礼を取りそのまま部屋を出ていった。伯爵と辺境伯は不思議そうに顔を見合わせている。
「伯爵、父上。私も退席させて頂いてよろしいですか?」
「構わないよ。ティナのことは任せて良いのかな? 何か気にしてるみたいだったから、聞き出してもらえると嬉しい」
「はい、もちろんです」
伯爵は心配そうにクリスティーナの出ていった扉に視線を向ける。辺境伯が頷くのを見て、ブルクハルトは席を立った。
「失礼します」
ブルクハルトはビシリと頭を下げて足早に出口に向かう。急いでクリスティーナを追いかけたほうが良い。なんとなく、そんなふうに感じていた。
「いらしてたんですね」
「王都の会議の前にちょっと寄らせて貰ったんだ」
「そうでしたか」
伯爵はそんなふうに言っているが、辺境伯領は王都とは逆方向にあるし辺境伯が呼んだのだろう。竜騎士団の団長はドリコリン伯爵だ。今回の竜騎士選定試験の最高責任者でもある。
「お二人にお話があります。お時間いただいてもよろしいですか?」
「もちろんだよ」
「そこに座りなさい」
「ありがとうございます。実は……」
ブルクハルトがクリスティーナを候補者から外すつもりだと伝えると、すぐに彼女をこの場に呼ぶことになった。二人は詳細を説明しなくても大体の状況を察したようだ。普通なら伯爵と辺境伯だけでクリスティーナに伝えるべきことだが、ブルクハルトの気持ちを汲んで同席を許してくれた。
「失礼します」
しばらくして、呼びに行かせた執事とともにクリスティーナが入室してくる。クリスティーナはブルクハルトを見て驚いたように固まったが、すぐに表情を引き締めてブルクハルトの隣に座った。いつもより距離を開けて座っているが気のせいだろうか。
「お父様もいらしてたんですね。どのような、お話でしょう?」
クリスティーナからは緊張が伝わってくる。辺境伯は、視線をドリコリン伯爵の方に向けているので、団長である伯爵が代表して話すようだ。
「予想がついているだろうから単刀直入に言うよ。ティナ、君の竜騎士への挑戦はここまでだ。青龍はブルクハルトかジュリアンのどちらかを竜騎士に選ぶと言っている」
「そうですか……」
クリスティーナは驚くことなく小さく頷いた。ブルクハルトがそれでも心配で視線を向けていると、顔を上げて大丈夫だと言うように微笑む。その顔が強張っていることに気づいて、ブルクハルトは励ますようにクリスティーナの手に自分の手を重ねた。日常的な行動なのに、クリスティーナは驚いたように肩をビクッと震わせる。
「ティーナ?」
「ティナは頑張ったと思うよ。竜騎士は実力以上に条件が多い。それに合致しなかっただけだから、あまり気にしてはいけないよ」
「はい、ありがとうございます」
ブルクハルトの呟きは伯爵の言葉に掻き消されてしまった。対面に座る伯爵はともかく、隣に座るクリスティーナには聞こえたはずだ。それなのに、彼女はブルクハルトを無視して真っ直ぐと伯爵を見ている。先程からクリスティーナの様子が明らかにおかしい。
「私からは以上だ。今日はゆっくり休みなさい」
「……以上ですか?」
クリスティーナは戸惑ったように言って、伯爵と辺境伯を交互に見た。
「そのつもりだが……何か他にもあったかな?」
伯爵も隣に座る辺境伯も困惑気味だ。クリスティーナは二人から返答がないのを確認するとブルクハルトにも視線を向けてきた。ブルクハルトは意図が掴めず首を傾げるしかない。
「いえ、何もないなら良いのです。私は失礼します」
「お疲れ様」
クリスティーナはブルクハルトの手をさり気なく退けると、騎士らしく礼を取りそのまま部屋を出ていった。伯爵と辺境伯は不思議そうに顔を見合わせている。
「伯爵、父上。私も退席させて頂いてよろしいですか?」
「構わないよ。ティナのことは任せて良いのかな? 何か気にしてるみたいだったから、聞き出してもらえると嬉しい」
「はい、もちろんです」
伯爵は心配そうにクリスティーナの出ていった扉に視線を向ける。辺境伯が頷くのを見て、ブルクハルトは席を立った。
「失礼します」
ブルクハルトはビシリと頭を下げて足早に出口に向かう。急いでクリスティーナを追いかけたほうが良い。なんとなく、そんなふうに感じていた。
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