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番外編Ⅱ:婚約者が青龍であることを隠してる
15.匂い
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クリスティーナがブルクハルトの寝室をノックすると、侍従が扉を開けてくれる。ブルクハルトはベッドの上でクッションに寄りかかって座っていた。
「ティーナ、ちゃんと休めたか?」
「う、うん」
「休んでないのか?」
侍従には演習場に向かうと伝えていたが、ブルクハルトには伝わっていないらしい。
「それより、何してるの? 寝てなきゃ駄目でしょ」
クリスティーナは話を反らして、ベッド脇に置いてあった椅子に座った。
「俺は平気だ。これ以上寝てられるかよ」
「そうなの?」
クリスティーナが質問すると、ブルクハルトが疑うような視線を向けてくる。
「ティーナ、ちょっと変だぞ。いつもなら怒るところだ。今朝も『それでも横になれ!』みたいに言ってただろう?」
「そうだったかな?」
「ほら、やっぱり変だ」
ブルクハルトはそう言いながら、ゆっくりとした動作で手を伸ばしてくる。動きがぎこちなくて、クリスティーナが慌てて支えようと立ち上がると、おでこに手を当てられた。
「魔力を使っただろう? 空っぽじゃないか。それに……エッカルトと一緒にいたのか?」
ブルクハルトは額に手を当てたまま、クリスティーナの全身を観察するように見回した。なんとなく居心地が悪い。
「何で分かったの?」
「エッカルトの匂いがする。他にも三人……」
「えっ? 臭うの?」
クリスティーナは自分の手をクンクンと嗅ぐが、特に変わった匂いはしない。そういえば、人間に戻ったエッカルトが『ブルクハルトにちゃんと報告してね』と念押しするように言っていた気がする。クリスティーナが言わなくても臭いでバレるからだろうか。
「竜人の魔力の香りは、人間の鼻では分からないよ。とにかく、部屋に戻って休め。何をしていたかは、その後で聞く」
ブルクハルトは顔をしかめながら座り直す。かなり痛みがあるのに無理して手を伸ばしたのだろう。なんだか申し訳ない。
「ごめんね。治癒魔法をかけられたら良かったんだけど……」
「そんなことは気にするな」
クリスティーナの魔力は空っぽで、今朝のようには使えない。クリスティーナが心配で見つめていると、ブルクハルトは出て行けと言うように扉に視線を送った。クリスティーナはその視線を無視して、ストンと椅子に再び座る。
「ハルトのそばにいると安心するの。もう少しだけ、ここにいちゃだめ?」
「ティーナ、その言い方はずるいぞ」
「ずるいって何?」
クリスティーナが懇願するように見つめると、ブルクハルトがため息をつく。クリスティーナは本当の事を言っただけだ。何がずるいのか、さっぱり分からない。
「せめて、横になれ。そんな状態でそばにいられたら、心配になるだろう」
「う、うん」
クリスティーナは言われるがままに、ブルクハルトのベッドの端にスルリと潜りこむ。ブルクハルトの匂いに包まれると、安心して眠くなってくる。
「ちょっと、待て! ベッドに入って来るなよ。そこにソファがあるだろう」
「はるとがよこになれっていった」
ブルクハルトの言った通りにしたのに怒ることはないと思う。クリスティーナはそう言いたかったが眠くて面倒だ。
「ティーナ、寝るな。ガスパールさんに殺される」
「おにいさまはそんなことしないわ」
「はぁー。ガスパールさんにバレたら、ティーナも一緒に説明しろよ」
「うん……いつでもいっしょよ」
ブルクハルトはクリスティーナの髪を撫でてくれている。今朝より右手が自由に動くようになったのだろう。いつでもクリスティーナを守ってくれる大きな手が温かくて心地よい。
「もう良いよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
クリスティーナはブルクハルトの声に促されるように瞳を閉じた。
「ティーナ、ちゃんと休めたか?」
「う、うん」
「休んでないのか?」
侍従には演習場に向かうと伝えていたが、ブルクハルトには伝わっていないらしい。
「それより、何してるの? 寝てなきゃ駄目でしょ」
クリスティーナは話を反らして、ベッド脇に置いてあった椅子に座った。
「俺は平気だ。これ以上寝てられるかよ」
「そうなの?」
クリスティーナが質問すると、ブルクハルトが疑うような視線を向けてくる。
「ティーナ、ちょっと変だぞ。いつもなら怒るところだ。今朝も『それでも横になれ!』みたいに言ってただろう?」
「そうだったかな?」
「ほら、やっぱり変だ」
ブルクハルトはそう言いながら、ゆっくりとした動作で手を伸ばしてくる。動きがぎこちなくて、クリスティーナが慌てて支えようと立ち上がると、おでこに手を当てられた。
「魔力を使っただろう? 空っぽじゃないか。それに……エッカルトと一緒にいたのか?」
ブルクハルトは額に手を当てたまま、クリスティーナの全身を観察するように見回した。なんとなく居心地が悪い。
「何で分かったの?」
「エッカルトの匂いがする。他にも三人……」
「えっ? 臭うの?」
クリスティーナは自分の手をクンクンと嗅ぐが、特に変わった匂いはしない。そういえば、人間に戻ったエッカルトが『ブルクハルトにちゃんと報告してね』と念押しするように言っていた気がする。クリスティーナが言わなくても臭いでバレるからだろうか。
「竜人の魔力の香りは、人間の鼻では分からないよ。とにかく、部屋に戻って休め。何をしていたかは、その後で聞く」
ブルクハルトは顔をしかめながら座り直す。かなり痛みがあるのに無理して手を伸ばしたのだろう。なんだか申し訳ない。
「ごめんね。治癒魔法をかけられたら良かったんだけど……」
「そんなことは気にするな」
クリスティーナの魔力は空っぽで、今朝のようには使えない。クリスティーナが心配で見つめていると、ブルクハルトは出て行けと言うように扉に視線を送った。クリスティーナはその視線を無視して、ストンと椅子に再び座る。
「ハルトのそばにいると安心するの。もう少しだけ、ここにいちゃだめ?」
「ティーナ、その言い方はずるいぞ」
「ずるいって何?」
クリスティーナが懇願するように見つめると、ブルクハルトがため息をつく。クリスティーナは本当の事を言っただけだ。何がずるいのか、さっぱり分からない。
「せめて、横になれ。そんな状態でそばにいられたら、心配になるだろう」
「う、うん」
クリスティーナは言われるがままに、ブルクハルトのベッドの端にスルリと潜りこむ。ブルクハルトの匂いに包まれると、安心して眠くなってくる。
「ちょっと、待て! ベッドに入って来るなよ。そこにソファがあるだろう」
「はるとがよこになれっていった」
ブルクハルトの言った通りにしたのに怒ることはないと思う。クリスティーナはそう言いたかったが眠くて面倒だ。
「ティーナ、寝るな。ガスパールさんに殺される」
「おにいさまはそんなことしないわ」
「はぁー。ガスパールさんにバレたら、ティーナも一緒に説明しろよ」
「うん……いつでもいっしょよ」
ブルクハルトはクリスティーナの髪を撫でてくれている。今朝より右手が自由に動くようになったのだろう。いつでもクリスティーナを守ってくれる大きな手が温かくて心地よい。
「もう良いよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
クリスティーナはブルクハルトの声に促されるように瞳を閉じた。
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