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番外編Ⅱ:婚約者が青龍であることを隠してる
17.番
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翌日、クリスティーナは演習場でパトリックに指定された二名の治療を行った。そのうちの一人は昨日の三名より症状が重い。
クリスティーナの推測だが、番の女性の体力や気力で治療の順番を決めている気がする。明日に回された二名はいずれも付き添いの女性がクリスティーナの親世代で、どっしりと構えている印象だ。
クリスティーナは昨日より魔力を残して二人の治療を終えた。まだ余裕があるので三人目の治療に入ろうとしたが、その竜人の番女性に止められる。
「ブル坊っちゃんも寝込んでいるんでしょ? そんなときに番のあなたが無理しては駄目よ。坊っちゃんまで悪化したら大変でしょ?」
「は、はい」
女性は自分が風邪を引いたら、竜人である夫の方が心配して熱を出すとカラカラ笑いながら教えてくれた。怪我でぐったりしている翠龍が気まずそうにクリスティーナから視線をそらす。
「ほら、パトリックさんが戻って来るまで、座ってゆっくりしてなさい」
「すみません」
「こっちとしては、治療の目処が経っただけでありがたいことなんだよ。気にしないで良いわ」
クリスティーナは女性に連れられて休憩室に入る。龍たちが視界に入らないように配慮して誘導してくれたのだろう。クリスティーナは、翠龍についているという女性を見送って、ソファに座った。
トントントン
「はい、開いています」
静かなノックの音がして、すぐに小柄で可愛らしい女性が入ってきた。昨日とは印象が違うので気づくのが遅れたが、エッカルトの番であるアデリーナだ。
クリスティーナが立ち上がろうとするのを制して、ハーブティーを淹れてくれる。
「昨日はありがとうございました。どうしてもお礼が言いたくて、休憩中にお邪魔してすみません」
「エッカルトさんは大丈夫ですか?」
「はい。今朝は寝てるのに飽きたと愚痴を言っていました」
「ハルトと一緒だわ」
クリスティーナはアデリーナと顔を見合わせてクスリと笑う。アデリーナの表情は昨日と違い明るい。エッカルトはもう大丈夫そうだ。
「良かったら飲んでください。貴族のお姫様にお出しするようなものではないのですが、私のお気に入りなんです」
「ありがとうございます。いただきます」
きれいな赤い色のハーブティーはエッカルトの赤龍を思い出す。
「美味しい」
飲んでみると甘酸っぱくて身体にも良さそうだ。
「お口に合って良かったです」
アデリーナはそう言ってふんわりと笑う。
「きれいな赤ですよね。初めて飲みました……青いハーブティーも探せばあるのかしら?」
クリスティーナが呟くように言うと、アデリーナは頬を桃色に染める。やはり、エッカルトの色を意識しているのだろう。
アデリーナは辺境伯領にあるハーブティーに詳しいお店を教えてくれた。街が落ち着いたら行ってみようと思う。
その後も二人でハーブティーを飲みながら、他愛のない話をした。久しぶりのお喋りは楽しい。
「あの……ティナさん」
話が一段落すると、アデリーナがモジモジしながらクリスティーナの名前を呼んだ。そんなアデリーナを見ていると、勝手ながらエッカルトは心配だろうなと思ってしまう。竜人が過保護なのはブルクハルトを見てよく知っている。がさつなクリスティーナ相手でもそうなのだから、番がアデリーナなら尚更だろう。
「何かお困りですか? 私で良ければ聞きますよ」
「ありがとうございます。あの……私に治癒魔法を教えてほしいんです。治癒魔法習得は簡単なことではないと分かっています。それでも、何もしないままではいられなくて……」
アデリーナは王都に近い街の出身で、結婚して移り住んでからも、辺境伯領にここまでの危険があるとは思っていなかったようだ。エッカルトはアデリーナが取り乱してしまった事で、実家に帰ってしまうのではないかとひどく心配している。治癒魔法に挑戦することで、辺境の地で生きていく覚悟を見せて安心させたいらしい。
「良いですよ」
クリスティーナがすぐに了承すると、アデリーナは嬉しそうに微笑んだ。ブルクハルトの弱った姿を思い出せば、アデリーナの気持ちは痛いほど分かる。
「でも、お忙しいですよね?」
「今の状況が落ち着いてからなら問題ないです。代わりにというのはおかしいですが、私にも竜人の番の心得などを教えて頂けると嬉しいです。ハルトが竜人だと教えられたのはつい先日で、何も分からないんです」
「はい! もちろんです。他の竜人の番の皆さんにも紹介します」
「ありがとうございます。嬉しいです」
クリスティーナがお礼を言うと、アデリーナは頬を染めて笑う。その日は、治癒魔法の適正について軽く話をしてアデリーナと別れた。
クリスティーナの推測だが、番の女性の体力や気力で治療の順番を決めている気がする。明日に回された二名はいずれも付き添いの女性がクリスティーナの親世代で、どっしりと構えている印象だ。
クリスティーナは昨日より魔力を残して二人の治療を終えた。まだ余裕があるので三人目の治療に入ろうとしたが、その竜人の番女性に止められる。
「ブル坊っちゃんも寝込んでいるんでしょ? そんなときに番のあなたが無理しては駄目よ。坊っちゃんまで悪化したら大変でしょ?」
「は、はい」
女性は自分が風邪を引いたら、竜人である夫の方が心配して熱を出すとカラカラ笑いながら教えてくれた。怪我でぐったりしている翠龍が気まずそうにクリスティーナから視線をそらす。
「ほら、パトリックさんが戻って来るまで、座ってゆっくりしてなさい」
「すみません」
「こっちとしては、治療の目処が経っただけでありがたいことなんだよ。気にしないで良いわ」
クリスティーナは女性に連れられて休憩室に入る。龍たちが視界に入らないように配慮して誘導してくれたのだろう。クリスティーナは、翠龍についているという女性を見送って、ソファに座った。
トントントン
「はい、開いています」
静かなノックの音がして、すぐに小柄で可愛らしい女性が入ってきた。昨日とは印象が違うので気づくのが遅れたが、エッカルトの番であるアデリーナだ。
クリスティーナが立ち上がろうとするのを制して、ハーブティーを淹れてくれる。
「昨日はありがとうございました。どうしてもお礼が言いたくて、休憩中にお邪魔してすみません」
「エッカルトさんは大丈夫ですか?」
「はい。今朝は寝てるのに飽きたと愚痴を言っていました」
「ハルトと一緒だわ」
クリスティーナはアデリーナと顔を見合わせてクスリと笑う。アデリーナの表情は昨日と違い明るい。エッカルトはもう大丈夫そうだ。
「良かったら飲んでください。貴族のお姫様にお出しするようなものではないのですが、私のお気に入りなんです」
「ありがとうございます。いただきます」
きれいな赤い色のハーブティーはエッカルトの赤龍を思い出す。
「美味しい」
飲んでみると甘酸っぱくて身体にも良さそうだ。
「お口に合って良かったです」
アデリーナはそう言ってふんわりと笑う。
「きれいな赤ですよね。初めて飲みました……青いハーブティーも探せばあるのかしら?」
クリスティーナが呟くように言うと、アデリーナは頬を桃色に染める。やはり、エッカルトの色を意識しているのだろう。
アデリーナは辺境伯領にあるハーブティーに詳しいお店を教えてくれた。街が落ち着いたら行ってみようと思う。
その後も二人でハーブティーを飲みながら、他愛のない話をした。久しぶりのお喋りは楽しい。
「あの……ティナさん」
話が一段落すると、アデリーナがモジモジしながらクリスティーナの名前を呼んだ。そんなアデリーナを見ていると、勝手ながらエッカルトは心配だろうなと思ってしまう。竜人が過保護なのはブルクハルトを見てよく知っている。がさつなクリスティーナ相手でもそうなのだから、番がアデリーナなら尚更だろう。
「何かお困りですか? 私で良ければ聞きますよ」
「ありがとうございます。あの……私に治癒魔法を教えてほしいんです。治癒魔法習得は簡単なことではないと分かっています。それでも、何もしないままではいられなくて……」
アデリーナは王都に近い街の出身で、結婚して移り住んでからも、辺境伯領にここまでの危険があるとは思っていなかったようだ。エッカルトはアデリーナが取り乱してしまった事で、実家に帰ってしまうのではないかとひどく心配している。治癒魔法に挑戦することで、辺境の地で生きていく覚悟を見せて安心させたいらしい。
「良いですよ」
クリスティーナがすぐに了承すると、アデリーナは嬉しそうに微笑んだ。ブルクハルトの弱った姿を思い出せば、アデリーナの気持ちは痛いほど分かる。
「でも、お忙しいですよね?」
「今の状況が落ち着いてからなら問題ないです。代わりにというのはおかしいですが、私にも竜人の番の心得などを教えて頂けると嬉しいです。ハルトが竜人だと教えられたのはつい先日で、何も分からないんです」
「はい! もちろんです。他の竜人の番の皆さんにも紹介します」
「ありがとうございます。嬉しいです」
クリスティーナがお礼を言うと、アデリーナは頬を染めて笑う。その日は、治癒魔法の適正について軽く話をしてアデリーナと別れた。
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