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三章 犯人を追って【オーギュスト】
第5話 朝
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オーギュストがベッドを抜け出すと、隣でスヤスヤと眠っていたミシュリーヌが身じろぎする。ぼんやりと見つめてくる瞳はまだ眠そうだ。
「おはよう。ごめん、起こしてしまったな」
「オーギュスト様……おはようございます。もう起きる時間ですか?」
「ミシュリーヌはまだ眠っていて良いよ」
オーギュストはミシュリーヌの髪を撫でながら、彼女の中に後悔がないか探る。ミシュリーヌは、そんなオーギュストに一目で幸せだと分かる笑顔を返してきた。こちらまで幸せな気持ちになって、不安は跡形もなく消えさる。
「今日もミシュリーヌは可愛いな。仕事に行きたくなくなる」
「お休みにはできないのですか?」
ミシュリーヌの予想外の言葉に、髪を撫でる手が止まる。ミシュリーヌは恥ずかしそうに頬を染めていた。
仕事なんて今日くらい……休めない立場なんて捨ててしまいたい。
「今日から新人魔導師の面接が始まるんだ。突発的なことがなければ、早く帰って来れると思うよ」
オーギュストは良識的な大人のふりをして伝えた。一緒にいられないことをミシュリーヌが寂しく思っている。それだけで十分だ。
「面接ですか?」
「研修期間が終わった後に毎年行っているんだ」
ミシュリーヌに『異世界召喚』の裏側について教えると、目を丸くして聞いていた。新人魔導師に同情していたが、今年の試験は怪我をする危険がなかったので優しい方だ。もちろん、そんな物騒なことはミシュリーヌには伝えない。
「お帰りをお待ちしておりますわ」
「ああ。ミシュリーヌはのんびり過ごすと良いよ」
「ありがとうございます。行ってらっしゃいませ」
オーギュストはミシュリーヌの笑顔に見送られて部屋を出た。今日はいつもより仕事が捗りそうだ。
……
オーギュストは午前の面接を終えて団長室に戻る。先程まで面接を受けていたのは、『異世界召喚』の真実にたどり着けなかった者たちだ。
本当の事を知った新人たちの表情は一様に暗かったが、熱心に質問して来る者も多かったので、これから変わっていってくれることだろう。
コツン コツン
団長室の窓が鳴って、オーギュストは振り返る。公爵領に送った伝書鳩が戻ってきたようだ。足についているのは緊急性のない白。オーギュストはゆっくりと立ち上がり窓を開いた。
【聖女と名乗る女を発見 追跡中 彼女は聖女にあらず 援護不要】
ミシュリーヌが魔力切れを起こすきっかけとなったのは、他の『聖女』が浄化薬を配っていたせいだった。数日前に届いたマリエルからの第一報では、街と街との間を移動しているときに、それらしい一行とすれ違った事を思い出したと書かれていた。
オーギュストからの返事には、他の班に任せて休息を取れと書いたのだが、すでに動き出した後だったのだろう。
今回の第二報では、『聖女にあるず』と書かれている。
神官が名声を欲して聖女と名乗っているのか?
公爵領の異変と関連する組織的な行動の一つなのか?
現段階ではいろいろな可能性が考えられるので、今後の報告を待つしかない。
「ただいま、戻りました」
オーギュストが伝書鳩を労っていると、使いに出していたジョエルが戻ってくる。ジョエルには引き続きヴァネッサと名乗る女について担当してもらっている。
これまでに聞いた報告で、ミシュリーヌがヴァネッサに渡されたメモの屋敷は北町に実在していたと聞いている。魔導師団員が監視を続けているが、立派な屋敷に似合わぬ成らず者が出入りしているようだ。近所の者たちの話では、ずっと空き家だったところに半年ほど前から住み着いたらしい。怖いので騎士団に訴えたが、対応はしてもらえなかったようだ。
「屋敷の書類上の所有者が分かりましたよ。この後、副団長が向かって下さるそうです」
「貴族か」
ジョエルは頷く。屋敷が王家所有だったことはなく、名義は一年ほど前に亡くなった子爵になっていたらしい。
「魔獣草の倉庫の件とよく似ているな」
「はい。お察しの通りかと思います。そういう事情もあって、この件は第一部隊が引き受けて下さることになりました。よろしいですか?」
「それが妥当だろうな」
忙しく働いている第一部隊には悪いが、公爵領の件を把握している者が当たるほうが無駄がない。オーギュストにできるのは報奨の手配をすることくらいだ。オーギュストは引き出しから書類を取り出し、予算を捻り出す算段をはじめた。
「おはよう。ごめん、起こしてしまったな」
「オーギュスト様……おはようございます。もう起きる時間ですか?」
「ミシュリーヌはまだ眠っていて良いよ」
オーギュストはミシュリーヌの髪を撫でながら、彼女の中に後悔がないか探る。ミシュリーヌは、そんなオーギュストに一目で幸せだと分かる笑顔を返してきた。こちらまで幸せな気持ちになって、不安は跡形もなく消えさる。
「今日もミシュリーヌは可愛いな。仕事に行きたくなくなる」
「お休みにはできないのですか?」
ミシュリーヌの予想外の言葉に、髪を撫でる手が止まる。ミシュリーヌは恥ずかしそうに頬を染めていた。
仕事なんて今日くらい……休めない立場なんて捨ててしまいたい。
「今日から新人魔導師の面接が始まるんだ。突発的なことがなければ、早く帰って来れると思うよ」
オーギュストは良識的な大人のふりをして伝えた。一緒にいられないことをミシュリーヌが寂しく思っている。それだけで十分だ。
「面接ですか?」
「研修期間が終わった後に毎年行っているんだ」
ミシュリーヌに『異世界召喚』の裏側について教えると、目を丸くして聞いていた。新人魔導師に同情していたが、今年の試験は怪我をする危険がなかったので優しい方だ。もちろん、そんな物騒なことはミシュリーヌには伝えない。
「お帰りをお待ちしておりますわ」
「ああ。ミシュリーヌはのんびり過ごすと良いよ」
「ありがとうございます。行ってらっしゃいませ」
オーギュストはミシュリーヌの笑顔に見送られて部屋を出た。今日はいつもより仕事が捗りそうだ。
……
オーギュストは午前の面接を終えて団長室に戻る。先程まで面接を受けていたのは、『異世界召喚』の真実にたどり着けなかった者たちだ。
本当の事を知った新人たちの表情は一様に暗かったが、熱心に質問して来る者も多かったので、これから変わっていってくれることだろう。
コツン コツン
団長室の窓が鳴って、オーギュストは振り返る。公爵領に送った伝書鳩が戻ってきたようだ。足についているのは緊急性のない白。オーギュストはゆっくりと立ち上がり窓を開いた。
【聖女と名乗る女を発見 追跡中 彼女は聖女にあらず 援護不要】
ミシュリーヌが魔力切れを起こすきっかけとなったのは、他の『聖女』が浄化薬を配っていたせいだった。数日前に届いたマリエルからの第一報では、街と街との間を移動しているときに、それらしい一行とすれ違った事を思い出したと書かれていた。
オーギュストからの返事には、他の班に任せて休息を取れと書いたのだが、すでに動き出した後だったのだろう。
今回の第二報では、『聖女にあるず』と書かれている。
神官が名声を欲して聖女と名乗っているのか?
公爵領の異変と関連する組織的な行動の一つなのか?
現段階ではいろいろな可能性が考えられるので、今後の報告を待つしかない。
「ただいま、戻りました」
オーギュストが伝書鳩を労っていると、使いに出していたジョエルが戻ってくる。ジョエルには引き続きヴァネッサと名乗る女について担当してもらっている。
これまでに聞いた報告で、ミシュリーヌがヴァネッサに渡されたメモの屋敷は北町に実在していたと聞いている。魔導師団員が監視を続けているが、立派な屋敷に似合わぬ成らず者が出入りしているようだ。近所の者たちの話では、ずっと空き家だったところに半年ほど前から住み着いたらしい。怖いので騎士団に訴えたが、対応はしてもらえなかったようだ。
「屋敷の書類上の所有者が分かりましたよ。この後、副団長が向かって下さるそうです」
「貴族か」
ジョエルは頷く。屋敷が王家所有だったことはなく、名義は一年ほど前に亡くなった子爵になっていたらしい。
「魔獣草の倉庫の件とよく似ているな」
「はい。お察しの通りかと思います。そういう事情もあって、この件は第一部隊が引き受けて下さることになりました。よろしいですか?」
「それが妥当だろうな」
忙しく働いている第一部隊には悪いが、公爵領の件を把握している者が当たるほうが無駄がない。オーギュストにできるのは報奨の手配をすることくらいだ。オーギュストは引き出しから書類を取り出し、予算を捻り出す算段をはじめた。
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