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三章 犯人を追って【オーギュスト】
第18話 説得【ミシュリーヌ】
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― 数分前 ―
ミシュリーヌはオーギュストの後ろでアダンに語りかけるヘクターの声を聞いていた。ヘクターはミシュリーヌ個人を見ていると言う割に、アダンの変装には気づかない。
人の弱い部分を突くのはうまいのに心に響かないのは、いちばん大切なミシュリーヌを欲する理由に嘘があるからだろう。
それでも、オーギュストと心を通わせる前なら、ミシュリーヌは揺れていたかもしれない。オーギュストが何度もこちらを気にしているのも、それが分かるからだろう。今は心配してくれる気持ちがただただ嬉しい。
チッ……
ヘクターが結界を壊そうと魔法陣を作り始めた。
ミシュリーヌの周囲にオーギュストの結界が張られると、あっという間にヘクターが拘束される。アダンは悲鳴を上げていたので、瞬きの間に終わった感覚のミシュリーヌとは違い、何が起きたのかしっかり見えていたのだろう。
魔導師団員が建物の中に入ってくると、オーギュストはヘクターを連れて出ていく。魔導師団員もほとんどの者がそれに続いた。
建物の中には、アダンとミシュリーヌの他に魔導師団員二人が残っている。
「怖かった……」
アダンは泣きそうな顔をしながら変装を解く。
「出入りできないタイプの結界だな。この結界は団長か?」
「結界?」
アダンが戸惑いながら手をのばす。外からその様子を見ていると、アダンが透明な何かに包まれていると分かった。
「なんだ。もう一枚張って下さっていたのか」
アダンが気の抜けた声で言って、結界の壁に寄りかかる。外側にいる団員は触れられないのか遠巻きにしていた。
「休ませてやりたいが、団長の手が空くまで待つしかないな」
「そんな~」
結界は団員たちには壊せないらしい。アダンは疲れた顔をしているので、ミシュリーヌが何とかしてあげることにした。まずは自分にかけられた隠蔽魔法と結界を打ち砕く。
「ギャーー!!」
ミシュリーヌが姿を表すと、目があったアダンが化け物を見たような顔で叫んだ。驚いて窓ガラスに近づき自分の顔を見てみるが、特におかしなところはない……と思う。
「妃殿下、アダンは結界を解いたことに驚いただけかと思います。お騒がせして申し訳ありません」
「まぁ、ごめんなさい。わたくしの魔法ではないから、合図も送れなかったのよ」
ミシュリーヌは言いながら、アダンの結界のために再び魔法陣を作り出す。オーギュストの魔法は強力で、外側から壊すのは難しい。
それでも、ジワジワと結界を侵食し、やがてパリンと音をたてて結界が消え去った。聖魔法に攻撃力は皆無だが、誰かを守るために使う魔法なら一番強い。
「聖女様……」
アダンに拝まれて、ミシュリーヌは頬を引き攣らせる。アダンの演じるミシュリーヌは可愛くて繊細で、本人からすると違和感だらけだった。その理由の一端をみた気がする。
「わたくしはオーギュスト様のところに行きますね」
「護衛させていただきます」
魔導師団員の一人がミシュリーヌの後に続いて建物を出てくる。断っても困らせるだけなので、そのままお願いすることにした。
周囲を見渡すと、頑丈そうな馬車の前でオーギュストが佇んでいる。その近くに魔導師団員が二名、所在なさげに立っていた。オーギュストに声をかけられずにいるようだ。
「オーギュスト様?」
「ああ。ミシュリーヌか……ミシュリーヌ!?」
オーギュストが一拍おいて、大きな声を上げる。結界を壊してはいけなかっただろうか。
「ごめんなさい。もう安全だと思ったの。わたくしは一人しかおりませんので、安心して下さいませ」
後半はオーギュストの耳元で言う。オーギュストは意図に気づいて、しゃがんで聞いてくれていた。
「攻撃的な結界だったんだよ。怪我はない?」
「ええ、問題ありませんわ。それより、部下の方から話があるようですよ」
ミシュリーヌからみると、オーギュストは落ち込んでいるようにみえる。本当は何があったのか聞き出したかった。でも、団員が待っているので仕方ない。
それに、きっと兄弟のことだ。ミシュリーヌが聞いて良いものか悩む。
ミシュリーヌはオーギュストの隣に移動して、大きな手を握った。ミシュリーヌが落ち込んだときには、オーギュストの手がいつもすくい上げてくれる。
「待たせたみたいだな。報告を受けよう」
オーギュストは護送車の見張りを団員二名に任せて、ミシュリーヌと手を繋いだまま移動する。護衛してくれた団員も残るようなので、ミシュリーヌはお礼を言って別れた。
ミシュリーヌはオーギュストの後ろでアダンに語りかけるヘクターの声を聞いていた。ヘクターはミシュリーヌ個人を見ていると言う割に、アダンの変装には気づかない。
人の弱い部分を突くのはうまいのに心に響かないのは、いちばん大切なミシュリーヌを欲する理由に嘘があるからだろう。
それでも、オーギュストと心を通わせる前なら、ミシュリーヌは揺れていたかもしれない。オーギュストが何度もこちらを気にしているのも、それが分かるからだろう。今は心配してくれる気持ちがただただ嬉しい。
チッ……
ヘクターが結界を壊そうと魔法陣を作り始めた。
ミシュリーヌの周囲にオーギュストの結界が張られると、あっという間にヘクターが拘束される。アダンは悲鳴を上げていたので、瞬きの間に終わった感覚のミシュリーヌとは違い、何が起きたのかしっかり見えていたのだろう。
魔導師団員が建物の中に入ってくると、オーギュストはヘクターを連れて出ていく。魔導師団員もほとんどの者がそれに続いた。
建物の中には、アダンとミシュリーヌの他に魔導師団員二人が残っている。
「怖かった……」
アダンは泣きそうな顔をしながら変装を解く。
「出入りできないタイプの結界だな。この結界は団長か?」
「結界?」
アダンが戸惑いながら手をのばす。外からその様子を見ていると、アダンが透明な何かに包まれていると分かった。
「なんだ。もう一枚張って下さっていたのか」
アダンが気の抜けた声で言って、結界の壁に寄りかかる。外側にいる団員は触れられないのか遠巻きにしていた。
「休ませてやりたいが、団長の手が空くまで待つしかないな」
「そんな~」
結界は団員たちには壊せないらしい。アダンは疲れた顔をしているので、ミシュリーヌが何とかしてあげることにした。まずは自分にかけられた隠蔽魔法と結界を打ち砕く。
「ギャーー!!」
ミシュリーヌが姿を表すと、目があったアダンが化け物を見たような顔で叫んだ。驚いて窓ガラスに近づき自分の顔を見てみるが、特におかしなところはない……と思う。
「妃殿下、アダンは結界を解いたことに驚いただけかと思います。お騒がせして申し訳ありません」
「まぁ、ごめんなさい。わたくしの魔法ではないから、合図も送れなかったのよ」
ミシュリーヌは言いながら、アダンの結界のために再び魔法陣を作り出す。オーギュストの魔法は強力で、外側から壊すのは難しい。
それでも、ジワジワと結界を侵食し、やがてパリンと音をたてて結界が消え去った。聖魔法に攻撃力は皆無だが、誰かを守るために使う魔法なら一番強い。
「聖女様……」
アダンに拝まれて、ミシュリーヌは頬を引き攣らせる。アダンの演じるミシュリーヌは可愛くて繊細で、本人からすると違和感だらけだった。その理由の一端をみた気がする。
「わたくしはオーギュスト様のところに行きますね」
「護衛させていただきます」
魔導師団員の一人がミシュリーヌの後に続いて建物を出てくる。断っても困らせるだけなので、そのままお願いすることにした。
周囲を見渡すと、頑丈そうな馬車の前でオーギュストが佇んでいる。その近くに魔導師団員が二名、所在なさげに立っていた。オーギュストに声をかけられずにいるようだ。
「オーギュスト様?」
「ああ。ミシュリーヌか……ミシュリーヌ!?」
オーギュストが一拍おいて、大きな声を上げる。結界を壊してはいけなかっただろうか。
「ごめんなさい。もう安全だと思ったの。わたくしは一人しかおりませんので、安心して下さいませ」
後半はオーギュストの耳元で言う。オーギュストは意図に気づいて、しゃがんで聞いてくれていた。
「攻撃的な結界だったんだよ。怪我はない?」
「ええ、問題ありませんわ。それより、部下の方から話があるようですよ」
ミシュリーヌからみると、オーギュストは落ち込んでいるようにみえる。本当は何があったのか聞き出したかった。でも、団員が待っているので仕方ない。
それに、きっと兄弟のことだ。ミシュリーヌが聞いて良いものか悩む。
ミシュリーヌはオーギュストの隣に移動して、大きな手を握った。ミシュリーヌが落ち込んだときには、オーギュストの手がいつもすくい上げてくれる。
「待たせたみたいだな。報告を受けよう」
オーギュストは護送車の見張りを団員二名に任せて、ミシュリーヌと手を繋いだまま移動する。護衛してくれた団員も残るようなので、ミシュリーヌはお礼を言って別れた。
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