気がついたら兄達の友人の罠に捕まってました。

周りは甘い雰囲気です。

先週末から我が家の様子がおかしい。

普段から兄達夫妻は仲が良いが、それに増して甘さがプラスされ居た堪れない。

唯一の独身仲間の真兄もだ。
何だかニヤニヤして怖い。

家の中に♡マークが飛び散りわたしの頭にも突き刺さる(痛い)



「おはようマユ」

「おっおはよ」

あれ？マユの様子もおかしい。

「何かあった？」

「いっや何も」

怪しいでもなー。
人が隠しているのを無理に穿り出すのは好きじゃないし…私もマユに隠している事があるからお互い様か。

「何もないなら良いよ」

わたしはいつもと変わらず業務にあたる。

何だかんだと過ごしたら。あっと言う間に週末になった。

「マユ今日、空いてる？」

「ごめん今日も予定が…」

マユも最近、付き合いが悪い。
とうとう彼氏が出来たか？
そんな事を考えていたら上司に呼ばれる。

「斎川さん、étangエトンの池永社長から連絡があってーーー。」

…つまり来いと…
あれから、ずーっと避けてる。
なるべく顔を合わせないよに仕事もしているが限界ネタが尽きた。

「ハァ。逃げても仕方ないか」

直帰でいいとの事で、アポイントを取りキリのいいところで仕事を終え向かう。　

「池永は只今、来客中でして、暫くお待ち下さい」

エントランスで待っているとエレベーターが開き、赤いドレスの女性と一緒に知臣が降りてきた。

挨拶をしようと立ち上がると、女性が知臣の首に腕を回しキスをしていた。

何故か頭を強く殴られた気分ドクドクと早鐘が鳴る様に胸が締め付けられた。
知臣と目が合い女性を払い除けやって来ようとしたが

「池永社長。また日を改めてお伺い致します」

私は酷く冷めた声で挨拶した後、深く頭を下げ会社を去る。
自分でもわからない感情の渦に戸惑いながら宛もなく歩いていた。

「あ"ー幾ら何でも感情任せで貰ったアポを反故して…社会人として失格…家にも帰り辛いなぁ…かと言ってマユにも頼れないし」

ふとネカフェの看板が目に入る。
とにかく、今は、この分からない気持ちを整理する為に1人にならないとって気持ちが占領する。

シャワーを浴び、本やDVDを唯々ボーっと見ている。

散々、考え出した答えは私が知臣に知らない女がキスされた事に対し嫉妬してしまったんだ。

いつから好きになったのか分からない…好きって気付いたら手放した。

あの日に最後まではしてないが肌を合わせたから絆されてしまったのかも？

バラバラにこぼれ落ちる気持ちを搔き集めても、纏められないまま私は絶対に泣くアニメフランダースの犬の最後のシーンに涙しながら自分の感情を乗せ啜り泣く。

「ふっぐぅぅ」

久々に思いっきり泣いた。
私は、いつの間に弱くなってしまったんだろうか？

何故こんなに苦手だった男を自身の身体に触れ思い出したり涙を流しているのか…

私は小さな幼子の様にたくさん泣いて疲れて眠り落ちた。

初めて〝周りから逃げたい〟と思い芽生えた感情を胸に…