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175 リーゼちゃん密偵のお仕事

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ロズグランデとして初めての仕事かも知れないと思ながらリーゼは先に2人を屋根裏へ上がらせ、自らも慎重に屋根裏へ上がった。


ローナ»「人の気配が無いね。」

リーゼ»「屋根裏も何も手が入ってないな、かなり埃が積もってる。」

エンル»「居ないとか?」

リーゼ»「全体を見ないと判断できないな、ここを使ってないだけなのかも知れないし。」


暫く3人で屋根裏を探索。
しかし何も見つからない…。


エンル»「リーゼ、これ。」

リーゼ»「かなり埃が積もってるな。」


暗い隅にテーブルが置かれてあるって事は誰かが居たのは間違いないが、最近の物ではない。


ローナ»「屋敷の者に聞いた方が早くない?」

リーゼ»「そうだな、中二階とか有るだろうしな。」


探索を中止して、一旦戻る事に。
戻る途中、なんだか見られてる感覚が有る気がする。


ローナ»「居るね、何処かに。」

リーゼ»「やっぱりか、私が鈍ったんじゃないかと思って黙ってた。」

エンル»「今や王妹だからね、こんな仕事する人じゃないよね。」


止まって気配を探る。
だいたいの位置は解ったが危険かも知れない、2人に怪我をさせたらお姉様が悲しむだろう。
だが自分も同じだ、怪我をしたらお姉様が悲しむ。と考えていたらローナが壁を押して動かした。


ローナ»「こちらに戦闘の意思は無い。」

リーゼ»「居たのか?」

ローナ»「あぁ。」

エンル»「え…。」

リーゼ»「どうした?」


と2人の間から覗いてみたら、軽く10人以上は居た、こんな狭い所に固まって何をしているのだろう。


リーゼ»「貴方達は密偵なのか?」

男»「密偵だったと言うべきか。」

リーゼ»「今は違うのか?」

男»「俺達は領主が代わって廃棄されたんだ、今は隠れて住んでる侵入者って所かな?」


けっこう年配の密偵らしき者が質問に答える。

リーゼ»「それは何時の話だ?」

男»「10年…ぐらい前か?」

エンル»「ずっとここに居たの?」

男»「あんた達も密偵なんだろ?なら外に出ても俺達が生活できないと解ってくれるんじゃないのか?」

ローナ»「だからって10年も?」

リーゼ»「そうか、良き主に恵まれなかったんだな、ここはゼイストルでは無くビルセイド領地になったのは知っているか?」

男»「あぁ、最近変わったのは侍女から聞いて知っている。」

リーゼ»「皆は密偵をやる気は有るのか?」

男»「使ってくれるんなら働いてもいいぞ?」

リーゼ»「いや、そんな適当な気で働かれても迷惑なだけだ、だから廃棄されたんじゃないのか?」

男»「あんたらも使い捨てにされた事ぐらいあるだろ?」

リーゼ»「ある。だが今の主は絶対に私達を使い捨てにしない人だ。」

男»「そんなヤツ居るかよ…。」

エンル»「居るんだよ、いやホント、居るんだよね。」

ローナ»「私達2人は新参者だが、この子は主のお気に入りで、大事にされすぎて最近王妹になったぞ?」

男»「は?あんたら国の密偵か?」

ローナ»「ロズグランデ国王直属の暗部の者だ。」

男»「ロズグランデ…。」

リーゼ»「この領地もロズグランデ国だぞ?知らないワケじゃないだろ?」

男»「あぁ、それは知ってる、だが国王直属の暗部が俺達を処分しに来たって事か?」

リーゼ»「違う、国王直属の密偵は5人しか居ない、私を入れても6人だ、国になった以上、外の情報は必須だが密偵が足りなすぎて動けずに居る、皆にヤル気があればと思ったが…。」

エンル»「さすがに主様に迷惑かけそうだからムリっぽいね…。」

ローナ»「18人も居たのか…さすが人間領と隣接してる土地だな、しかし諦めようかリーゼ、ちょっと不安しかない。」

リーゼ»「そうだな…ルーネス達の怪我の時みたいにお姉様が悲しむのは見たくないな…。邪魔したな、出来れば退去して欲しい、お前達の食料も無料ではないからな。」


あまりヤル気が感じられないので諦めて戻る事にした。


リーゼ»「戻りました、お姉様。」

ユーリ»「密偵さんは居た?」

リーゼ»「居たには居たのですが…。」

ローナ»「18名が居ましたが、10年ほど前に廃棄されて以来、そのまま住み続けてるだけでした、使えません。」

ユーリ»「え、10年前?18人も居たの?」

エンル»「さすがに10年の屋根裏生活で復帰はムリですよ。」

ガイツ»「…そんなの居るのか?使えないなら追い出せないのか?」

ユーリ»「ガイツさん、この子達も同じ経験をしたんだよ、だから追い出す事なんて出来ないと思う。」

ガイツ»「よく10年も居られたな…。」

リーゼ»「ここが簡単に人間に攻められた理由が解りましたね、周囲の情報をまったく持っていない事が他国にバレてたんでしょうね。」

ユーリ»「密偵さんが働けないのは痛いなぁ、こんなに密偵って重要なんだね、改めて知ったわ。」

リーゼ»「新たに密偵を育てるにしても数年は掛かります。」

ユーリ»「あ、育成かぁ、いや密偵を作るの抵抗あるのよ。」

ローナ»「何かあるのですか?」

ユーリ»「密偵は密偵でしか生きられないってのが分からないのよ、ホントに密偵でしか生きられないなら育てちゃダメでしょ。」

リーゼ»「密偵は他に何も出来ませんので、密偵でしか生きられないのです。」

ユーリ»「それよ、なんで密偵しか出来ないの?リーゼはジェンガやオセロで遊んでたじゃない、それ密偵じゃなくても出来るよね?」

リーゼ»「え…いえ…そう言う事では無くてですね…。」

ユーリ»「解ってるよ?そんな話してるんじゃないって事、でもさ、リーゼお茶とか入れるよね?」

リーゼ»「はい。」

ユーリ»「それ密偵の仕事じゃなくて侍女の仕事だよね?」

リーゼ»「……。」


確かに…、密偵の仕事ではない…。





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