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5 令嬢ミリアと専属侍女リリス
しおりを挟むリリスがミリアに執着するのには理由がある。
7年前、当時6歳だったリリスは、両親を病で亡くし1人残されて食べる物も無く、畑の作物を盗んで飢えを凌ぐ生活をしていた。
ある日、畑の人に捕まり縄で縛られている所に領内を馬車で散歩していたミリアが遭遇、手持ちのお金を出して許してあげて欲しいと頭を下げた。
畑の人はミリアの出したお金を受け取らずに許すと言ってくれた。
助けられたリリスは領主の屋敷へ連れて行かれ、今まで作物を盗んで食べていたのを咎められると思っていたが、普通に食事が出てきてミリアに[どうぞ]と言われて我慢できずに食べた。
その後、アドマイズ侯爵様、伯爵から陞爵したばかりの領主様にミリアがリリスを自分の侍女として雇ってくれとムチャな事を言い出した。
素性の分からない得体の知れない小汚い子供を連れて帰って侍女にする、そんな事は不可能だしヘタをしたら売られて奴隷も有る。
だがミリアのお願いが領主様に届き、リリスはミリアの専属侍女となった。
リリスはミリアに拾われた恩義もあり、先輩侍女に教わりながら懸命に仕事を覚え、主人となった人に尽そうと頑張った。
ミリアが作物の育ちが悪くなってきていた領地を救った事。
リリスが作物を盗んで食べていたのを以前から知っていた事。
領民に絶大な人気が有るのに本人は知らない事。
同じ年齢なのに凄い事をしたと微塵も思っていない事。
リリスを自分の侍女にしてから少しして領内を馬車で見て回るのを辞めた事。
リリスを屋敷に残して街の人達に謝罪をしていた事はリリスも他の侍女から聞いて知っている。
6歳でありながら自分の専属の侍女にしたリリスを守り、出来る限り集まってもらった領民の皆に頭を下げリリスを庇った。
大人の対応を見せ、将来は領主にとの期待もあったのだが、領民にリリスの事をいろいろ言われミリアは街に出なくなった。
領民はミリアが街や農地に来なくなった事を憂い、街長が代表でミリアに謝罪をし、ミリア本人から謝罪を受けるとの言葉を貰いはしたのだが、街でミリアの姿を見る事はなく結果は変わらなかった。
領民は、自分達の手で領地の発展を止めてしまったのではないか、ミリアが街に出て来なくなったのは自分達が原因であると感じている。
4歳の頃に屋敷で突然ミリアが倒れ、5歳の頃にやっと父親から外出を許されるようになってから領地を見て回るようになり、領民の助けになりそうな事を民に伝え、6歳までの約1年間に領民の暮らしに幾許かの余裕が出来、1年前より目に見えて楽になった。
ミリアは皆に気持ち悪がられない程度で知識を伝え、頭の良い子で通っていた。
やり過ぎない加減が良かったのか皆には怪しまれる事は無かった、兄と姉以外からは。
ミリアには別の世界での知識がある、だが転生になるのか解らないが、前世での人物の記憶は無い。
4歳の頃に前触れも無く急に頭に激痛が走り、そのまま意識を失って倒れた。
2日後に目覚めた時には頭の中に現在とは違う文明の知識があり、倒れる前と今とで精神年齢に誤差が生じて見ている景色が変わったように感じていた。
それはリリスも知らない事であり、ミリアが誰にも言わず隠しているのだ。
ミリアが屋敷に引き篭った頃、王家でミリアを比較的に歳の近い第2王子の妃にとの話しもあったのだが、アドマイズ侯爵との話し合いにより、本人の望まない婚姻でミリアを潰すより自由にさせて国に貢献してもらおうと画策し、断念せざるを得ないと判断した。
ミリアネールは繊細で扱いが非常に困難であり、領地での出来事から屋敷に籠って専属侍女以外の者は家族ですらマトモに話せない状況であると説明をしていた。
父親の説明はあながち間違いでもないのだが、繊細と表現してはいるが物事に対し反応が薄いだけだったりする。
そしてリリスはミリアにとって友達であり、心を許せる唯一の存在となっている。
リリスはミリアの傍に仕え、自分を守ってくれている事や大切にしてくれる事でミリアが好きで離れられなくなり、自分もミリアの役に立ちたいと考えており、今現在も侍女として傍で頑張っている。
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