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12 アドマイズ侯爵の陰謀②
しおりを挟む侯爵家の圧力に土下座して許しを乞いそうな程トアモルは追い詰められていた。
セイルクスは圧力を掛けている訳ではなく、お願いをしているのだが、グイグイ行きすぎて相手には伝わっていない。
トアモル»「我が男爵家には侯爵家のご令嬢様をお迎えできる程の財力は御座いません。」
セイルクス»「問題は財力だけなのですね?」
トアモル»「いえ、我が家に上級貴族様の侍女が出来る者がおりません。」
セイルクス»「では、侍女はこちらで用意しましょう。」
トアモル»「お待ち下さい、我が家に財力は無いのですよ。」
セイルクス»「これは誤解しないで聞いて頂きたいのだが、ミリアネールは装飾品にまったく興味を示しませんし、服も侍女が適当に街で売っている古着を買って帰る物だそうです。私達が娘を虐げている訳ではなく、本人が楽だと言って好んで着ている服だとか。ミリアネールはパーティー等には嫌がって出席しませんのでドレスすら持っておりません。私達が虐げている訳では御座いませんよ?」
トアモル»「そんな令嬢、聞いた事が御座いません。」
セイルクス»「紛れも無く事実です、装飾品や衣装は10歳の時に持たせた以来で今も何も欲しがりません。何かの病気かと思う程です。」
トアモル男爵は、これヤバくね?とか思った。
トアモル»「……。」
トアモルの止めどなく流れる汗を見てセイルクスは、あ…ヤベ…。と思った。
セイルクス»「トアモル殿、私は貴殿に問題児を押し付けに来たのではないと解って欲しい。」
トアモル»「はぁ。」
セイルクス»「私は娘が不憫で見ていられないのです、どうか。」
トアモル»「頭を上げて下さい、息子が何と言うか解りませんが、子を思う親の気持ちは理解できますので。」
セイルクス»「娘を貰って頂けますか?」
トアモル»「ガルフィード男爵家でミリアネール嬢をお迎え致しましょう。」
セイルクス»「有難うございます、娘をよろしく頼みます。」
トアモル»「お任せ下さい、セイルクス様。」
セイルクス»「それでですね…もう1つお願いが御座いまして…。」
トアモル»「どのような事でしょう?」
セイルクス»「もう1人お願い出来ないでしょうか?」
トアモル»「…はい?」
セイルクス»「もう1人、第2夫人にどうでしょう?」
トアモル»「え~…。え?」
セイルクス»「どうでしょう?」
トアモル»「失礼な発言をお許し下さい。アンタ怪しい壺売りかッ 」
セイルクス»「娘には専属侍女が居るのです、ミリアネールは専属侍女の正規の使用方法は知らず、友達として傍に置いているのです。リューク殿も出席したらしいパーティーで、その侍女が娘の体調不良を見て即座に会場を走って横切ったと聞きました、幸い未熟な侍女として認識して貰ったらしく大事にならなかったのですが、いずれ取り返しの付かない事になると思うのです。」
トアモル»「その侍女もミリアネール様と一緒に、と言う事では無さそうですね。」
セイルクス»「侍女の名前はリリスと言い、ミリアネールと共に我が家で育った13歳の子です、2人は友達のような姉妹のような関係ですが、娘の侍女として育ったが為に、また必ず主人を助けに向かうと思うのです。そのリリスを侍女ではなくリューク殿の妻としてガルフィード家へ嫁がせて頂ければ、ミリアネールと離れる事なく第2夫人として、第1夫人のミリアネールの前に出る事のない位置で居させてやりたいと思うのです。」
トアモル»「事情は理解しました、しかし妻を2人となると…子供が出来た場合に財政が…。」
セイルクス»「それはミリアネールを領地の散歩と称して視察に出してやって下さい。ガルフィード領が豊かになるはずです。」
トアモル»「それは?あ。あの農地改革や作物の調理方やらの続きをガルフィード領でやると?たしかお嬢様が始めた事だと伺いました。」
セイルクス»「それを始めたのはミリアネールなのです、どうでしょうか?」
トアモル»「アドマイズ領に不可欠なお方なのでは?」
セイルクス»「話せば少し長くなるのですが。」
リリスがアドマイズ家に来た話しからミリアが領地の視察をしなくなった理由まで全て話した。
トアモル»「そんな事が…。」
セイルクス»「ですので、アドマイズ領に居たとしてもミリアが領地を視察して回る事は無いでしょう、リリスは良い子です、これまでミリアの傍で真面目に勤めを果たして参りました。」
セイルクスの真剣な顔で語る姿を見て、娘だけでなく侍女までも本気で心配しているのだと理解した。
トアモル»「解りました。お2方ともガルフィード家でお預かり致しましょう。」
セイルクス»「有難うございます、ミリアを上手く使えれば陞爵も容易でしょう。」
トアモル»「そこまでは考えておりませんよ、ただ領民が少しでも良い暮らしが出来れば程度です。」
セイルクス»「より良い領地の発展を。」
話しが纏まりアドマイズ侯爵は領地に帰って行った。
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