可愛いは正義 では男前は?

丹葉 菟ニ

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三流α

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20代でする一般的なものと今からデータを取っておいても良いだろうと判断したものを追加し、父の部下に着替えを頼み朝陽のもとへ戻るとブスっとした顔で椅子に座っている。

「朝陽?」

「健康診断、泊りでやるの?」

俺の行動の予測を朝陽に話したであろう兄は俺を横目で確認しただけで何も言わずに携帯を操作し始めた。

「ああ、1泊2日の検査入院にした」

「健康診断で入院するなんて聞いてない」

涙目で訴えてきた朝陽。嫌がれば宥める言葉を幾つか考えていたが朝陽の涙目を見てしまって何も言えなくなってしまい、助けを求めて兄を見るが、携帯片手に素知らぬフリを決め込んでいる。兄を手本に朝陽のトリセツ通りにするかまだ迷う。

「1泊2日の人間ドックといって、一般的なものよりさらに細かくチェックして健康を維持できるようアドバイスして貰える。痛いことなんてしないから」

「なにするのさ」

涙目が今にも崩壊して滴として漏れ始めてしまいそうだ。本当に泣かれたら自分が何も出来なくなってしまう前に詐欺師になる覚悟を決めた。

「ほら、背を伸ばすにも肉も必要だけど、朝陽は肉が付きにくいって言ってただろ?もしかして、肉が付かない原因が分かって改善出来たらいいことがあるかもだろ」

ウルウルと崩壊寸前の涙目をぐしと手の甲で乱暴に拭うと、思案を始めてたのか難しい顔になったが直ぐに、「あんたは一緒に泊まるの?」と、聞いてきた。

「ああ、俺も朝陽と一緒に1泊2日の検査入院するから」

「うん、わかった」

「母さんに朝の着替え頼んだから」

「そっか、着替え要るよな、兄ちゃんありがとう」

アナウンスで朝陽が呼ばれΩだけしか入れない心療内科に入って行く朝陽を見送る。

「初めてのお泊まりが病院ほど安心できる場所は他にないって今日初めて知りました」

初めてのデートが病院、それも兄付き。そして初めてのお泊まりも病院。気がついてはいたがカウントはしないと腹の中で決めてたのに態々口に出して言ってきた兄の口を縫合してしまいたい。

「健康でいて欲しい相手なので」

「部屋は一緒ですか?別々なんですか?」

「泊まりやデートの度に聞いてくるつもりですか?悪趣味なことで」

「いい子に育てすぎて色々と気にかけてやらないと直ぐにオオカミに食べられてしまいそうで」

「プライベートまで気にしすぎでは?過干渉になっても嫌われますよ」

「幼い時の様に手がかからなくなったと思えば今度は気になることが増えてきた。子供の成長はいくつになったからと言って終わるものではないって誰かが言ってたけど本当ですね」

「子育てが趣味ならさっさと自分の子でも産んでもらえ」

「私みたいな三流αはモテないんですよねぇ」

「貴方が三流なら、その辺のαは屑だな」

Ωが迫害されてた時代から急速に関わり今では守られながらも普通の生活を送れるようになった。それだけΩの正しい知識が広まった。それに比べαの知識は広がらないのは特別視させたいαのせいでもある。
三流αは一般家庭に生まれてしまったαのこと、どんなに知能が高くても生家を気にする豪族崩れが三流αの出世を阻む者が未だに多く存在する。そして、その辺のαとは知能が低くても親の捏ねを最大限使うα、プライドだけの塊だけで中身がない。

「ほぼいけ好かないαばかりで苦労ばかりですよ」

「苦労はしても怪我はしたことは無いだろ」

兄の頭の良さなら上手く立ち回れるが苦労ばかりで逆恨みを買うことはほぼ無いに等しいだろう。但し転んでもタダでは起き上がらないタイプだ、相手の髪の毛をガッシリ掴んで起き上がるタイプ。掴まれた相手はほぼ丸坊主になるなと想像したら笑えてくる。

「貴方みたいなαばかりだと話してて楽でいいけどあまりにもあっさり手懐けてる姿も見たくない」

「酷いな、お兄様の真似をしただけですよ」

弟の事となると目の色変えてくるのはやめて欲しい。もし、気まぐれに好きになった相手にこんな面倒臭い兄が居たなら速攻で手を引く。

「本当に純粋な子だと実感したし、朝陽の接し方も分かりました。まぁ、まだ日も浅いので分からない時はご相談させて下さい。って事で、今まで朝陽を守ってくれてありがとう。今日からは俺が貴方の代わりにしっかりと守りますので、どうぞご自分の恋愛でもして下さい」

確実に朝陽には見せたことのない顔だろうな。兄に怒られ慣れていない朝陽なら速攻で泣き出す。と、思いながらも兄を見てた。
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