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第8話:「空挺男児、乙女に変貌して尚果敢」
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「――」
機体を揺らし進行する89AWVの機上、コマンドキューポラの上。そこに髄菩は身を置き、微かに顰めた表情をその美少女顔に浮かべている。
――髄菩機の89AWVを含む4機からなる装脚機・装甲車輛の縦隊隊列が、平野を透る轍を辿り進んでいた。
前方から、
芹滝機の93AWV。
髄菩機の89AWV。
24式水陸両用装甲車――大型の上陸戦用装甲車。通称24AAV。
97式偵察戦闘装脚機――89AWVシリーズより一回り小型の装脚機、通称97RFW。
から成る。
これ等は、最前線となった街で殿となって取り残されたという、空挺の一個班と1機の90MBWを。救出回収するために急遽編成された救出隊だ。
髄菩機と芹滝機の他に。
空挺隊員移送のために、居合わせた水陸機動団の1個戦闘上陸中隊から24式水陸両用装甲車1輛の応援を受け。
そして案内人として。今先の軽量装脚機乗りのツインテ美少女が機長を務める、97式偵察戦闘装脚機が同行し。
以上で編成されている。
その編成で、髄菩等の救出隊は進行を急いでいた。
もたらされた情報を聞く限り、その取り残された空挺は一刻の猶予も無い状況だ。今の救出隊の編成もお世辞にも十分な物とは言えないが、勇敢に殿を務めた彼等を見捨てる選択肢は無い。
そして、どうにもその空挺の一個班は、髄菩等の顔見知りの隊のようであった。
それらの理由から、髄菩等は名乗りを上げ。救出へと赴く事へとなったのであった。
《――見えたぞ》
救出隊は、重く静かな空気に包まれていたが。次には先頭を行く93AWVの芹滝よりの声が通信で寄越され。
髄菩は。救出隊の各員は神経を尖らせる。
進行方向の向こうを見れば、その最前線の街が。その内より火の手がいくつも上がる、痛ましい光景が見えた。
「――ッ」
すでに現在地にまで、微かであるが砲撃のものであろう音が聞こえて来る。聞き及んでいる状況から、味方の特科隊の支援砲撃などであることはまず無く、敵のものである事は明らか。
厳しい状況が予想され、髄菩はその凛々しく愛らしい顔を、しかし一層顰める。
《行くぞ。皆、腹を括れ――》
静かに尖る声で、芹滝より通信で言葉が寄越される。
一層張り詰める空気。
しかし、味方を何に変えても救い出すべく。救出隊は迷いを見せることなく、街への進行を続けた。
――最前線となったその街の、中心部付近。
そこは大きな噴水をモニュメントに設け、広い空間の持つ公園を兼ねるものらしき広場。
本来は賑わい、街の人々の憩いの場であったであろう場所。
――しかし今。そこは無数の銃火が飛び交い、銃撃の音が響き支配する戦闘区域と化していた。
「――ワンダウンッ!」
透る声色で、しかし怒号に近い張り上げられた声が響く。
大きな、しかし損壊し枯れた噴水の内側。そこに身を置くは――金髪白ギャルだ。
少し高めの身長に、ウェーブ掛かった金髪ロングの元に美麗な顔が映える。今のこの戦闘の場にはあまりに場違いな金髪白ギャル美女。
しかしその美麗な顔の眼は剥かれ、真剣そのものの剣幕。
そしてその金髪白ギャルが纏うは、空挺団隊員等が着用する迷彩戦闘服3型改。がっつり着込んだ装備でありながら、持ち上がり少し浮く防弾チョッキが、その下の豊かなバストの存在を示している。
その袖に見えるは、第1空挺団のワッペン。
それが、金髪白ギャルが第1空挺団の隊員である事を示していた。
その金髪白ギャルが構えるは、20式5.56mm小銃 IAR。20式の分隊支援火器仕様。
その引き金が先から立て続けに引かれ、甲高い発砲音が留まる事なく上がり続ける。
IAR仕様であるその20式が、その役割に求められる〝的確に狙う制圧射撃〟を行う姿。
それが向けられるは、噴水に向けて突撃を仕掛ける無数の鋼獣帝国陸軍の兵達だ。
「ダウンッ!タンゴダウンッ!」
金髪白ギャルの向け撃つ、狙う制圧射撃に。突撃攻撃で迫る帝国兵が、一人また一人と崩れ屠られていく。
それを視認し、敵排除の知らせを上げながら。しかし白ギャルは歯を食いしばり、再照準から次なる敵をまた狙う。
損壊した噴水の内、そして周囲には。
その金髪白ギャルだけでなく複数名の者が――美少女や美女が篭り配置。火器装備を操り、重厚な火力を四方へ展開し、必死に苛烈に戦う姿があった。
そのいずれもが迷彩戦闘服姿。そして記されるワッペンが彼女等が皆、第1空挺団の隊員である事を示している。
明かせば。彼女等こそ、この街に殿となって残された空挺団の1個班。
そしてその正体は皆、美少女や美女へと性転換した――空挺団所属の〝男性〟隊員であった。
普通科――歩兵である空挺団隊員等が戦場で女体化する意味、効果は。収容容積に制約のある装脚機乗り等の事情と比べて、あまり無いと思われていた。
しかし最近の事情にあっては。中立の街の住民への接触も頻繁に発生し、その住民達への威圧感を低下させ、接触を少しでも柔軟な物とする事を期待して。
普通科他各科各隊の男性隊員も、女性の身体へと性転換して任務に臨む事が珍しくなくなっていたのだ。
そして、この街もまた戦火に巻き込まれた罪無きの街であり。その住人への配慮を鑑み、空挺団隊員の男性の多くは、女性の身体へと姿を変えていた。
しかしそこを帝国軍の大規模な強襲に遭遇。
空挺団の彼女(彼)等は元の男性の身体に戻る暇もなく、愛らしい姿のまま、苛烈な戦闘に身を投じ現在に至った。
現在。噴水を籠城陣地代わりに防護を固め、帝国軍の行う波状攻撃を迎え撃つは。
詳細には17名からなる。空挺団の第1普通科大隊、第1普通科中隊に所属する空挺隊員等の1個班。
「装てェんッ!」
「キルッ!ワンキルッ!」
その各所から、いくつもの怒号の域の声が上がっていた。
各員は各所の配置から。
小銃を各個に撃つ。
マークスマンライフルで脅威度の高い敵を狙う。
分隊支援火器で敵を抑える。
据えた汎用機関銃を唸らせ、敵の主力にぶつけるように浴びせる。
対戦車火器を、現れた敵の装甲車輛に叩き込む。
等。
各々の役割を担い、苛烈な戦闘を展開する姿を見せていた。
「奈織ッ!左手から新手の敵分隊ッ!」
その中心で、自身もカービン仕様の20式を撃ちながらも。各員へ指示の声を張り上げる美少女の姿がある。
鮮やかな青色みかかった、少し長めの綺麗な髪が映える17歳前後程の美少女。
しかし纏うはやはり迷彩戦闘服3型改。その襟には二等陸尉の階級章。
その立場は、空挺団で一個小隊を預かる幹部隊員であり。現在は、この街に残り殿を務めた1個班の指揮を務める身。
そして明かせばその正体は、本来はやはり男性。
その声は人を魅了するまでに透り美麗なものであったが。しかし今にあってはその声で張り上げられるは、苦しそうなまでの怒号の域での指示命令だ。
「りょッ!〝すっきゅん〟二尉ッ!」
奈織という名に合わせての指示に答えたのは、先の金髪白ギャル。それこそその金髪白ギャルの名であり、その実の正体はチャラい雰囲気性格な男性陸士長であったりする。
また、〝すっきゅん〟と言うのは小隊長である二等陸尉の彼女(彼)の本名である彗跡を。奈織が勝手に呼んでいる愛称。
その敵の所在を知らせ撃退を指示する言葉に、奈織が返したのはどこかふざけた了解の台詞。それは周りに、そして自身に少しでも余裕を持たせようと敢えて発したものであり。
奈織のその美麗な顔は、しかし反して変わらずの目を剥き歯を食いしばった、死に物狂いのそれ。
そして奈織はそれを発した時には、すでに撃退を支持された敵分隊に向けて。構えるIARを照準して、引き金を絞っていた。
「稜透ッ、正面右の進出地点に投射しろッ!東須ッ!北に新手の敵機関銃班ッ、設置される前に潰せッ!」
同時進行で、各方で戦闘投射は途絶えることなく続き。指揮官の彗跡は指示を張り上げ続ける。
その指示を受け、各員は呼応し敵の撃退に当たる。
「了解ッ!」
稜透と呼ばれたのは、褐色高身長美人の三等陸曹。
白ギャルよりもさらに少し高身長で、日焼けした肌に筋肉が逞しく、しかし同時に欲張りな尻腰の凹凸が主張する、逞しくも美人な女。揺れる美麗な漆黒のロング髪がその身を飾っている。
その上半身に纏うは防弾チョッキのみで、露出する肌が魅惑を醸している。
しかし反して。その強靭なその腕で扱うは、7.62mm機関銃 M240Gという凶悪な得物。
汎用機関銃射手である彼女は、それを三脚で据え置き。街路よりなだれ込んでくる帝国軍小隊に向けて、容赦など一切無い機銃掃射を唸らせ浴びせている。
「了ッ」
東須と呼ばれたのは。長めの黒髪ショートが似合う、静かでしかし尖る容姿雰囲気の、美少女の一等陸士。
その腕に構えられるは、選抜射手が装備する7.62mm狙撃銃HK417。
それを用いて、指示された新手の敵機関銃班の帝国兵達を。恐るべき精度の立て続けた射撃で、瞬く間に狙撃。
選抜射手に要求される、敵脅威の無力化を一つ完遂して見せた。
しかしその顔は冷静さを保ちながらも、極限の状況から微かに顰められている。
御多分に零れず、どちらもやはり本来は男性。
「残弾低下ァッ!」
そこで叫び上げたのは。
ポニーテールに結われた微かに紫掛かった黒髪に、気の強そうな凛とした顔立ちが特徴の長身の美女。
噴水の縁に据えて構えられる、5.56mm機関銃 MINIMI Mk.3が彼女の手により掃射の火を吹いている。
正体は若い男性二等陸士である、その分隊支援火器射手から上がったのは、弾薬残りが少ない事を告げる声だ。
「狡徒《こうと》ッ、掃射はもういいッ!狙い個別撃破に移行しろッ!――他はッ!?」
その二等陸士をその名で呼びながら、指示の言葉をまた送るは彗跡。合わせて彗跡は、指揮下の各空挺隊員へ、弾薬の残数状況を尋ねる言葉を張り上げる。
「ラスト1弾倉ッ!」
「装填ッ――こちらもラス1ッ!」
「もう無いッ、弾をくれェッ!」
「大事に撃てッ、コイツでカンバンだァッ!」
各員から怒号で上がり返る弾薬の残状況は、悲痛な状況を知らせた。
今は美少女や美女の姿である空挺隊員等は、しかしその内に宿す男の荒々しさを最早隠す欠片も見せず。
射撃行動を続け、苛烈に戦闘を行いながら、状況を知らせる怒号怒声を飛ばし合う。
「ッゥ!」
その美少女顔を顰め、透る美麗な声色でしかし苦く口を鳴らす彗跡。
果敢に、激烈なまでの戦いを繰り広げながらも。
状況は、彗跡率いる1個班の状態は。最早限界直前であった。
「ッぅー――やばやばのヤバじゃねッ?」
味方、班員の飛び交う怒号を背に聞きつつ。
金髪白ギャルの奈織も、その射撃を一層の精度を意識して行いつつも。明らかな限界直前の状況に、思わずそんな一言を零す。
鳴り響き続ける無数の、しかし打ち止めが迫る銃声。
数え切れぬ空薬莢が落ちて散らばり響く音。
役目を終えた空弾倉の落ち跳ねる、儚い金音。
その全てが、まるでゲームーバーへのカウントダウンのように錯覚すらした――
「――!」
「!」
しかし直後。
奈織が、彗跡が。その場で果敢に戦う性転換美少女空挺隊員等は。
その中に混じり聞こえた、別の〝音〟に気付く。
直後――彼らの背後で大きな破壊音、倒壊音が響く。
「――ッ!」
目を剥きつつ各員が振り向き見れば。その背後にあった家屋建物が、その奥向こうより爆破の如き様相で吹っ飛び。
開口した倒壊部の大穴より、巨大なシルエットが飛び出し踏み混んでくる。
それこそ――89AWVの。
装脚機隊、救助隊の到着の知らせであった。
機体を揺らし進行する89AWVの機上、コマンドキューポラの上。そこに髄菩は身を置き、微かに顰めた表情をその美少女顔に浮かべている。
――髄菩機の89AWVを含む4機からなる装脚機・装甲車輛の縦隊隊列が、平野を透る轍を辿り進んでいた。
前方から、
芹滝機の93AWV。
髄菩機の89AWV。
24式水陸両用装甲車――大型の上陸戦用装甲車。通称24AAV。
97式偵察戦闘装脚機――89AWVシリーズより一回り小型の装脚機、通称97RFW。
から成る。
これ等は、最前線となった街で殿となって取り残されたという、空挺の一個班と1機の90MBWを。救出回収するために急遽編成された救出隊だ。
髄菩機と芹滝機の他に。
空挺隊員移送のために、居合わせた水陸機動団の1個戦闘上陸中隊から24式水陸両用装甲車1輛の応援を受け。
そして案内人として。今先の軽量装脚機乗りのツインテ美少女が機長を務める、97式偵察戦闘装脚機が同行し。
以上で編成されている。
その編成で、髄菩等の救出隊は進行を急いでいた。
もたらされた情報を聞く限り、その取り残された空挺は一刻の猶予も無い状況だ。今の救出隊の編成もお世辞にも十分な物とは言えないが、勇敢に殿を務めた彼等を見捨てる選択肢は無い。
そして、どうにもその空挺の一個班は、髄菩等の顔見知りの隊のようであった。
それらの理由から、髄菩等は名乗りを上げ。救出へと赴く事へとなったのであった。
《――見えたぞ》
救出隊は、重く静かな空気に包まれていたが。次には先頭を行く93AWVの芹滝よりの声が通信で寄越され。
髄菩は。救出隊の各員は神経を尖らせる。
進行方向の向こうを見れば、その最前線の街が。その内より火の手がいくつも上がる、痛ましい光景が見えた。
「――ッ」
すでに現在地にまで、微かであるが砲撃のものであろう音が聞こえて来る。聞き及んでいる状況から、味方の特科隊の支援砲撃などであることはまず無く、敵のものである事は明らか。
厳しい状況が予想され、髄菩はその凛々しく愛らしい顔を、しかし一層顰める。
《行くぞ。皆、腹を括れ――》
静かに尖る声で、芹滝より通信で言葉が寄越される。
一層張り詰める空気。
しかし、味方を何に変えても救い出すべく。救出隊は迷いを見せることなく、街への進行を続けた。
――最前線となったその街の、中心部付近。
そこは大きな噴水をモニュメントに設け、広い空間の持つ公園を兼ねるものらしき広場。
本来は賑わい、街の人々の憩いの場であったであろう場所。
――しかし今。そこは無数の銃火が飛び交い、銃撃の音が響き支配する戦闘区域と化していた。
「――ワンダウンッ!」
透る声色で、しかし怒号に近い張り上げられた声が響く。
大きな、しかし損壊し枯れた噴水の内側。そこに身を置くは――金髪白ギャルだ。
少し高めの身長に、ウェーブ掛かった金髪ロングの元に美麗な顔が映える。今のこの戦闘の場にはあまりに場違いな金髪白ギャル美女。
しかしその美麗な顔の眼は剥かれ、真剣そのものの剣幕。
そしてその金髪白ギャルが纏うは、空挺団隊員等が着用する迷彩戦闘服3型改。がっつり着込んだ装備でありながら、持ち上がり少し浮く防弾チョッキが、その下の豊かなバストの存在を示している。
その袖に見えるは、第1空挺団のワッペン。
それが、金髪白ギャルが第1空挺団の隊員である事を示していた。
その金髪白ギャルが構えるは、20式5.56mm小銃 IAR。20式の分隊支援火器仕様。
その引き金が先から立て続けに引かれ、甲高い発砲音が留まる事なく上がり続ける。
IAR仕様であるその20式が、その役割に求められる〝的確に狙う制圧射撃〟を行う姿。
それが向けられるは、噴水に向けて突撃を仕掛ける無数の鋼獣帝国陸軍の兵達だ。
「ダウンッ!タンゴダウンッ!」
金髪白ギャルの向け撃つ、狙う制圧射撃に。突撃攻撃で迫る帝国兵が、一人また一人と崩れ屠られていく。
それを視認し、敵排除の知らせを上げながら。しかし白ギャルは歯を食いしばり、再照準から次なる敵をまた狙う。
損壊した噴水の内、そして周囲には。
その金髪白ギャルだけでなく複数名の者が――美少女や美女が篭り配置。火器装備を操り、重厚な火力を四方へ展開し、必死に苛烈に戦う姿があった。
そのいずれもが迷彩戦闘服姿。そして記されるワッペンが彼女等が皆、第1空挺団の隊員である事を示している。
明かせば。彼女等こそ、この街に殿となって残された空挺団の1個班。
そしてその正体は皆、美少女や美女へと性転換した――空挺団所属の〝男性〟隊員であった。
普通科――歩兵である空挺団隊員等が戦場で女体化する意味、効果は。収容容積に制約のある装脚機乗り等の事情と比べて、あまり無いと思われていた。
しかし最近の事情にあっては。中立の街の住民への接触も頻繁に発生し、その住民達への威圧感を低下させ、接触を少しでも柔軟な物とする事を期待して。
普通科他各科各隊の男性隊員も、女性の身体へと性転換して任務に臨む事が珍しくなくなっていたのだ。
そして、この街もまた戦火に巻き込まれた罪無きの街であり。その住人への配慮を鑑み、空挺団隊員の男性の多くは、女性の身体へと姿を変えていた。
しかしそこを帝国軍の大規模な強襲に遭遇。
空挺団の彼女(彼)等は元の男性の身体に戻る暇もなく、愛らしい姿のまま、苛烈な戦闘に身を投じ現在に至った。
現在。噴水を籠城陣地代わりに防護を固め、帝国軍の行う波状攻撃を迎え撃つは。
詳細には17名からなる。空挺団の第1普通科大隊、第1普通科中隊に所属する空挺隊員等の1個班。
「装てェんッ!」
「キルッ!ワンキルッ!」
その各所から、いくつもの怒号の域の声が上がっていた。
各員は各所の配置から。
小銃を各個に撃つ。
マークスマンライフルで脅威度の高い敵を狙う。
分隊支援火器で敵を抑える。
据えた汎用機関銃を唸らせ、敵の主力にぶつけるように浴びせる。
対戦車火器を、現れた敵の装甲車輛に叩き込む。
等。
各々の役割を担い、苛烈な戦闘を展開する姿を見せていた。
「奈織ッ!左手から新手の敵分隊ッ!」
その中心で、自身もカービン仕様の20式を撃ちながらも。各員へ指示の声を張り上げる美少女の姿がある。
鮮やかな青色みかかった、少し長めの綺麗な髪が映える17歳前後程の美少女。
しかし纏うはやはり迷彩戦闘服3型改。その襟には二等陸尉の階級章。
その立場は、空挺団で一個小隊を預かる幹部隊員であり。現在は、この街に残り殿を務めた1個班の指揮を務める身。
そして明かせばその正体は、本来はやはり男性。
その声は人を魅了するまでに透り美麗なものであったが。しかし今にあってはその声で張り上げられるは、苦しそうなまでの怒号の域での指示命令だ。
「りょッ!〝すっきゅん〟二尉ッ!」
奈織という名に合わせての指示に答えたのは、先の金髪白ギャル。それこそその金髪白ギャルの名であり、その実の正体はチャラい雰囲気性格な男性陸士長であったりする。
また、〝すっきゅん〟と言うのは小隊長である二等陸尉の彼女(彼)の本名である彗跡を。奈織が勝手に呼んでいる愛称。
その敵の所在を知らせ撃退を指示する言葉に、奈織が返したのはどこかふざけた了解の台詞。それは周りに、そして自身に少しでも余裕を持たせようと敢えて発したものであり。
奈織のその美麗な顔は、しかし反して変わらずの目を剥き歯を食いしばった、死に物狂いのそれ。
そして奈織はそれを発した時には、すでに撃退を支持された敵分隊に向けて。構えるIARを照準して、引き金を絞っていた。
「稜透ッ、正面右の進出地点に投射しろッ!東須ッ!北に新手の敵機関銃班ッ、設置される前に潰せッ!」
同時進行で、各方で戦闘投射は途絶えることなく続き。指揮官の彗跡は指示を張り上げ続ける。
その指示を受け、各員は呼応し敵の撃退に当たる。
「了解ッ!」
稜透と呼ばれたのは、褐色高身長美人の三等陸曹。
白ギャルよりもさらに少し高身長で、日焼けした肌に筋肉が逞しく、しかし同時に欲張りな尻腰の凹凸が主張する、逞しくも美人な女。揺れる美麗な漆黒のロング髪がその身を飾っている。
その上半身に纏うは防弾チョッキのみで、露出する肌が魅惑を醸している。
しかし反して。その強靭なその腕で扱うは、7.62mm機関銃 M240Gという凶悪な得物。
汎用機関銃射手である彼女は、それを三脚で据え置き。街路よりなだれ込んでくる帝国軍小隊に向けて、容赦など一切無い機銃掃射を唸らせ浴びせている。
「了ッ」
東須と呼ばれたのは。長めの黒髪ショートが似合う、静かでしかし尖る容姿雰囲気の、美少女の一等陸士。
その腕に構えられるは、選抜射手が装備する7.62mm狙撃銃HK417。
それを用いて、指示された新手の敵機関銃班の帝国兵達を。恐るべき精度の立て続けた射撃で、瞬く間に狙撃。
選抜射手に要求される、敵脅威の無力化を一つ完遂して見せた。
しかしその顔は冷静さを保ちながらも、極限の状況から微かに顰められている。
御多分に零れず、どちらもやはり本来は男性。
「残弾低下ァッ!」
そこで叫び上げたのは。
ポニーテールに結われた微かに紫掛かった黒髪に、気の強そうな凛とした顔立ちが特徴の長身の美女。
噴水の縁に据えて構えられる、5.56mm機関銃 MINIMI Mk.3が彼女の手により掃射の火を吹いている。
正体は若い男性二等陸士である、その分隊支援火器射手から上がったのは、弾薬残りが少ない事を告げる声だ。
「狡徒《こうと》ッ、掃射はもういいッ!狙い個別撃破に移行しろッ!――他はッ!?」
その二等陸士をその名で呼びながら、指示の言葉をまた送るは彗跡。合わせて彗跡は、指揮下の各空挺隊員へ、弾薬の残数状況を尋ねる言葉を張り上げる。
「ラスト1弾倉ッ!」
「装填ッ――こちらもラス1ッ!」
「もう無いッ、弾をくれェッ!」
「大事に撃てッ、コイツでカンバンだァッ!」
各員から怒号で上がり返る弾薬の残状況は、悲痛な状況を知らせた。
今は美少女や美女の姿である空挺隊員等は、しかしその内に宿す男の荒々しさを最早隠す欠片も見せず。
射撃行動を続け、苛烈に戦闘を行いながら、状況を知らせる怒号怒声を飛ばし合う。
「ッゥ!」
その美少女顔を顰め、透る美麗な声色でしかし苦く口を鳴らす彗跡。
果敢に、激烈なまでの戦いを繰り広げながらも。
状況は、彗跡率いる1個班の状態は。最早限界直前であった。
「ッぅー――やばやばのヤバじゃねッ?」
味方、班員の飛び交う怒号を背に聞きつつ。
金髪白ギャルの奈織も、その射撃を一層の精度を意識して行いつつも。明らかな限界直前の状況に、思わずそんな一言を零す。
鳴り響き続ける無数の、しかし打ち止めが迫る銃声。
数え切れぬ空薬莢が落ちて散らばり響く音。
役目を終えた空弾倉の落ち跳ねる、儚い金音。
その全てが、まるでゲームーバーへのカウントダウンのように錯覚すらした――
「――!」
「!」
しかし直後。
奈織が、彗跡が。その場で果敢に戦う性転換美少女空挺隊員等は。
その中に混じり聞こえた、別の〝音〟に気付く。
直後――彼らの背後で大きな破壊音、倒壊音が響く。
「――ッ!」
目を剥きつつ各員が振り向き見れば。その背後にあった家屋建物が、その奥向こうより爆破の如き様相で吹っ飛び。
開口した倒壊部の大穴より、巨大なシルエットが飛び出し踏み混んでくる。
それこそ――89AWVの。
装脚機隊、救助隊の到着の知らせであった。
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未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
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加藤あいは高校2年生。
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普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
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いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
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探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
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