君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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…こんなはずじゃなかった
七瀬奏叶がずっと話しかけてきたから、気が緩んだんだ…
本当は関わっちゃいけない事を忘れていた
殺すつもりなんかない…
でも…関われば必ず七瀬奏叶も死んでしまうかもしれない…
それじゃ…私が殺したときっと変わらない
どうしてなの…?こんなのもういや…っ
私だって普通に生きたい…
でもそれが駄目だから必死で気持ち押し殺してやり抜いて来たのに…!
コートも…ありがとうって返したかった…

奏叶「…見つけた…千菜」

七瀬奏叶!?まさか追いかけて来たの!?
これ以上関わっちゃ駄目だって気持ちが大きくなって、私は逃げようとした
だけど気づいたら七瀬奏叶の腕の中にいた
放課後の誰も居ない静かな図書室で、聞こえるこの小さな鼓動…この音は…なに…?
外では白い雪がしんしんと降り積もる寒い冬のはずなのに、温かく感じるのは…なんで…?
この状況は一体なに…?
今…私…もしかして七瀬奏叶に抱き締められてるの?
そこでようやく私は理解した

千菜「……っ離して!」

だけど七瀬奏叶はもっと強く抱き締めて離そうとしてくれない
抱き締められる感覚、人の温もり
胸がなぜか苦しくなった

千菜「……離して…っ」

さっきよりも弱々しい声…
涙が出そうなのを必死でこらえた

奏叶「………離さない。千菜…聞いて」

七瀬奏叶は私を抱き締めたまま話し始めた
すぐ近くで聞こえる七瀬奏叶の声
……どうして?
早く…七瀬奏叶から離れなくちゃいけないのに…体が…まるで凍ったみたいに動かない…

奏叶「……湊が千菜に酷い事言ったのは悪かった
謝るよ……ごめん
でも湊もきっと俺の事を思って言ってくれたんだ
だから…許してあげてほしい」

七瀬奏叶の少し悲しそうな声がすぐ近くで聞こえる…

千菜「…分かった…!分かったからもう離して…!」

奏叶「……嫌だ…ようやく捕まえた千菜」

え………っ…?

千菜「…な…何言ってるの…っ離してってば!」

奏叶「やだね。千菜はずっと俺の事避けてる」

千菜「~…っ当たり前でしょ!
私はもう…誰とも関わりたくないの!」

奏叶「……ずっとそうやって自分を犠牲に皆の事守ってきたの?」

なに…この胸に何かが突き刺さったような違和感…

奏叶「…ずっと1人で居たのも、ずっと俺を突き放そうと苦しそうな顔で酷い事を言ったのも…
千菜が誰よりも一番噂を恐がり必死で守ろうとしてたからでしょ…?」

どうして……どうしてこの人は…私の気持ちを知ってるの?
誰にも…話した事ないのに…
今まで誰にも理解なんてされなかったのに…
皆噂を聞いて私を見るだけで恐がり逃げていった
こんな人…今まで居なかった…
涙が…溢れそうだった…
初めて私の気持ちを分かってくれた…
溢れだしそうな涙をぐっとこらえた
ここで泣いちゃ駄目…
例え七瀬奏叶に図星をつかれたとしても涙を見せちゃ駄目…弱音をはいちゃ駄目…
七瀬奏叶に心を許してまた今までのように怖い思いはしたくない…

奏叶「…千菜…もう逃げなくていい
1人で抱え込まなくていい
千菜が恐れてる事にはきっとならないから…
約束する。俺は絶対に死なない
千菜の側に居るから…だから…俺と付き合って」

七瀬奏叶の真っ直ぐな言葉に我慢していた涙腺が緩んでしまった
私は初めて人前で涙を流した
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