君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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触れている所から伝わるのは人の温もり
だけど私は知ってる
この温もりがいつか冷たくなってしまう事を…
それがなにより怖い…!


千菜「……離して!これ以上私に関わらないでよ…!」


奏叶「いやだ、離さない」


何を考えてるの…!?
抱き締められている時間が長いほど私の中で恐怖は増していった

このままじゃ駄目…
私はもう大切な人をもう2度と…大好きな人を失いたくない…!!


千菜「…離して!!」


私は力一杯に七瀬奏叶を突き飛ばした
それがいけなかった…


――ガシャンッ…!


押し飛ばされてバランスを崩した七瀬奏叶はフェンスに頭をぶつけてそのまま倒れた…

フェンスにぶつかった音と倒れたその音だけが鮮明に聞こえた
自分でも何が起こったのか理解出来なかった

覚えているのは七瀬奏叶がフェンスにぶつかって倒れた事
倒れた七瀬奏叶は少しも動かない…

私はただ立たずむ事しか出来なかった
そして少しずつ状況が理解出来てきた



千菜「な…なせ…かなと…?」


なんで返事をしないの…


千菜「ぅそ…でしょ…?」


"湊「この人殺し!!」"



ドクンと胸が高鳴った
私はゆっくりと七瀬奏叶に近づいた


千菜「ねぇ…冗談でしょ…返事してよ…」


自分の中でどんどん鼓動が早くなるのが分かった…


千菜「七瀬奏叶…っねぇ…返事してってば…」


何度も何度も七瀬奏叶に声をかけた
涙が溢れる
どんどん怖くなる

今までの事が走馬灯のように頭の中で繰り返されどんどん不安が増えていく

人殺し…これじゃ本当に人殺しだよ…


千菜「いや…いやだよ…
お願いだから…七瀬奏叶…っ
ねぇったら……―――――…奏叶っ!!」


今までにないくらいの大きな声だった
それくらい必死だった…
ふと…私の頬に温かいものが触れた


千菜「………っ」



奏叶「――…初めて…俺の事呼んでくれた…千菜」


私に触れた手は温かく…
私の瞳に映った奏叶はいつものように優しく笑っていた


奏叶「いてて…俺、気絶してた?千菜…?」


ポロポロとさっきよりも涙が溢れる


千菜「……てた…生きてた…」


一瞬…本当に死んでしまったかと思った

私の涙をぬぐう温かい手
唯一私の事を名前で呼んでくれる
こんな私に変わらず笑いかけてくれる…


奏叶「千菜…ごめん。怖かったよね
大丈夫、俺ここに居るよ」



千菜「…ぅん……」



七瀬奏叶の言葉は何の根拠もないのに…どこか安心する…
本当に馬鹿みたい…
ここまで接してくれる人今まで居なかった



奏叶「俺さ…千菜に1つ話があるんだ」


急に真剣な顔つきをした奏叶
その表情になぜかドキドキした
だけど奏叶は言葉をつまらせた


奏叶「ただ…千菜がいいなら…
もしかしたら…嫌な気持ちになるかもしれないから…」


会った時からそうだった
七瀬奏叶はいつも私の事を考えて動いてくれてる…
それになんでかな
少し悲しそうな顔してるように私には見えた



千菜「……だ…ぃじょうぶ…」



初めて奏叶の事をちゃんと受け入れたと思う
奏叶のその悲しそうな表情に何の意味があるのか知りたいと思った


もう怖がらない
奏叶から逃げない


奏叶「ありがと…千菜」


少しはにかんだ笑顔を見せたと思ったら視線をそらして一呼吸おいて話始めた

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