君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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次の日の朝――…
昨日のどしゃ降りの雨が嘘のように、今日はどこまでも晴れ渡ってる
そんなに澄んだ空を眺めてから、私は部屋を出た


千菜「行ってくるねチョコ」


バタン…


奏叶「千菜、おはよう」


家を出るといつものように笑顔で奏叶が迎えてくれた


千菜「…おはよ」


奏叶「じゃ、行こっか」


奏叶は何も聞かないで、私を導いてくれるように先導してくれる
そんな奏叶の言動に安心感が募る
差し出された手に自分の手を重ねた


千菜「…奏叶付き合わせてごめんね…」


奏叶「いいよ。俺が勝手についてきたんだし
それに千菜が行くなら俺も行くよ」


奏叶と一緒に向かったのは学校
学校に入ると土曜日なのに沢山の生徒が居た


奏叶「休日まで部活かぁ。皆頑張るな」


そして学校に入って向かった場所


奏叶「保健室…」


昨日…お葬式で先生とお別れしたけど…
もう1度この場所で先生にさよならしようって決めた
先生との思い出が1番詰まってるこの場所で…

保健室のドアに手をかける
いつもは簡単に開けてた保健室のドア
だけど今は開けようとするとなぜか…体が震えてしまった


奏叶「千菜…大丈夫?」


私は勇気を出してドアを開けた

ガラッ…


――『お、東。どうした?』


いつも…ドアを開ければ笑って声をかけてくれた伊藤先生…
だけど今は誰もいない空っぽの保健室…
もう私を迎え入れてくれる人はここには居ない
改めて先生が居なくなってしまった実感が少しずつ突き刺さる
保健室に入って辺りを見回してみる

私にとって保健室は特別な場所だった…
学校に居場所の無かった私にとって唯一の拠り所だった
だけどそれは先生が居たから…

ここには先生との思い出が沢山詰まってる…
私は全部覚えてる
だけど…先生はもういない…
そう考えるとただ悲しかった


奏叶「千菜、こっち」


奏叶に呼ばれて先生がいつも仕事をしていた机の所に足を運んだ


千菜「なに…?」


奏叶「これ…」


奏叶が見ている方に視線を移す
机の上には私があげたお守りとメモが上がっていた


千菜「これ…」


私が作ったお守り…?
先生の病気が治るように…先生が死なないように願いを込めて作った…
なんで机の上に…

そしてお守りと一緒にあったメモにはただ一言


[ありがとう]


と汚い字で書かれていた
そのメモを見た途端、我慢していた物が吹き上がるような気持ちになった


千菜「どうゆうこと…?」


奏叶「……千菜に伝えたかったんだと思う
汚い字だな…これが教師の書く字かよ
…きっと千菜に伝えたくて、発作で苦しい中、必死で書いたんだろうな…」


胸も目頭も熱くなる
ポタリ…と静かに涙が溢れてこぼれていく


千菜「…先生……っ」


お守りとメモをギュッと握りしめて涙を流した


奏叶「千菜……」


千菜「…ぅ…奏叶…私は…私は先生を…助けてあげられたのかな…っ」


奏叶「…うん…大丈夫だよ
きっと伊藤にも伝わったよ」


私みたいな人が先生の為に何か出来たのかな…
先生が居なくなって凄く悲しくて寂しい
でも先生…私頑張るから
先生が私にしてくれたこと、言ってくれたこと、大切にする…
先生が信じてくれたんなら私も自分の事…少しずつ信じてみるよ…

だから心配しないで先生
私…ちゃんと前へ進むから…頑張るからね…
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