君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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ピピピピ…


千菜「36度5分…」


すっかり熱下がった
これなら明日から学校に行ける
不思議…学校に行けるのが少しでも楽しみだと思うなんて
今まで学校なんて憂鬱だっただけだけど…
奏叶と湊のお陰かな
静かだった私の周りが湊とも一緒に居るようになったらもっと賑やかになって…
奏叶と湊のじゃれ合いは見ていて少し楽しい


それにしてもこんなに早く風邪が治るなんて思ってなかった…
1人で暮らしてからは風邪なんて1週間は続くのに…奏叶がいたからかな…
朝、また来るって言ってたからもうそろそろ来るのかな…

ピーンポーン…

なんて考えてたら来たのかな
私は玄関のドアを開けた
そこにはやっぱり奏叶が居て…そして今日はもう1人…


千菜「湊も…」


湊「よ、なんだよ
思ったより元気そうじゃん
とりあえず上がらしてもらうな~」


奏叶「千菜どう?
見た感じ大丈夫そうだけど…」


千菜「うん、もう平気
熱も測ったら無かったし…」


奏叶「そっか良かった」


湊「なんだよ、見舞いに来た意味ねぇじゃん」


奏叶「湊の奴ずっと千菜の事心配してたんだよ
千菜が居ないと変な感じだって」


湊「かなてめぇっ…!何勝手に喋ってんだよ!
誰がこいつの心配なんか…」


湊は分かりやすい人だな…


千菜「2人ともありがとう…」


そう言うと奏叶は嬉しそうに
湊は少し照れ臭そうに返事をした


湊「さっ、せっかく見舞いに来たんだしまた料理でも作るか!昼はちゃんと食った?」


千菜「うん…奏叶が作ってくれたお粥があったから」


奏叶「全部食べてくれたんだ。ありがとう」


せっかく作ってくれたのに残したり捨てたりするわけないじゃん…


湊「んー粥だけかぁ…
少しはガッツリしたもんでも作るか~」


奏叶「千菜はまだ休んでてね」


そう言って2人一緒にご飯を作り始めた
湊も奏叶も当たり前のように心配してこんな風に私を助けてくれる
未だに信じられない
こんな風になるなんて本当に思わなかった

目を閉じるのは怖い
目を閉じればあの時の光景が鮮明にまぶたの裏に焼き付いて離れないから
でも…今は


湊「おい、出来たぞ」


奏叶「どうしたの千菜、具合悪くなった?」


目を閉じていても2人の呼ぶ声がハッキリ聞こえる
目を開ければそこに2人が居る
当たり前のような事にすごくホッとした


千菜「ううん…大丈夫。いい匂いする」


湊「おう、今日は風邪によく効く薬味うどん
これくらいなら食べられるだろ
あとかながスムージー作った」


湯気の立ついい匂いが漂ううどん
当たり前のように3人で机を囲んだ
湊の作ってくれたうどんを一口口に入れた


千菜「美味し…なんだかホカホカして暖かい」


湊「たぶん生姜のお陰だな
体が暖まるから風邪の時はいいんだ」


湊物知り…
それにやっぱり調理師とか向いてそう


千菜「ごちそうさまでした」


お腹いっぱい…
うどんなんて久しぶりに食べた
うどんもスムージーもすごく美味しかった


湊「うまかった~
かなのスムージーも中々いけたわ」


千菜「湊、奏叶ありがとう…」


湊・奏叶「どういたしまして」


食べ終わった食器を片付けようとすると奏叶が


奏叶「千菜は座ってて、俺がやるから」


千菜「え、でも…」


奏叶「いいから、ね?」


…どうやら私は奏叶の笑顔に弱い
奏叶は食器を下げてキッチンで洗ってくれてる


湊「たく、お節介なやつ」


湊は溜め息混じりでそう言った


湊「あいつ昔から世話好きなんだよ
俺が風邪引いた時も治るまで毎日来たし身の回りのこと全部やろうとするし
でもそんな世話好き奏叶くんの面白い話があんだけど、ほら写真」


湊がケータイを出して見せてくれたのが少し幼そうな可愛い女の子の写真


千菜「これは…?」


湊「聞いて驚くな?
中学の時に撮ったかなの女装写真♪」


え…これ奏叶?


奏叶「湊!!なに千菜に見せてんだよ!
てかその写真まだ持ってたのかよ!消せ!!」


キッチンから慌てた様子で出てきた奏叶は湊のケータイを奪おうと必死


湊「驚いただろ東。かなにこんな趣味があったなんて♪」


奏叶「なに言ってんだよ!
ちょっと待って千菜!誤解だから!
中学ん時無理矢理やらされただけで決してそんな趣味ないから!」


別に聞いてないのに慌てて説明する奏叶
そんな奏叶が珍しくて少し面白かった


千菜「すごく…可愛かったよ」


奏叶「………ッ!?」ガーン…


湊「はははは!!良かったな奏叶ちゃん!」


奏叶「お前のせいだろ!湊!」


ぎゃぁぎゃぁと喧嘩してるのか仲がいいのか…騒がしい…
いつも1人で静かな時間を過ごしてたけど…たまにはこんな騒がしい夜もいいのかな…
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