君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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長い1日が終わって放課後
教室で2人の掃除が終わるのを待ちながら外を眺めていた
眩しい太陽に澄んだ空
ゆっくり流れていく雲
毎日同じことが繰り返されただ時間が流れていく
それでも大切な人達が死んだ時の事は鮮明に覚えていてあの時から時間は止まっているみたいに感じる
思い出すのは辛い…
このまま穏やかに何もなく時間が過ぎていけばいいのに…

ガラッ

奏叶「千菜お待たせ!帰ろ?」

教室のドアを開けて2人が戻ってきた
今、付き合ってる奏叶とその友達の湊
今、私の側に居てくれるかけがえのない存在になった
でもいつかこの2人も…ってずっと消えない不安が私の中にある

千菜「うん」

3人で並んで帰り道を歩いていく
奏叶と湊が喋ったり笑っているととても安心する
何より奏叶と居るようになって奏叶の色んな顔が側で見られることが嬉しいと感じた
この時間がずっと続いてほしいと心から願った
でも私は気付かなかった
奏叶と湊が心の中にある想いを秘めていることに…

千菜「ここまででいい。送ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね」

湊「おう。また明日なー」

奏叶「千菜ちゃんとご飯食べるんだよ?」

湊「お節介。母親かよ」

奏叶「だって千菜って自分の事はいい加減だから。これでも心配してるんだよ」

千菜「…ちゃんと食べる」

私が約束すると奏叶は笑った

奏叶「うん。またね千菜」

私は2人の影が見えなくなるまで見送った
少しずつ遠退いていく奏叶の姿を見ていると寂しく感じた
何故か今日はまだ側に居て欲しかった
でもそんな事言って奏叶を困らせたくない
でも…でも…なんで今日はこんなに不安なんだろう…

ーー…今日かなが東と3人で一緒に帰ろうと誘ってきた
でも正直俺、邪魔者じゃん?
それに東の事が好きだと気づいてからはなんとなくかなと東が一緒に居るところをあまり見たくないと思ったから断ろうと思った

湊「俺はいいよ。邪魔者じゃん?」

奏叶「そんな事ないし、湊がいる方が千菜も楽しそうだしさ。それにお前に聞きたいこともあるからさ」

湊「聞きたいこと?」

奏叶「うん…まぁここじゃあれだしさ。約束な。勝手に先に帰るなよ!」

改めて聞きたいことってなんだ…?
それにかなの様子いつもと違うような…いやでも普通に笑ってたし俺の気のせいか
にしても…俺が叶わない片想いとか似合わない
早くこの気持ちにケリつけないとかなに変な罪悪感がわくな…
そして帰り道…
東は口数は相変わらず少ないが時々少し笑うようになった
そして別にかなも普通だった
母親かってくらいお節介で東の事心配してるかなの様子を見ていて本当に東の事が好きで大事にしてんだなって思った
他の奴だったらどうなってたか分からないけど相手がかなだったらきっと東を幸せにしてくれると俺は信じていた
だから時間が経てば俺のこの気持ちも消えていくんだろうと思ってた
でもこの後、俺も予想できなかったかなの一言が今の俺達の関係を壊すとは思ってなかったんだ
東を家に送り届けた後かなと下らない話をしながら歩いていた
でも東と別れてから急にかなの口数が減ったことに気づいた

湊「かな?聞いてんのか?」

奏叶「あ、ごめん…聞いてなかった」

湊「何ボーッとしてんだよ」

奏叶「…俺、湊に聞きたいことがあるんだ」

湊「あぁ、そういえばそんな事言ってたな。なんだよ聞きたいことって」

奏叶「湊、千菜の事好きだろ」

かなの予想外な言葉に動いていた足がピタリと止まった
そんな事を言われるとは思ってなかった
ましてやかながそんな事に気付いているとは思わなかった
確かに東の事は好きだ
でもそんな事かなには言えるわけない

湊「は?急に何言い出すのかと思ったら…俺が東を好きなわけないじゃん。かなの考えすぎだろ」

誤魔化すしかなかった
東がかなの事思ってるのも知ってたし、何よりかながどんなにあいつの事好きか側に居た俺が一番知ってる
苦しくても辛くても俺のこの気持ちはしまっておかなきゃいかないんだ
何よりかなも東も2人が幸せなら俺はそれで充分だって本気で思ってたんだ

奏叶「嘘つくなよ。お前が嘘ついてる事くらい俺には分かる」

湊「嘘なんかついてねぇよ。もうこんな話終わり」

奏叶「正直に言えよ。千菜の事どう思ってる」

湊「――…仮に好きだって言ったら、かなはどうすんだよ」

しんとした空気が流れた
冗談だよって笑って誤魔化そうかと思った
でもかなは予想外な言葉を俺にかけてきた

奏叶「…そっか…安心した。お前になら安心して千菜の事任せられる。千菜の事よろしくな」

はにかんだ笑みを浮かべてかなはそう言った
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