君が嫌いで…好きでした。

秋月

文字の大きさ
上 下
58 / 83

君が嫌いで好きでした。

しおりを挟む
凜「千菜ちゃん?」

淡い空の下でピンク色の桜がちらちらと風に流れて舞っていく
ベンチに座っている私とその人の間にはきっと懐かしい風が吹いた

千菜「…凜ちゃん」

私が名前を呼ぶと凜ちゃんは笑って近づいてきた

凜「やっぱり千菜ちゃん!?そうかなぁって思ったんだけど変わってないね。元気だった?」

千菜「…うん」

正直動揺してる…
まさかこんな所で凜ちゃんと会うなんて…
だって凜ちゃんと最後に会ったのは…

凜「最後に会ったのはあの時以来だもんね…
ずっと千菜ちゃんの事が気掛かりだったんだ
千菜ちゃんの噂は俺の所まで届いていたから…あの日から千菜ちゃんと会うことは無くなったしどうしているのかずっと心配だったんだ」

凜ちゃんの所まで噂が届いていたんだ…
でもどうして今なの?
辛くて悲しかった気持ちがどんどん出てきそうで…ヒラヒラ舞うピンク色の桜も私には赤く見えてしまう…

―…その頃の奏叶と湊

湊「それにしてもデートくらいで珍しくはしゃいでるじゃん?
店に歴史、イベント…下調べバッチリ。お前は観光ガイドか」

奏叶「うるさいなぁ…いいだろ別に」

湊「何照れてんだよ」

奏叶「うるさい…でも千菜楽しんでるみたいで良かった。最初ちょっと上の空ぽかったからさ」

湊「かなが一緒だからだろ」

奏叶「お前もな湊」

湊「あれ、千菜の奴知らない男といるぞ」

奏叶「は?何言ってんの」

湊「いや、本当に。見ろよ」

奏叶「…本当だ」

湊「…なんか絡まれてるぽくねぇ?」

奏叶「行こう湊!」

湊「おう」

―…千菜「大丈夫…凜ちゃんが心配する事ないよ…」

凜ちゃんに余計な心配はかけたくない…

凜「千菜ちゃん…」

奏叶「この子に何か用ですか?」

千菜「奏叶…湊…」

私を守るように前に立って2人は凜ちゃんを睨んだ

凜「びっくりした…」

湊「ナンパなら他当たってください」

奏叶「この子は俺達の連れですから」

千菜「奏叶、湊待って…違うの」

凜「ははは。思いっきり警戒されちゃったなぁ
千菜ちゃんこの2人は?」

奏叶「え?千菜知り合いなの?」

湊「どうゆうことだよ」

千菜「…高梨凜たかなしりん
私の…亡くなった兄の友達…」

奏叶「え!?」

凜「初めまして」

千菜「凜ちゃんこの人は湊…友達…
そしてこっちが奏叶。私の…今付き合ってる人…」

改めて奏叶の事を彼氏だと紹介するのは何だか少し照れる…
そして2人に凜ちゃんの事を紹介するのはどこか複雑な気持ちだった

奏叶「お兄さんの友達…?」

湊「なんだよ。ナンパ扱いして悪かったな」

凜「いや、そう見られても仕方ないよ
改めて千菜ちゃんの兄、楓と友達だった高梨凜です
千菜ちゃんとは楓と一緒によく遊んだよね」

千菜「…そう…だね…」

過去の記憶…
思い出される楓の笑顔が今は悲しく感じた

凜「あ、もしかして今日は3人でお墓参り来たの?」

凜ちゃんの一言に胸がどくんと鳴りそして奏叶達から顔を背けた

奏叶「お墓参り…?」

凜「あれ、違うの?今千菜ちゃんがここに居るって事は今日が楓の命日だからてっきりそうなのかと…毎年欠かさず来てるんでしょ?」

奏叶「そうなの?千菜…」

私に問いかける奏叶に私は何も言えなかった
凜ちゃんの言う通り…今日は楓の命日
毎年この日はここにお墓参りに来ていた
でも今年は……

凜「え…もしかして違った?」

湊「今日は花見に来たんだ
俺達はそんな事何も知らなかった」

凜「え…」

奏叶「千菜答えて」

千菜「……」

奏叶「千菜!」

…これ以上黙っててもしょうがない
もう奏叶に知られてしまった

千菜「そうだよ…凜ちゃんの言った通り…」

そう伝えると奏叶は黙り混んでしまった

千菜「奏叶…?」

奏叶はきっといつもみたいに受け入れてくれるとどこかで思っていた
だけどそれは私の甘い考えだった

奏叶「…どうしてそんな大事な事、黙ってたの?」

いつもと違う少し低い声が怒ってる様に聞こえる
それでも私は黙ることしか出来なかった

奏叶「…俺、千菜が何考えてるか分からないよ…」

奏叶は寂しそうな表情で立ち去ろうとした
その奏叶の思いがけない行動に私も思わず体が動いた

千菜「奏叶…?待って、どこ行くの?」

奏叶「着いてこないで。今はちょっと1人にしてほしい」

冷たい奏叶の言葉に私はすくんで動けなくなった
そして奏叶はそのまま行ってしまった

湊「…千菜はかなが何でも分かってくれるって思ってんの?
俺、前に言ったよな。かなを傷つけるのは許さねぇって。
かなの気持ちちゃんと考えてやれよ
おい、あんた」

凜「俺の事?」

湊「俺はあいつ追いかける
だから千菜と一緒に居て貰てぇんだけど」

凜「それは構わないけど…」

湊「じゃ、よろしく。くれぐれもそいつに手ぇ出すなよ」

凜「肝に命じとくよ」

湊はそのまま奏叶の事を追いかけていった
残った私達は近くのベンチに腰掛けた
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

後妻業じゃないの?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

さよならが来るまでに

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

国立魔法大学の革命児〜異世界より来たりた救世主

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:28

料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:2,491

処理中です...