君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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凜「はい、千菜ちゃん」

温かい飲み物を差し出してベンチに座っている私の隣に凜ちゃんは腰掛けた

凜「千菜ちゃん昔からココア好きだったでしょ
楓も好きだったよね」

千菜「うん…」

奏叶怒ってた…
奏叶のあんな顔見たことない
いつも奏叶は笑いかけてくれていたから…

凜「…ごめんね千菜ちゃん」

千菜「え?」

凜「俺が余計な事行ったせいで彼、怒らせちゃったみたいで」

千菜「ううん…凜ちゃんのせいじゃないよ
私も言わなかったから楓の事…奏叶が怒るのも無理ないの
私が悪いんだから…」

奏叶を怒らせて湊の信用まで失ってしまった…
あの優しい2人を私は傷つけてしまった

千菜「…こんなことなら1人で居た方が良かったのかもしれない」

凜「…千菜ちゃん少し変わった?」

一方その頃の奏叶達は…

湊「待てよかな!たく…足早いんだよ」

奏叶「…千菜は?」

湊「あいつに任せてる。たく…珍しく怒ったな
千菜も心配そうな顔してたぞ。まぁ…当然か」

奏叶「…湊、俺って信用できない?」

湊「俺は信用してるけど?でもそんなの本人にしか分からないだろ」

奏叶「そうだけど…お兄さんの命日なんて…それに毎年墓参りに来てたなんて…なんでそんな大事な事黙って…」

湊「…それも千菜にしか分からないだろ
幻滅したなら別れれば?」

奏叶「…ただ俺は千菜の彼氏なのに千菜の事何も知らない
千菜が俺の事頼ってくれないのは俺が頼りないからかな…なんか悔しいよ」

湊「…はぁ…結局はかなは千菜が好きなんだろ
俺から言わせたらお前ら変な距離感ありすぎ
互いに互いの事考えてそれなのに言葉にすることが少ないんだよ
ここでゴタゴタ考えてる暇あんなら真っ正面からぶつかってとことん話し合えば?」

奏叶「…千菜は俺の事どう思ってんのかな」

湊「俺が知るか。自分で聞いてこいよ
ぶつかり合ってそれで別れるようならお前らはそこまでの関係だったって事だ
でもお前が折れてまた千菜を甘やかすような事になったらお前らは付き合わない方が互いの為だろ
ケンカしてぶつかり合ってそれを乗り越えたらそれが結果だ
お前らはこのままじゃ駄目なんだよ
ほら行くぞ。かなの思ってる事ちゃんと千菜にぶつけてこいよ」

湊は奏叶の手を引っ張り千菜の所に戻り始めた

凜「千菜ちゃん…少し変わった?」

千菜「…暗くなったでしょ」

凜「そうじゃないよ。良い意味で」

千菜「…どうゆうこと?」

凜「千菜ちゃんが楓の命日を伝えなかったのは何か理由があるの?」

千菜「…奏叶が楽しみにしてるみたいだったから…言って台無しにしたくなかった」

凜「…大事な人なんだね彼」

千菜「…私なんかを好きだって言ってくれた奏叶だから…でももう嫌われたかもしれない…」

凜「僕には彼がそんな人には見えなかった
それにまだ彼の事よく知らないけど千菜ちゃんの事大事にしてるのがよく分かるよ
そんな人が嫌いになるわけないよ」

千菜「凜ちゃん…?」

凜「お互い大事に思ってるから言わないことが沢山あるのかもしれないよ
怖いから不安だからって逃げてちゃ何も変わらない
千菜ちゃんはもっと自分の気持ちを素直に伝えた方が良いと思うよ
そうすればきっと今までと違う何かが見えてくるはずだから」

千菜「私の気持ち…」

凜「誰だって何でも分かってくれる訳じゃないよ
言わなきゃ伝わらない事だって沢山ある
だから人は人と繋がっていくんだよ」

私が奏叶に伝えたいこと…
私はどこかで…奏叶に甘えていたのかもしれない
奏叶なら言わなくても分かってくれているんだろうと…

千菜「……」

凜「あ、どうやら戻ってきたみたいだね
なら僕はそろそろ行くよ。後は千菜ちゃん達次第だよ」

千菜「凜ちゃん…」

凜「あ、それからこれ僕の名刺」

凜ちゃんがくれた名刺には美容院"silk"の文字

凜「美容師なんだ。仲直りしたらおいでよ
サービスするからさ」

千菜「…ありがとう凜ちゃん」

湊「…手出さなかっただろうな」

凜「もちろん。奏叶くん…だっけ?千菜ちゃんの事よろしくね」

そして凜ちゃんは帰っていった
奏叶は湊と一緒に戻ってきてくれたけど私と目を合わせようとしなかった

それが拒絶されてるみたいで怖くて悲しかったけど…優しい奏叶をそんな風にさせてしまったのは私自身…
奏叶はいつも私の気持ちを察して動いてくれてた
だから奏叶なら分かってくれるだろうと奏叶に甘えて何も言わなかった
それが私の大きな間違いだったのかもしれない…

千菜「奏叶…」

奏叶は顔をそらしたまま何も言わない
私はそれだけの間違いをしてしまったのだと遅れて痛感する

千菜「奏叶…ごめんなさい…楓の事言わなくて…」

奏叶「…なんで黙ってたの」

奏叶のいつもより少し低い声に心がギュッとなる

千菜「…隠そうと思った訳じゃないの
言おうと思ったけど…でも今日の事、奏叶すごく楽しみにしてるみたいだったから…
言って台無しにしたくなかった…」

奏叶「…墓参りはどうするつもりだった?」

千菜「また明日改めて来ようかと…」

奏叶「はぁ…」

溜め息…幻滅されちゃったのかな…

千菜「…私、凜ちゃんが言ってた通りこの日は必ず楓のお墓参りに来てた
でもそれは私が1人ぼっちだったから…
今年は奏叶が一緒だった
楓の事も凄く大事…でもそれ以上に私は奏叶が大事だったの」

自分の気持ちを伝えようとすると自然と涙が溢れてきた
でもちゃんと伝えなきゃいけないから…
奏叶に私の気持ちを私の言葉で…

千菜「…私…奏叶が好き…自分でもビックリするくらい好き
私だって今日の事楽しみだったし楽しかった…でもそれは奏叶が居てくれたから…!
…楓の事を黙ってたのは本当に悪かったと思ってる…嫌われて当然だと思う…
だから…奏叶が別れようって言うなら私はそれを受け入れ…」

私は気がつけば奏叶の腕の中に居た
そして力強く抱き締めてくれた

奏叶「…千菜の気持ちは分かったし、俺も少し大人げなかった
でもやっぱりそうゆう大事な事黙ってられるのは嫌だ
俺達付き合ってるんでしょ?千菜はいつも1人で抱え込みすぎなんだよ。もっと俺の事頼って」

千菜「奏叶…」

奏叶「あとそう簡単に別れるとか言わないで
俺はそんな事思ってないし…」

千菜「…うん」

奏叶「…俺達はさ、もっと言葉にしないと駄目だね
それで喧嘩になっても2人でぶつかり合って乗り越えていこう?ね、千菜」

覗き込んできた奏叶の顔はいつものように優しく笑っていた

千菜「…ありがとう…奏叶」

湊「無事仲直りか。良かったな2人共」

奏叶「湊ありがとな。てゆーかこれ喧嘩なのかな?」

湊「さぁ?でも一歩前進じゃね?」

千菜「湊…約束破ってごめん…でもチャンスがあるなら私頑張るから…」

湊「…お前にしちゃ上出来じゃん?
てかいつまで抱き合ってるつもり?
ここ一応公共の場だから」

湊に言われハッと我に返って慌てて離れた
夢中になっててそんな事すっかり忘れてた
恥ずかしくて顔が熱い…

湊「2人して顔真っ赤かよ。勢いって怖いわ~」

奏叶「…うるせぇよ。てか知ってなら早く言えよ」

湊「いや、面白そうだから黙ってた」

奏叶「~…っいい性格してるよなお前」

湊「誉め言葉として受け取っておく♪」

奏叶「…千菜、行こうか」

熱くなった顔を必死で冷ましてると奏叶がまだ少し赤い顔で手を差し出してきた

千菜「行くってどこに…」

湊「決まってんだろ」

奏叶「楓さんの墓参り!行くよ!」

そう笑って奏叶は私の手を引いて歩き出した

千菜「奏叶…」

奏叶「ん?」

千菜「お墓…反対方向…」

奏叶「え!?」

湊「ははは!かっこつかねぇなかな!」

奏叶「笑うなよ!」

方向を変えてまた歩き出す私達
あぁ…今年はなんて綺麗で輝いてる景色だろう…
奏叶…ありがとう
そう心の中で呟いた
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