君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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公園のベンチに座って湊を待つ
電話を貰ってから待ってる間ずっと震えが止まらない
さっきまで晴れ晴れして見えていた景色がよどんで見える
周りの声も音も何も聞こえない
奏叶が事故にあった…?
その言葉が頭から離れなかった

湊「千菜!」

向こうから走ってくる湊に飛びつかずにはいられなかった

千菜「湊!奏叶が事故にあったってどうゆうこと!?」

きっと今までにないくらい取り乱していた
でも早く聞きたかった
大した怪我じゃないって大丈夫だって笑って欲しかった
だけど思っていた言葉は帰ってこなかった

湊「俺だって分かんねぇよ…!
とにかく今は病院に行くぞ!」

いつも冷静な湊の表情が今までにないくらい焦っていたから…私の不安は一気に広がった
湊に手を引かれ、奏叶の運ばれた病院まで無我夢中で走った
昨日は少しバスケをしただけで疲れたのに、どんなに走っても疲れても転んでもその足を止めることは出来なかった
呼吸が上がる。息が苦しい
辿り着いたのはこの間、凜ちゃんが運ばれた病院
中に入ると沢山の人が居て病院独特の匂いがした
必死に奏叶の姿を探す
ここに来る間も希望は捨てなかった
凜ちゃんの時みたいになんともない顔して出てきてくれるんじゃないかって
だって奏叶は約束してくれた
奏叶は死なないって…私の側に居てくれるって…約束してくれたもの
だから死ぬはずなんてないの
どこからかひょっこり出てきて私の名前を呼んで優しく笑いかけてくれるはずだから
今までずっとそうだったんだから…
だけどいくら探しても奏叶の姿はなく、湊が受付の人に聞くとある部屋に案内された
ドアを挟んだ向こうに奏叶は居る
震える手にぎゅっと力を入れる
大丈夫。奏叶はきっと大丈夫だから…

湊がドアに手をかけて部屋に入る
そして私の淡い希望なんて簡単に打ち砕かれ絶望と言う闇へと引きずり落とされた
湊も言葉がでない
まるで心臓を捕まれたように苦しくて息が上手く出来ない
そこにはベットに寝ている変わり果てた奏叶の姿があったのだから
病院の消毒の匂いに混ざる微かな血の匂い
奏叶の体のあちこちに無数の痛々しい傷痕
機械に繋がれて眠っているように目を閉じている奏叶…
機械の音だけが鮮明に聞こえた
湊は震える声で奏叶の名前を呼ぶ
だけど奏叶に反応はない
意識が戻らないんだ…
これだけの大怪我、どんなに酷い事故にあったのか嫌と言うくらい想像がつく
このままじゃ奏叶は…死んでしまう
また…私の前からいなくなってしまう…
奏叶のベットの横で湊は泣き崩れている
あぁ…結局私はまた間違ってしまった
私のせいで今、奏叶は生死をさ迷ってる
震えが止まらない体
ふらつく足を動かし私は病室を出た

震えが止まらない
フラフラする
意識もどこかに飛んでいるみたいに何も考えられない
お父さん…お母さん…おじいちゃん…おばちゃん…楓…真琴…伊藤先生…チョコ…
私の周りでどれだけの人が死んだ?
信じていたのに…伊藤先生だって違う未来が待ってるって言ってくれたのに…
今の貴方は私に笑いかけるどころかその瞳に映ることも出来ない
ふらつく足で壁にぶつかりながら階段を上っていく
なんでかな…奏叶との思い出ばかり思い出す
奏叶が死んでしまえばまた全てが思い出になってしまう
そんなの耐えられない
辿り着いた屋上のドアを開けると強い風が吹いた

千菜「奏叶…」

涙が止まらない
涙が風に流れて頬を伝う
奏叶はまだ死んでない
奏叶だけは死なせたくない
私を暗闇から連れ出して私なんかを好きだと言ってくれた優しい人なの
だから神様、どうか―…

―奏叶の病室

湊「千菜…?」

気付いたら入り口に居たはずの千菜の姿がなかった
どこに行った…?
俺ですら取り乱したんだ
あいつが耐えられるわけがねぇ
どこがで泣いているはず…
なんでだ…なんでこんなに引っ掛かる
千菜が居ないことが…凄く…嫌な予感がする
本当に何処に行った?

湊「千菜…!!」

俺は病室を飛び出して千菜を探す
廊下には居ねぇ…どこ行った!
俺があいつだったら何考える?

湊「まさかあいつ…!?」

俺は急いで階段をかけ上がった

―…屋上の淵に立つとさっきよりも風を強く感じた
私のせいで奏叶まで死なせない
奏叶だけは助けたい
神様…居るならどうか奏叶を助けて
私が代わりに死ぬから…奏叶を連れていかないで…

千菜「…奏叶…どうか生きて…」

バンっ…!
屋上のドアを開けた湊の目に映ったのは…屋上から身を投げ出した千菜の後ろ姿だった

湊「…っ千菜ぁ!!!」

湊の声は空に吸い込まれ、千菜はそのまま屋上から姿を消した…
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