君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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奏叶と一緒に居たい
だから生きたい
飛び降りた時、後ろから湊の声も聞こえた
きっと心配してる
湊にも会いたい
凜ちゃんにも鈴村先生にも…会いたい人が沢山いる
ここに来て気づくなんて私の方が馬鹿だったね奏叶

楓「…決まりだな」

花畑が光りだし、光の玉が空に登っていく
その光景はキラキラしていてとても綺麗だった

千菜「なに…っ?」

楓「この世界が千菜がここに居るべき人間じゃないって判断して拒絶し始めたんだ
大丈夫。怖いことなんて何もないよ」

千菜「ここでお別れなの…!?やっと会えたのに…!」

楓「2度と会えない訳じゃないよ
また会える日が来る。それは今じゃないけどな」

涙が溢れた
楓達は死んでもなお私の為に道標を作ってくれた
ありがとうって言いたいのに…他にも沢山言いたいのに上手く言葉が出てこない
もっと皆の顔を見たいのに…涙で何も見えない
そして気付けば皆が境界線を越えて私の側に寄り添ってくれていた

祖父「どうしたんじゃ千菜?腹でも痛いんか?」

おじいちゃん…

祖母「そんなわけないでしょう?ねぇ千菜ちゃん」

おばあちゃん…

母「千菜、野菜ジュースだけじゃなくてお肉やお魚もしっかり食べなさい?
あと、ちゃんとベットで寝ること
体…壊さないようにね」

お母さん…

父「勉強もしっかりするんだぞ」

お父さん…

楓「千菜オルゴール大事にしてくれてありがとう
辛いことがこれからも先、沢山あると思うけどお前は1人じゃない
いつも俺達皆が見守ってること忘れるなよ」

楓は生きていた頃のように私の頭を優しく撫でてくれた
あの頃と変わらない大好きなお兄ちゃんの手

伊藤「あと少ししか生きられないって言われてたのに俺、東と出逢って大きな苦しみを背負ってるお前をほっとけないと思った
教師らしくお前を助けたかったんだ
…東のお守り嬉しかった
お守りが俺を守ってくれたんだ
俺がここまで生きられたのは東のおかげだよ
本当に感謝してる。ありがとう
お前達のお陰で先生業も中々楽しかったよ」

伊藤先生…

そして真琴はそっと私を抱き締めてくれた
夢現ゆめうつつのような世界なのに真琴の温もりを感じて嬉しかった
分かっているのにこれでお別れなんて寂しい
だけど言葉が出てこない…

真琴「千菜…あの時の約束守れなくてごめん
苦しい思いもさせてごめん
だけど千菜のせいじゃないんだ
俺達全員千菜には感謝してる
だからもう自分を責めることなんてないから
千菜、俺の…俺達の分まで生きて
あいつと一緒に
本音を言うと俺がそうしてあげたかったけど」

離れた真琴は笑ったけど微かに潤んでいた
皆…私が思ってたように皆もずっと私のこと思っててくれたんだ
私の為に笑ってくれるんだね…

楓「そろそろお別れだ
千菜笑って生きて
俺達は皆千菜の笑顔が好きなんだ
じゃぁな千菜。またいつかここに来たら向こうでの土産話沢山聞かせてくれよ」

千菜「楓…!皆…!」

やっと言葉が出てきたと思ったら辺り1面眩しいくらいの光に包まれていった
光に包まれ意識が薄れていくなかで私は何度も心の中でありがとうと大好きを繰り返した

ー…失ったものはあまりにも大きい
だけどその分、心に残っているものも大きいのだと気づく
悩んで泣いて苦しくて辛くて…
だけど太陽のように私を優しく暖かく包んでくれる皆が本当に大好きだよ
奏叶…会って伝えたい
貴方が私にくれた大きな奇跡を、かけがえのない時間を
だから…再会できたら私と一緒に生きて…

―…意識が遠退いたと思ったら遠くで何かの話し声や音がする
そして…何だか優しい暖かさを感じる
ここはどこだろう…
ゆっくりと目を開けるととても眩しく感じた
眩しすぎてここがどこなのかよく分からない
それになんでかな…体が上手く動かせない
眩しさに慣れるとようやく目を開けることができた
白い天井…眩しく感じたのは蛍光灯の光だったんだ…
それにこの独特の匂い…それに継続的に鳴る機械音
ここは病院…?
って事は私は生きてるんだ…
この場所に戻ってこれたんだ…

「……千菜…?」

聞き覚えのある懐かしい…私の大好きな人の声
今にも泣きそうな顔で私の顔を除き混んできた
伊藤先生の言ってた通りだね…
違う未来が待ってたみたい

奏叶「良かった…!千菜…!」

ついには泣き出した奏叶
ずっと手を握っててくれたの…?
ごめんね…握り返してあげたいのに体に力が入らない
奏叶って呼びたいのに声もでない
だけど少し笑うことが出来た
私が笑うと奏叶もつられたように泣きながら笑った
私の目からも涙が溢れた
奏叶が生きていてくれて良かった…
奏叶ともう一度会うことが出来て本当に良かった…

先生「奇跡としか言えません
意識が戻る可能性の方が少なかった…
きっと神様が守ってくれたんですね」

病院の先生はそう言った
どうやら私は1週間も意識が戻らなかったらしい
そして湊や凜ちゃん、鈴村先生がお見舞いに来てくれて聞いた話だと、私が屋上から飛び降りて運ばれた数時間後に奏叶の意識が戻ったらしい
意識が戻って私の事を聞いた時、酷く自分を責めたって…傷だらけの体を無理に動かしてずっと私の側に居てくれたって…
看護師さんはそれが奇跡を起こしてくれたんだって笑って言った
湊にはこっぴどく怒られてしまった
酷く心配さてしまったようで怒っていたかと思ったら急に泣き出して私の無事を喜んでくれた
色んな人に心配かけて迷惑かけてしまった
私が今出来るのは…この人達の為に一生懸命生きることだと思う
手に暖かい感触を感じる
大好きな奏叶の手だ…

奏叶「おかえり千菜」

"ただいま…"

上手く喋れなくて口がパクパク動くだけだけと…奏叶には私の声が届いたのか優しく笑った
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