魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。(趣味用)

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【 過 去 】

エルディアブロ(1)

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 真っ白な光が射し込んで俺は緑生い茂る世界に踏み入った。

 あたりはやたらと眩しくて訳もわからず地面に尻をついて呆けていた。すると急に視界に影がかかり頭上から声がする。

『おやおやこの子は……せっかちな子ですね、眩しいですか?』

 顔を上げると何かが光を遮るように俺の頭の上にくる。

『産まれたばかりですので驚くのも無理ありません』

 その者は俺を見ながら淡々と言う。真っ白なその出で立ちは光よりも眩しくキラキラと光っていた。

『だれ、おまえ』

 するとそいつは少し眼を見開いて

『これは驚いた、既に言葉を知ってるんですか』

 すると急に身体が持ち上がった。気付くとその真っ白な出で立ちの者が俺をその腕に抱いている。
 顔を上げると紫色の瞳と眼があった。

わたくしはハクイと言います』

 そのまま目尻を下げて微笑み

『貴方はわたくしが――――』

 その続きはなんと言ってたかよく覚えていない。





「――エル、エルディアブロ」

 あれから俺は魔王の城と言う所へ連れてかれた。
 城での生活は退屈で森でテキトーに暇を潰していると俺を呼ぶ男の声がする。その声は少し呆れた口調で「全くあの子ときたら」とため息をついた。
 奴が近くまで来ていると知り、俺はあえてその声から遠ざかった。

「――まさか戻って来ているとは……エル」

 森から離れて俺は奴の部屋で暇潰しをしていた。やたら綺麗に棚に陳列された本を全て取っ払ってみたり破いて床に散乱してみたり、机の中の物も全部ひっくり返した。
 いいだけぐちゃぐちゃにした部屋の真ん中で、まだまだ足りないとこのモヤモヤした気分を持て余していたら奴が丁度部屋に戻って、一瞬眼を見開いたあとやはり一瞬眉を潜めて、更に一瞬疲れた顔をしたあと何時もの冷たい表情でこっちに淡々と語りかける。

「エルディアブロ、どうしてこんな事をするんです?」

 コイツはいつもこんな感じに冷たい表情で淡々とものを言う、一日中ずっと見ててもあまり表情が変わらない。たまに変わる時があるとすると怒った時に一瞬で消える表情の変化ぐらい。なのにあの魔王の前にいる時はいつもより表情が豊かになって、俺はそれを見るたびイライラしてしょうがなかった。それでなくても忙しい忙しいと姿を消して、その間俺はやることもなく暇をもて余す。
 だから遊びに出れば今度は何処に行っていたと怒られ、遅くなればもっと早く帰って来いと口煩い。
 そして暇だから部屋で遊んでいれば散らかすなと怒られる。なんなんだコイツは本当にいちいちうるさい目障りだ。
 俺は側にあったコップを至近距離で投げつけた。それは奴に当たり床に落ちた。その瞬間高い音をあげて割れ四方に飛び散る。飛び散った破片は身長的に床に近い俺の方にまで飛んで来た。

「エル!」

 奴が少し慌て俺の服についた破片を払う。

「……エル、今お前がわたくしに投げ付けたこれは硝子で出来たグラスです。硝子は今みたいに壊れやすい物なんですよ。割れた硝子は手足を傷付ける事もある。危ないんです。眼や口に入ればもっと痛くて大変です」

 奴はしゃがんで俺の両腕を掴み、言って聞かせるように眼を合わせながら真剣に言う。俺はというとコップが壊れるとは思っていなかったので驚いて呆けていた。

「エル? 何処か痛みませんか? 眼に違和感は?」

 ハッとして頬に触れそうだった手を跳ねのけた。
 けれどハクイは気にした様子もなく俺の身体を持ち上げて「とりあえず服を着替えましょう」と隣の部屋へ移動する。

 着替えた服は真新しく清潔感のある装いだ。

「サイズぴったりですね。作らせたかいがあります良く似合っていますよ」

 そいつが着ている服と同じ、肌触りの良い真っ白な装い。だが俺はそれが妙に気に食わない。
 服の袖を破いてやろうと引っ張ったがしっかりとした生地のせいか簡単には破けなかった。

「エル」

 俺の行動がバレたらしくそいつは少し怖い顔で俺の腕をとった。

「本当に、どうしてそうなんでもかんでも反発するのか……この子は」

 ため息をついて

「エル良くみていてください」

 また俺を抱き上げる。

「おろせ!」
「いいから大人しく見てなさい」

 そいつの手がポンッと頭に触れると俺の身体は動かなくなった。

「おい!っっ……!?」

 そして急に声もだせなくなったのだから心の中で「このやろハクイ!」と悪態をつくしかない。

 ハクイはやれやれと俺を片腕に抱いたまま隣の部屋へと戻り、割れた硝子を片付け始めた。

「いいですかエル、硝子は危ないので素足で床を歩いて片付けないでください。さて、ではまず大きい物から集めましょう」

 途中で片腕だとやりづらいと俺を背負いだした。その時には俺も抵抗する気が失せていたので動かせるようになった手足を使いその背にしがみつく。本当は翼を使って飛んでいれば良かったがその時は何故かその気にならなかった。

 落とさないように少し屈んだハクイが片手に箒を片手にチリトリを持って更に屈んで細かい硝子の破片をだまだまと片付ける。

「これでいいですね。さぁ今度はこの部屋の惨状をなんとかしますよ」

 硝子を片付け終わるとハクイは俺を床におろしてそう言った。

「遊び終わったら片付ける。でないとほら、足の踏み場もありませんし物に躓きやすいでしょう。躓きやすいと言う事は転びやすいし転びやすいと言う事は危ないですし、転んだ先に固い物があったらぶつかって痛い。脆い物があったら壊してしまう。それにこれでは何処にお目当ての物があるか分からない。大変困ります」

 腰に手をあてつらつらと並べ立てる。

「つまりはとても生活しずらく不便と言うことです。見た目にも落ち着かないでしょう」

 では始めますよとハクイは床に転がった物を拾いだした。

「何をしてるんですエル、お前もやるんですよ。出した物は元の場所へ戻せばいいんです。こうやって」

 そう言って手に取った本を元の棚へと戻していく。

「場所が分からなければ言いなさい教えて差し上げますから、それと破いた本の紙は全て集めなさい……あぁそうだお前にはそれをやって貰いましょう」

 側にある籠に全て集めるよう言われた、集めてどうするのかと聞くと修復するのだと。

 するとコンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「今そちらまで行けませんのでどうぞ入ってください」


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