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「色々ありましたけど、なんとか無事に終わって良かったですわね」
「――ああ、そうだね」
パーティーが終わって、馬車の中。
私とシリウス様は向かい合って座り、帰途についていた。
数ヶ月振りに踊ったダンスは、思いの外楽しいものだった。
痩せて身体が軽くなると、ステップもあんなに軽やかに踏めるものなのだろうか。
おまけに相手がシリウス様なのだ。見つめ合いながら踊ったあの一時は、今思い返してもまるで夢のようだった。
そして、一曲踊り終わって一息ついた瞬間から、私たちは多くの人々に囲まれた。
「私、今までアンジェラ様のこと誤解しておりましたわ、ごめんなさい。本当は王子のためにわざとあのような姿でいらしたのね。……あの、ところで、あの状態からどうやってそこまでお痩せになったのかしら?」
女性陣は顔を合わせるなり口々に謝罪してくださったけれど、一番聞きたいのはおそらく台詞の後半部分だろう。
毎日吐きそうになるまで食べていた食事を健康的なものに戻して、ひたすら庭を散歩しただけだと伝えると、皆一様にがっかりした顔をしてその場を離れていった。本当のことなのに。
そして、男性陣はというと。
「王子と婚約を解消して、新たにシリウス殿と婚約されたとお聞きしましたが、まだ正式にお披露目はされていないのですよね? なら、私にもまだチャンスがあると考えてもよろしいですか?」
「いや、それなら是非僕と……」
なんだろうこれは。
婚約者のためなら体型すら変える、何でも言うことを聞いてくれる女だと思われたのだろうか。
それとも、傷物令嬢を貰ってやることで我が家に恩を売ろうとでも考えているのか。
シリウス様との婚約が、王家が私に対する謝罪のため用意したものであることを知っているからこその言葉なのだろうけれど、生憎どちらもお断りだ。
たとえシリウス様に失望されようとも、私は私のなりたい私を目指すと決めたのだから。
拒否の言葉を告げようと口を開きかけたその時、シリウス様が私の身体を強く抱き寄せた。
そして私に声をかけて来た男性たちに、険しい目を向ける。
「――チャンスなどありませんよ。僕は彼女を愛しているし、手放すつもりなど欠片もありませんから。ね、アンジェラ」
「え、ええっ?」
驚く私に、シリウス様が爽やかに笑いかける。口元は笑っているのに目は笑っていないのが妙に恐ろしい。
「どうやらここに居並ぶ方々は、僕たちの仲を疑っておいでのようだ。だから、僕たちが本当に仲が良いところを見せて差し上げないと、ね?」
そう言って差し出される手を拒める訳もなく。
私は有無を言わさずホールへと連れ出され、張り付いたような笑顔のシリウス様と、パーティーが終わるまでひたすら踊り続け――。
私が遠い目になってパーティーでの出来事を思い起こしていると、シリウス様が突然ポツリと呟いた。
「――アンジェラ、君はすごいね」
「え? 何がですか?」
思わず反射的に問い返すと、シリウス様が微かに笑ってみせる。
「君を今日迎えに行くまでは、思ってたんだ。『君がたとえ太ったままでも、そしてそのせいでどんな悪意を向けられようと、僕が守ってあげればそれでいいんだ』って。でも目の前に現れた君は、僕が恋したあの頃の姿をすっかり取り戻して、いやむしろあの頃よりももっと綺麗になっていて……。それで僕は、つい我を忘れて有頂天になってしまった」
シリウス様は、膝に置いた自分の手に視線を落とし、一旦押し黙った。
馬車の中を、沈黙が支配する。
シリウス様は一体何を話そうとしているのだろう。今の話だと、まるでシリウス様は以前から私のことを……。
私は息を呑んで、その先の言葉を待った。
「――ああ、そうだね」
パーティーが終わって、馬車の中。
私とシリウス様は向かい合って座り、帰途についていた。
数ヶ月振りに踊ったダンスは、思いの外楽しいものだった。
痩せて身体が軽くなると、ステップもあんなに軽やかに踏めるものなのだろうか。
おまけに相手がシリウス様なのだ。見つめ合いながら踊ったあの一時は、今思い返してもまるで夢のようだった。
そして、一曲踊り終わって一息ついた瞬間から、私たちは多くの人々に囲まれた。
「私、今までアンジェラ様のこと誤解しておりましたわ、ごめんなさい。本当は王子のためにわざとあのような姿でいらしたのね。……あの、ところで、あの状態からどうやってそこまでお痩せになったのかしら?」
女性陣は顔を合わせるなり口々に謝罪してくださったけれど、一番聞きたいのはおそらく台詞の後半部分だろう。
毎日吐きそうになるまで食べていた食事を健康的なものに戻して、ひたすら庭を散歩しただけだと伝えると、皆一様にがっかりした顔をしてその場を離れていった。本当のことなのに。
そして、男性陣はというと。
「王子と婚約を解消して、新たにシリウス殿と婚約されたとお聞きしましたが、まだ正式にお披露目はされていないのですよね? なら、私にもまだチャンスがあると考えてもよろしいですか?」
「いや、それなら是非僕と……」
なんだろうこれは。
婚約者のためなら体型すら変える、何でも言うことを聞いてくれる女だと思われたのだろうか。
それとも、傷物令嬢を貰ってやることで我が家に恩を売ろうとでも考えているのか。
シリウス様との婚約が、王家が私に対する謝罪のため用意したものであることを知っているからこその言葉なのだろうけれど、生憎どちらもお断りだ。
たとえシリウス様に失望されようとも、私は私のなりたい私を目指すと決めたのだから。
拒否の言葉を告げようと口を開きかけたその時、シリウス様が私の身体を強く抱き寄せた。
そして私に声をかけて来た男性たちに、険しい目を向ける。
「――チャンスなどありませんよ。僕は彼女を愛しているし、手放すつもりなど欠片もありませんから。ね、アンジェラ」
「え、ええっ?」
驚く私に、シリウス様が爽やかに笑いかける。口元は笑っているのに目は笑っていないのが妙に恐ろしい。
「どうやらここに居並ぶ方々は、僕たちの仲を疑っておいでのようだ。だから、僕たちが本当に仲が良いところを見せて差し上げないと、ね?」
そう言って差し出される手を拒める訳もなく。
私は有無を言わさずホールへと連れ出され、張り付いたような笑顔のシリウス様と、パーティーが終わるまでひたすら踊り続け――。
私が遠い目になってパーティーでの出来事を思い起こしていると、シリウス様が突然ポツリと呟いた。
「――アンジェラ、君はすごいね」
「え? 何がですか?」
思わず反射的に問い返すと、シリウス様が微かに笑ってみせる。
「君を今日迎えに行くまでは、思ってたんだ。『君がたとえ太ったままでも、そしてそのせいでどんな悪意を向けられようと、僕が守ってあげればそれでいいんだ』って。でも目の前に現れた君は、僕が恋したあの頃の姿をすっかり取り戻して、いやむしろあの頃よりももっと綺麗になっていて……。それで僕は、つい我を忘れて有頂天になってしまった」
シリウス様は、膝に置いた自分の手に視線を落とし、一旦押し黙った。
馬車の中を、沈黙が支配する。
シリウス様は一体何を話そうとしているのだろう。今の話だと、まるでシリウス様は以前から私のことを……。
私は息を呑んで、その先の言葉を待った。
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