伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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24※タイロン

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遠目からまた王女の取り巻きに良いようにされるレディ・リリィを眺めた。

無垢で可愛らしい、とは思うが女としては微妙だ。

百合の妖精だと言われてその名の通りと思えた。

ただし、見た目が成熟した女とは言えず寧ろ子供らしすぎて無し。

最初の印象はこんなもんだった。

凹凸のない体つきに、女性というより少女のような見た目。

淑女の中で見かけの幼さから逆に目立つ容姿をしていた。

乗馬会の間も、周囲に気を使うより好きなだけ馬を走らせて婚約者と二人で並走させて対抗している。

婚約者といるのに甘さより爽やかな空気でお互い無邪気に笑って過ごしていた。

ふたりの伸び伸びとした空気は年相応な少年と少女らしさだと周囲は微笑ましげに眺めて、俺も気ままにお供をしながらふたりの様相を気に入った。

大人しく口数の少ないご令嬢だ。

王女がそう仕向けたのもあるが、婚約者がいなければ社交場で通訳を連れてひとりポツンと過ごしていた。

扇で隠して表情は見えなくても萎れた様子から心細かろうと察した。

幼く非力なこの娘に何を警戒するのか王女はこの娘を毛嫌いしている。

この娘の婚約者も王女の美しい姿に微笑みを返して愛想よくしてるのに。

昼間のお茶会ではひとりでするっと抜け出したのを見かけて追った。

もともと王女があの娘を見張れと言っていたのだ。

何か怖い思いをさせろと。

俺ほどの男に何とつまらない指示だと、内心は腹立だしいと思ったが仕方ない。

都合よく抜け出したのを追いかけて回りを気にせず真っ直ぐ馬のテントへ向かい、様子を見ていると残されたデカイ馬の顔を抱き締めていた。

馬と心を通わせた様子に悪い娘じゃないと素直に感じた。

ユニコーンの乙女と評したのも本心だ。

だが、このあとのレディ・リリィを思えばそう可愛らしいものじゃなかった。

テントの中では、無用心にひとりで彷徨く小娘をからかうつもりで、思わせ振りに近寄ったら不思議そうに見つめ返して、焦った様子もなく好きでもないくせにと言い返されたのは驚いた。

乙女ならもう少し恥ずかしげに頬を染めるものだ。

飄々とした様子で王女の差し金と言い当ててくる。

言い返されたままは癪だと思い、馬の邪魔を避けて近くに寄れば、腰かけていた柵にさっと立ち上がった。

柵に腰かけるだけならまだ可愛いげがあった。

そのくらいならデビュー仕立ての小娘らしいとさえ思った。

だが、驚く俺の目の前で柵に立ち上がって馬に飛び乗った。

普通、淑女がそんなことするか。

仕舞いには柵を壊す。

それさえも慌てずしれっとしていた。

何が百合の妖精だ。

王女のお茶会で大人しくしてたのも猫を被っていただけだ。

この小娘がとんでもない暴れ馬じゃねぇか。

持ち馬の気性が荒いと聞かされたが、絶対飼い主の気性としか思えん。

見たことも聞いたこともないようなお転婆。

長鞭を掴むとあの馬鹿デカイ馬を器用に乗りこなして何てことのないと言った様子で笑っていた。

「タイロン様、退いてくださいます?」

こちらを恐れた様子もなくニコニコと笑っていた。

悔しくて小娘に良いようにされたくないという思いから、柵を足掛かりに馬に飛び乗って無理やり走らせた。

驚いて降りろと怒っていたのは楽しかった。

ちなみに見た目が色っぽいのは婚約者の方だ。

綺麗な顔と中性的な体つきしてる。

じっと見つめられると男の俺でも妙な汗が出るほど。

レディ・リリィをからかったせいで婚約者に睨まれたのに俺は怯むどころか自然と顔がだらしなく緩んでた。

王女がハマるのがよく分かる。
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