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25※グラッセ
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会場の入り口でロルフを待ち構え、腕をつかんで会場入りしたわ。
エスコートする形で。
私達の名前を大きく呼ばれて。
喜びに微笑む私はきっと今までで1番輝いてる。
「お二人ともお似合いでございますわ」
「本当に輝くようでございます」
皆がそう口を揃えて褒めそやす。
そうでしょう?
今日はロルフの色に合わせて深い緑。
金の刺繍を全面に施したドレスを用意させたの。
私とロルフ、背丈も色も何もかもお似合いで皆が喜んでるわ。
引っ込み思案なロルフの腕を引いて。
年上の私がリードしてあげて。
「グラッセ王女、これは近すぎます」
「私が良いと言ってるのに、控えめね」
恥ずかしがってるのも可愛いわ。
腕に軽く胸を乗せただけなのに。
「いいえ、私には婚約者が、」
「ええ、いるわね。あの小さい子。」
百合の妖精なんて呼ばれて笑っちゃう。
ただの子供。
今日の乗馬会で見ていて分かったの。
見かけによらずこの子はウブなんだって。
だってあのちびっこと延々馬を乗り回して遊ぶだけ。
来賓の相手もせずに。
馬を駆けて鬼ごっこ。
二人の子供だましのようなやり取り。
だから分かったの。
あの子と違って美しい私に気後れしてるんだって。
私には美しい顏、豊満な胸、蜂のようにくびれた細腰。
輝く金髪も虹の瞳も、釣り合いのとれる身長も。
王女という身分も。
貴族として、女性として誇れるものが沢山。
「こっちよ。二人でいたいわ」
バルコニーへと連れ出した。
「ロルフ、グラスを持って。」
もともと用意させていたグラスを持たせて、私が手ずからワインを注いであげた。
私もグラスを持って注ぐようにと催促した。
黙ってただグラスを眺めるのを呆れてしまったけど、許してあげるのも大人の女よね。
「もう、ロルフったら。気が利かないのね。今だけよ?女性にばかり気を使わせるなんて。でもそんなところも可愛いわ」
ふう、と困った顔でため息をついて自分のグラスにもワインを注ぐ。
「さあ、乾杯しましょう」
カチン、とロルフの持つグラスに当てる。
「大人の女性相手に、こういうことは初めてなのね」
馬を走らせて遊ぶだけの婚約者だったから、こういう大人びたことが分からないのね。
「灰色の、あんな子供じゃつまらないでしょう。可哀想に」
ロルフの腕にしなだれて。
「私ならもっと、大人の。……素敵なひとときを過ごしてあげれるわ」
ふわふわの襟元のレースの下に手を。
服の下の肌をくすぐるように撫でた。
「私なら、あなたをこの国の王にしてあげれるのよ」
そう。
私とロルフがこの国を治めるの。
キラキラ輝く私達を想像してうっとりと目を細めてロルフの胸に体を預けた。
「……赤は嫌いだ」
「は?」
「香りが強いのも、しつこいのも。……うんざりだ」
低い唸るような声。
パァンとロルフの手元から甲高く弾けた音がした。
「キャッ!」
驚いて下がってロルフを見ると、バルコニーの手すりに粉々に割れたグラス。
赤いワインが滴っていた。
「グラッセ王女、ドレスが汚れてしまうのでもっと離れて」
赤い染みの広がった、白い手袋を外して表情を変えずに淡々として、ちらっと向ける冷たい目線にまた驚かされた。
エスコートする形で。
私達の名前を大きく呼ばれて。
喜びに微笑む私はきっと今までで1番輝いてる。
「お二人ともお似合いでございますわ」
「本当に輝くようでございます」
皆がそう口を揃えて褒めそやす。
そうでしょう?
今日はロルフの色に合わせて深い緑。
金の刺繍を全面に施したドレスを用意させたの。
私とロルフ、背丈も色も何もかもお似合いで皆が喜んでるわ。
引っ込み思案なロルフの腕を引いて。
年上の私がリードしてあげて。
「グラッセ王女、これは近すぎます」
「私が良いと言ってるのに、控えめね」
恥ずかしがってるのも可愛いわ。
腕に軽く胸を乗せただけなのに。
「いいえ、私には婚約者が、」
「ええ、いるわね。あの小さい子。」
百合の妖精なんて呼ばれて笑っちゃう。
ただの子供。
今日の乗馬会で見ていて分かったの。
見かけによらずこの子はウブなんだって。
だってあのちびっこと延々馬を乗り回して遊ぶだけ。
来賓の相手もせずに。
馬を駆けて鬼ごっこ。
二人の子供だましのようなやり取り。
だから分かったの。
あの子と違って美しい私に気後れしてるんだって。
私には美しい顏、豊満な胸、蜂のようにくびれた細腰。
輝く金髪も虹の瞳も、釣り合いのとれる身長も。
王女という身分も。
貴族として、女性として誇れるものが沢山。
「こっちよ。二人でいたいわ」
バルコニーへと連れ出した。
「ロルフ、グラスを持って。」
もともと用意させていたグラスを持たせて、私が手ずからワインを注いであげた。
私もグラスを持って注ぐようにと催促した。
黙ってただグラスを眺めるのを呆れてしまったけど、許してあげるのも大人の女よね。
「もう、ロルフったら。気が利かないのね。今だけよ?女性にばかり気を使わせるなんて。でもそんなところも可愛いわ」
ふう、と困った顔でため息をついて自分のグラスにもワインを注ぐ。
「さあ、乾杯しましょう」
カチン、とロルフの持つグラスに当てる。
「大人の女性相手に、こういうことは初めてなのね」
馬を走らせて遊ぶだけの婚約者だったから、こういう大人びたことが分からないのね。
「灰色の、あんな子供じゃつまらないでしょう。可哀想に」
ロルフの腕にしなだれて。
「私ならもっと、大人の。……素敵なひとときを過ごしてあげれるわ」
ふわふわの襟元のレースの下に手を。
服の下の肌をくすぐるように撫でた。
「私なら、あなたをこの国の王にしてあげれるのよ」
そう。
私とロルフがこの国を治めるの。
キラキラ輝く私達を想像してうっとりと目を細めてロルフの胸に体を預けた。
「……赤は嫌いだ」
「は?」
「香りが強いのも、しつこいのも。……うんざりだ」
低い唸るような声。
パァンとロルフの手元から甲高く弾けた音がした。
「キャッ!」
驚いて下がってロルフを見ると、バルコニーの手すりに粉々に割れたグラス。
赤いワインが滴っていた。
「グラッセ王女、ドレスが汚れてしまうのでもっと離れて」
赤い染みの広がった、白い手袋を外して表情を変えずに淡々として、ちらっと向ける冷たい目線にまた驚かされた。
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