伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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湯あみをすませて夜会の支度をします。

今日は鎖骨と肩を少し出したボートネック。

袖は肘から長いシフォンがたっぷりと使われて金魚のヒレのように動きます。

薄い緑色のシフォンをたっぷりと重ねたAラインのスカートの裾に金の刺繍が縁取られ、足に柔らかい生地が当たって気持ちいいです。

「少し大人っぽくしてね」

「はい、リリィ様」

可愛いもの好きなサラに任せると可愛すぎにされてしまいます。

まだ未婚ということで髪をおろしてコテで豪華に巻いてます。

「巻きすぎじゃない?」

「いいえ、よくお似合いですよ」

くるくるに巻いた髪を丁寧に編み込んでもっと豪華になりました。

「豪華すぎない?」

「装いに合わせるならこのくらいですよ」

「似合ってる?」

「可愛くて豪華。リリィ様にしか着こなせません」

「そうかなぁ」

「そう不安がらないでくださいませ。きっとロルフ様もお似合いだとお褒めくださいますよ」

髪飾りをつけてもらい、整え終えた頃にロルフ様のお迎えに来られました。

「変じゃないかしら?大丈夫?」

いつもより豪華な装いに戸惑って何度も聞いてしまいます。

「リリィ様はお可愛らしいです」

「お待たせしてはいけませんよ、手を」

ヨルンガに手を取られロルフ様がお待ちしているお部屋へエスコートされます。

「ヨルンガ、本当に似合ってる?変じゃない?」

「んんっ、……大変、よくお似合いでございます」

ぷいっと顔そらすので手を引っ張って歩みを止めます。

「顔そらした!」

「いえ、これは条件反射です。お気になさらず」

「そんなの不安になるよっ!やっぱり髪型を変えた方がいい?ああ、でもそしたらサラがせっかく整えてくれたのに」

「よくお似合いですから安心されてください。可愛らしすぎて直視できないだけです」

「そういうのはまじまじと見ちゃうものでしょ?!」

「リリィ様はそういうタイプですね。もうお待たせしてはいけませんから」

やり直す時間はありませんと言われて大人しくしました。

お部屋につくとロルフ様もふいっと視線をそらしたので、また逃げました。

「ロルフ様もお顔をそらした!やり直す!」

「リリィ様!お時間がございません!」

「ちがう!リリィ!まて!そういうことじゃない!ヨルンガ、捕まえろ!」

走って逃げたところをヨルンガに腰から抱えられて捕まりました。

足がぶらぶらです。

「お化粧が崩れますので顔を歪めないでください。泣かないでください」

「だってぇ」

「言い分けはしません」

「ふたりとも顔をそらしたもん。似合ってないから着替える」

「リリィ、それは違う。誤解させてごめん。落ち着いて?」

こんこんとヨルンガとロルフ様に好ましいと直視できないこともあるんだと説明を受けました。

「そういうものなの?」

「そういうものです」

うんうんと強く頷くふたりに渋々納得しました。

「り、リリィも俺のことを真っ直ぐ見れないだろう?それと同じだよ?」

困り顔を真っ赤にしたロルフ様に見つめられて私もやっと合点がいきました。

「お、仰る通りです」

慌てて扇で顔を隠して答えるとぱっと扇を取り上げられました。

「隠れるのはズルい。会場に着くまで返してあげない」

離宮から会場に二人乗りの馬車に乗ります。

ロルフ様は着くまで本当に扇を返してくれなくて、縮こまる私の手を逃げ出さないようにしっかりと掴んでいました。

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