伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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「一回くらい俺と」

「嫌です」

「ダンスだけ」

「嫌です。無理やりですし、また振り回されますもの」

「しない、約束するから」

「守ったことないじゃないですか。嫌です」

ヨルンガを前に出して逃げます。

「わ!だからそいつを近付けるな」

「もうロルフ様を探しに行きます」

第二王子と押し問答の最中です。

形ばかり、第二王子の腕に手を添えた程度でしたけど、上から外れないように第二王子の大きな手を被せられてつれ回されてます。

探しにいこうとするのに引き留められてここでもたもたしてます。

「エスコートはもう充分していただきました」

「ひとりで探しに行くのか?また絡まれるぞ」

「う、」

言われてみればそうです。

今は第二王子の側だから取り巻きの方々が離れていったのですから。

「俺を避けすぎたからだ。大人しく側にいろ」

口にはしないけど、第二王子の距離感は私と合いません。

近すぎます。

「近いのは、」

嫌だと膨れて睨んでしまいました。

「睨むことないだろ?まあ、そんな態度でいても自分が困るだけだからな。俺は親切に構ってるんだ」

第二王子の真意がわからず、答えがほしくてヨルンガへ視線を向けると頷いて背中を押されました。

私に甘いヨルンガの判断です。

親睦を深める必要があると分かりました。

「兄上は信用ありませんからね」

「メランプスお義兄さま」

背後からの声に振り返りました。

その後ろにはロルフ様も。

「おかえりなさいませ」

ほっとしてお声をお掛けします。

「入り口ですまなかった。はぐれてしまって」

「いいえ、今は一緒です、から。……第二王子、手を離してくださいませ」

ロルフ様のもとへ駆け寄ろうとしたらまだ第二王子が手を掴んで引き留められました。

「メランプスのことは兄と呼ぶのか?」

「え、はい。」

義理の兄になりますから。

「俺は?」

「え、」

「俺も兄と呼ぶべきだ」

「へ?は?え、えと」 

「呼んでもおかしくない。俺はメランプスの実の兄だ。リリィと親戚にもなる」

どや顔の第二王子に困ってメランプスお義兄さまとロルフ様へと視線をさ迷わせますと、お二人とも特に驚いた様子もなく。

「……でしょうね。兄上はいまだにご執心ですから」

「リリィは可愛いからしょうがない」

「え?ええぇ?」

ヨルンガへと顔を向けると表情を変えることなく成りゆきを見守ってます。

表情を変えないことはとても大事ですので、本当にヨルンガは優秀です。

けど、察するものがなくて私としては手助けになりません。

「フィンお兄様がいい」

「い、嫌です。そんな、恐れ多い。今後も第二王子とお呼びいたします」

第二王子の圧に半泣きで顔を振りました。

「なぜだ?!」

「そんな呼び方をしたら注目されます。噂の的になるのは恐ろしいです。……お許しください」

「いや、今回はいいんだよ。なあ、ロルフもそう思うだろ?」

「……今回に限り、否定はできません。でも、嫌がるようなことはやめてください」

「兄上、呼べと強要する前に呼ばれるように努力されたらいかがですか?」

「うう、……メランプス、お前は最近俺への当たりが強くないか?」

「最近?去年、外交の仕事を共にしてからずっとこうですよ。あなたの我が儘のフォローでどれだけ振り回されたか。……もうお忘れになったのですか?」

わかった、悪かったとお答えになりました。

去年、お会いしたときはもっと尊大で意地悪でしたのに。

人とはこんなにも変わるものなのですね。

思わず感心して第二王子とメランプスお義兄さまを見つめました。

「第二王子は、以前と変わりましたね?」

「あ?ああ、多少はな。……サフィアと弟のおかげ、かな」

ぽつんと小さく呟いたのが聞こえました。

「……お前の影響も、少なからずある」

「私は何もしておりません」

「我を通したから、お前を怖がらせて泣かせたし、怒らせた。サフィアのことも、反省した」

サフィア様の真心を踏みにじった第二王子に、海の底より深く反省しろと怒鳴ったことを思い出しました。

「あの時は言葉が過ぎました。申し訳ありません」

「お前の侍従もな。あれがなかったらここまで己の行動を戒める気にならなかった。むやみやたらと我を通して虎の尾を踏んだ。身分や見かけに胡座をかくと危ない」

「え?ヨルンガが?あの、何かいたしましたでしょうか?」

きょとんとしていると、第二王子は訝しげにヨルンガへと目線を合わせました。

「リリィ様は何もご存知ありません」

「……そ、そうか」

恭しく頭を垂れて答えたヨルンガに、第二王子は少しだけ怯えてるように見えますが、気のせいでございましょうか。
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